「みてジュンすごい!!こんなに大きなゆきだるま初めて!!」

「おー!!やっぱ俺らってすげえな!ヒカリ!」


目の前で積み上げられた二つの雪玉の大きさに二人の幼馴染は大声ではしゃいだ。
嬉しそうに声を上げてはぱちんとハイタッチを繰り返しながらくるくるとその場を走り回る。
しばらく走り回っていたがヒカリがはっと何かに気付いたように我に返る。
急に立ち止まられたので彼女に思い切り激突したジュンはなんだってんだよー、とお決まりの文句をもらした。


「ジュン!ゆきだるまの仕上げに顔つけなくちゃ」


がばっと勢いよく振り返ってそう言ったヒカリにジュンは瞳をぱちくりさせて、たっぷり時間をおいてからようやく意味に気付いたと言うように、急いで返事をする。


「おお?そうだな!じゃあ俺右目付けるからヒカリは左目な」

「うん!」


ひょいと手を伸ばして小石を瞳代わりにはめ込むジュンを横目にヒカリも片目に相応しいそれをしゃがみ込んで探した。
少し雪を掻き分ければ丁度いい大きさの小石が手に入ってうふふ、と嬉しそうに笑った。


「よし!いけヒカリ!」

「了解です!えい!!」


ジュンの楽しそうな声にあわせてふざけた掛け声をかけながら手を伸ばしてみて、そして気付いた。
ジュンのつけた右目と均等な位置にこれをつけるには、身長が足りない。
ぐるりと首を回してジュンを凝視してみれば前は同じ位だったのに確かに、私より幾分か大きかった。
考え直してみればゆきだるまの頭を上に乗っけたのもジュンだった。
きっと私だったら届く届かないの前に重くてあんな大きな雪玉をあの位置まで持ち上げられないだろう。


「ジュン…私、届かない」

「え?じゃあ俺がつけようか?」


拗ねたようにぼそりと呟けば驚いたジュンは表情でヒカリを見詰めた。
その視線が知らない何かを呆れて見詰めているようで、なんだか寂しいような苛つくような妙な気分にさせられる。
だからジュンの何気ない返事にもぶううと唇を尖らせて猛反対してしまった。


「やだ!せっかく二人で作ったんだもん!私だって片目くっつけたい!」

「まあ確かにそうだよなー」


ヒカリの仏頂面に特に触れる事も無く、まあ彼の場合気付いていないのだろうけれど、ジュンはしばらくうーんと手を顎に当てて考えるような仕草を見せたあと、おっ!と嬉しそうな声を上げた。
その声に驚いてきょとんとした表情を見せたヒカリに彼はずんずんと歩いて近付き、そして脇腹に手を宛がうと、びくりと驚き体を揺らしたヒカリを気にもせず思い切り抱き上げた。


「き…きゃあああ!?」


急な展開に思わず大絶叫を上げてばたばたと両手足をばたつかせるヒカリ。
その被害を腹や胸に受けながらジュンは彼女を宥めるように明るい口調で告げる。


「だいじょーぶだって、落とさねーから!」

「だ…だって…」

「いーから!早くつけちゃえよ左目!」


暫くうううと唸っていたヒカリだったが、いつまでもジュンに下ろす気配が見られないので思い切って左手をぐいと伸ばした。
ざく、と音を立ててあっけなくはまる左目。


「はめたから!早く下ろして!怖い!」


大声で告げればなんだってんだよーと彼の口癖がもれた。
こんなことならちゃんとダイエットしておけばよかった、と少し恥ずかしい気持ちを抑えるようにヒカリは彼から目を逸らす。


「別に落としたりしねえのに」

「そういう問題じゃなくて…!」


不服そうに呟いたジュンに乙女心という複雑なものを理解していただくにはまだ少し早いらしい。
さっきとは違う意味で苛々して、今さっき完成したばかりの間抜け面でこっちを見てくるゆきだるまが酷く憎らしく思えた。




水色の境界線



涙無ちゃんより相互記念に可愛いジュンヒカいただいちゃいました…!
幼なじみ身長差良いですよね!ちょっと我が儘なヒカリ可愛い…

素敵文ありがとうございました!





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