重たいスーツケースを持ちつつも、自然と小走りになる。映画の撮影のため暫く地方に拠点を置き、寮に帰ってくるのは実にひと月ぶりだ。久しぶりに、彼女に会える。エレベーターを降りて、向かうは俺の部屋の隣にある、彼女の部屋だ。呼び鈴を鳴らして待つ僅かな時間すらも惜しい。


「春歌!」
「おかりなさい、翔くん」

出迎えてくれた春歌を扉近くの壁へと押し付けて、接吻ける。可愛らしい悲鳴すら飲みこむように間を空けず、何度も、何度も。彼女の小さな口の周りが互いの涎でべとべとになる頃にようやく満足し、そのまま壁に縫い付けるように抱きしめた。じっとしていた彼女だったが少しすると落ち着かないように腰を捩るようになった。そしておずおずと、何かを言いかけては黙るを繰り返す。どうしたのだろうと思案していると、ズボンの布越しに硬い感触。

そこでようやく、一つのことが思い当たる。


「…アレ、外して欲しいのか?」


沈黙の後に、はい、と蚊の泣くような声で呟く春歌の手にワンピースの裾を握らせて、まくるようにと促した。彼女はしばし戸惑っていたが、言われるとおりに、少しずつ腕を持ち上げる。そうして露になった華奢なラインの彼女の下肢に嵌められているのは、それに不釣合いな金属製のベルト…ちょうど臍の下あたりで小さな南京錠が揺れている。先程感じた硬さはこれだろう。ひと月前、俺がつけた貞操帯はそのままの状態でそこにあった。機器に空いた小さな穴からは粘度のある液体が染み出し、ぐしょぐしょに太腿を濡らしている。

「キスだけで、こんなになるんだな…」

彼女の前に膝を付いて、からかうように内股を撫でると、それを非難するように甲高い声を漏らす春歌に…思わず口端が上がってしまうのを感じた。羞恥に染まる彼女の顔ほど、欲をそそられるものは、無い。もう暫く見ていたかったがあまり焦らして機嫌を損ねるのは不本意なので、ポケットから鍵を取り出した。

錠を外すと、解かれた器具がかしゃりと音をたてて床に落ちる。


「あ、あぁ…ふぁ……」

解放に身をぶるりと震わせる春歌。既に潤っていた性器から、どぷりと更なる蜜を溢れさせた。今すぐにでも押し倒してしまいたい欲求を押さえつけて、パーカーの袖で汚れた脚を拭ってやる。僅かしかない刺激が物足りないのか寂しげにこちらを熱っぽく見つめてくる蜂蜜色に気付かない振りをして…彼女の衣服を整えて、膝を折るのをやめ立ち上がろうとした。


「ま、待って…翔くん……」

すると珍しく上から腕が伸びてきて、そのまま床へと押し倒された。ぎゅうぎゅうと抱きついてくる彼女の柔らかな体に…今にも理性が崩壊しそうなのを、ぐっ、と堪えて囁く。


「…欲しいならどうするか…わかるよな、春歌…」





貞操帯の装着は、別に春歌の不貞を疑っているからじゃない。深夜のバラエティ番組での共演者に、ふざけて渡された物を、前にロケで二週間ほど家を空けたときに彼女に着けてからなんとなく続けてしまっている習慣だった。どうやら高級なものらしく、衛生面で問題はないし彼女の肌を痛めることもない。

会えない間、春歌は禁欲を強いられる。彼女はそういった欲が強いほうではないが、寂しくても自分で慰めることも出来ず少しずつ欲が溜まってしまい、帰るころには悶々とした状態になっている。普段ならば恥ずかしがって真っ暗な部屋でしか服を脱ぎたがらない彼女も、長い抑制から解放されたこの時ばかりは欲に溺れて…淫らな姿を見せてくれる。

それが可愛らしくて、ついつい苛めてしまうのだ。




形の良い唇が耳元で紡いだおねだりの言葉に、玄関だということも忘れて…夢中で彼女の体を貪った。



見た事の無い表情
(禁欲した彼女の顔が、一番そそる)




雛菊ゆい様へ
翔春の無意識甘々、というシチュを頂いたのですが…応えられているか非常に微妙なものになってしまいました(´P`;)シチュの後ろに書かれていた、翔春ならなんでもいいと思います、というお言葉に多大に甘えてしまっていると思います…!ゆい様のリクエストに少しでも添えていることを祈るばかりです。違うようでしたらお手数ですが拍手から一言お願いします!

リクエスト、誠にありがとうございましたv
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