! 迷ヰ犬怪綺譚カジノ設定

どうして私は、探偵社の頭脳派というわけでもないのにカジノへの潜入について来てしまったのだろう。しかも、勝負を持ちかけられたポーカーについてはあまり詳しくなかった。散々である。
もともと大勝ちしたいという欲も度胸もないため、賭け金は僅かばかりだが、手札の引きが悪いと心臓がばくばくと変な音を立てる。そのドキドキに拍車をかけているのは、参加者でもないのに、私の隣にちょこんと腰掛けている乱歩さんだ。

「君は本当に引きが悪いなあ。前に参加した商店街の福引も全部ちり紙だったもんね」
「…乱歩さん。ご自身の遊戯は如何されたんですか?」
「勝ちすぎたら目立つから、程々にしとけって社長命令」
「成程」
「それに、勝つと判っている遊戯より、君が慌てふためいている様のほうが面白いよ」
「非道い!助けてくださいよ!」

普段なら乱歩さんに助けを請うなど、それこそ度胸がなくて出来ないのだが、お金が関わっていること、茶化すとも見守るとも取れる位置に彼がいること、私の精神ストレスが限界であること、全部合わせると泣き言を云うしかなかった。

「自分から手を出した遊戯だ。君はきっちり責任を取るべきだよ。ほら、相手を待たせているようじゃ駄目だ。この間も、相手は君のことを観察している。情報を与えれば不利になる。冷静に迅速に、事を進めるんだ」
「で、でも」
「まあ安心しなよ!君が大負けしても、賄えるくらいは勝ってるからね。思う存分やるといい」

そう云って、乱歩さんはテーブルに肘をついてにんまりした後、観戦の姿勢を決め込んだ。このカジノでボロ儲けした猛者である乱歩さんに文句を云える客もディーラーもいる筈がなく。鬼なのか頼もしいのか判断に迷う彼を横目に、私はカードを切った。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -