「透くんの昔の写真って、ないの?」

私が尋ねると、え、と呟いた彼は目を瞬かせた。少し中性的な、淡く甘やかな顔立ちの彼がまばたきをすると、その睫毛の長さがよくわかる。
さっきまで透くんは、彼の友人が載っているという雑誌を見せてくれていた。
天花寺くんは本当に格好いいんだよ。あ、こっちの特集には北原くんが載ってる。
そんなふうに、高校時代の友人、そして現在の芸能仲間を楽しそうに紹介してくれる透くんを見ていて、ふと思ったのだ。私は大学生になってから透くんに出会ったので、過去の彼がどんなふうだったか知りたい、と。
透くん自身は、なぜ雑誌の話からその話題に繋がったのかわからないといった顔をしていたが、暫し考えてから「あるよ」と答えた。ここは透くんの家だ。きちんと整頓された本棚から、透くんは卒業アルバムを引き抜いた。彼がページを開いて、私は思わず声をあげた。

「か、かわいい…!!」
「そ、そんなに驚くことかなぁ」

私は卒業アルバムをまじまじと見つめる。高校生の頃の透くんは、今よりさらにおっとりとしていそうで、控えめに浮かべた笑顔が可愛かった。でも、それゆえに意識してしまう。すぐ隣にいる透くんは、穏やかな性格でありながら、本当に格好良い男の人に成長したのだと実感が押し寄せる。ちらりと横目で見ると、こちらを覗き込む透くんとしっかり目が合ってしまった。慌てて、視線を元に戻す。
すると、そのタイミングで卒業アルバムをひょいと取り上げられてしまった。もちろん、隣の透くんに。

「ああ、まだしっかり見てないのにっ」
「もう、十分でしょ。…写真の僕のことばっかり気にかけて、ちょっと複雑だな」

むすー、と効果音が聞こえてきそうな表情で、透くんは拗ねた声で言う。その表情こそ、幼さを感じさせるものではあるけれど、先程目にしていた可愛らしい透くんの名残なのか、私は胸がドキドキした。
透くんは、大きな手のひらで卒業アルバムの表紙を撫でた。

「あの頃は、僕にとってすごく特別な思い出なんだ。きっと、高校時代にみんなと出会えていなかったら、今の僕はいないと思う。過去の話をするのは楽しいよ。でもやっぱり、君には今の僕を見ていてほしい。…見ていて?」

その言葉を最後に、透くんは卒業アルバムを脇に置くと、私の頬へ手のひらをすべらせた。私の胸の高鳴りは、最高潮へ。見ていて、と言われなくても、私はいつもあなたにしか目を向けていない。そう、心臓が主張している。

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