※特殊性癖+キャラ崩壊






「あ゙……っ、う、はぁ」

鳥を絞め殺すような声だった。
それさえも、オレが原因で作られたものと思えば愛おしかった。
眼下に見る恋人は首を掴まれて苦しそうに喘いでいた。
足をばたつかせて暴れ回るのを、下半身でたやすく押さえ込む。
女のお前が男のオレに力で敵うはずねェのに、バカだなぁ。
そう思う反面、命の危機を感じた身であればそんなことは関係なく誰だって抵抗するだろうと分かってもいる。
大丈夫、オレはお前を殺すつもりなんてさらさらないと笑顔に乗せたが、名前は怯えた瞳を見せるだけだった。

「や、…すっともぉ…」
「っは、名前チャン、もうちょっとだけ我慢して、なァ?」
「ぐ、…やめ、…ぅ」

両手のひらで易々と包み込める、白くて細い首筋がどくどくと脈打っている。
名前の肌が熱い。汗ばんでいて、触れたところから溶けてしまいそうだ。
情事の最中に脚と脚を絡めるような感覚を覚え、背筋がぞわりと粟立った。
ああ、可愛い可愛い可愛い可愛い。
名前は意識が朦朧としているのか、涙を浮かべた瞳をぎゅうと閉じて、口端からつうと涎を垂らした。
すかさずそれをべろりと舐め上げると、わずかに残った理性か反射か、彼女の肩が震える。
オレの手の甲を引っ掻いていた爪が不意に止まり、指先が伸びてきてオレの肩あたりの服を縋るように掴む。
それが彼女の最後の抵抗だと悟り、ゆっくり手を離すと解放された喉は一度大きく跳ね、それから名前は長いこと咳き込んだ。
急速に補給された酸素に身体が追いつかず、もどかしそうに身をよじって何度も咽せる姿をオレは冷静に見下ろしていた。
さっきのタイミングから数秒遅れていれば、名前の指先は完全に力を失って、危ない状況になっていただろう。
分かっている。
自分はひどい行いをしていると。
けれども、ぞくぞくと全身に走る背徳感に血液が顔と下半身にばかり集まるのも、事実で。

「げほっ、う、えっ…」
「…名前」
「はぁっ、やすとも…?」
「ごめんなァ」
「…なんで、あんたが泣きそうな顔すんの」

犬のように頭を垂れて、赤く手のひらの跡が付いた首筋に鼻先を寄せた。
そのまま何度も頭をこすりつけるオレを見かねてか、深く息を吐いた名前が頭を撫でてくれる感覚があった。
ああ、良かった。
どうしようもないオレはまだ大好きなこいつに見捨てられてない。

「名前、名前。すっげえヤりたい。いれていい、か?」
「……変態」
「ああ、オレは変態だ。ダメなんだよ。興奮して、こういうことする度におっ勃てちまうんだ」
「いいよ…赤裸々に語んなくて…」

さっきまでの名前が苦しそうにしていた様子が、喘ぐ呼吸と頬を伝う涙が、脳内をぐるぐると埋め尽くしていく。
息を荒くして、獣のように名前に覆い被さるオレの顔は真っ赤に違いない。
恥ずかしくて、情けなくて、訳分かんなくて、こいつのことが好きで堪らなくて。
はぁっと吐き出した熱い息が名前の頬を撫でていく。
少し顔をしかめた彼女は、立てた膝でオレの下半身を圧迫した。
上擦った変な声が、出る。

「っ…、やめろよ。興奮すんだろ」
「引くなぁ、靖友のそういうところ」
「名前…ヤらせてくれ。頼む、から」
「分かったから、少し黙っててよ」

黙る、とは。
頭で理解する前に名前の唇に牙を剥いて食らいつく。
貪る。
飲み込む。
唾液ごと全部混じり合うようなキスを重ね、ぼやけた思考で名前を見つめた。
ああ、可愛い可愛い可愛い可愛い。
疼く下半身を抑えきれず、性急に手を引っ掛けたベルトが耳障りな音を立てた。


20140225
彼女の首を絞めて興奮しちゃう荒北さん
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