するりするりと太股を撫でていた手のひらがふいに力をこめるから、その指先がタイツの網目に引っかかる。「破っていーい?」「だめ。高かったんだから」「ちぇ」「それ変態くさいよ、貴大」言いながらも、私を愛でる指先にはどうも弱いのだ。「だって、お前に関しては変態だし?」(花巻貴大)


愛に順位をつけるなんて煩わしい。それが彼の持論だった。付き合い始めは楽だったけれど、私は彼ほど達観した人間にはなれなかった。人並みに、嫉妬をする人間だ。「浮気したら殺しちゃうかも」「…そういうのが一番面倒」言いながら、私の頭を撫でる花巻の目は冷たい。(花巻貴大)


飛雄くんは怒っても怖くない。ある日、憤慨している様を「チワワの威嚇」と形容してみたらかつてないほど怒られた。「先輩のそういうところすげー嫌いです」「ごめんて」「俺が何言っても響かないんだ」「何されても平気なくらい可愛いだけだよ」あ、嬉しそうだ。飛雄くんちょろいな。(影山飛雄)


彼女はファミレスに行くと決まって一番安いドリアを頼んだ。何でも奢ってあげるのにと言ったら、私はこれでいいのと静かに微笑まれて、軽口をいともたやすく奪われたのを覚えている。そして、一人きりでも同じドリアを頼んでしまう俺は彼女のことが大好きなんだろう。「これを食べたら、仲直りしに行こう」(及川徹)

↑補足 喧嘩をして、いつも一緒に来る彼女がいないにも関わらずつられるように同じメニューを頼んで、改めて俺って彼女に惚れてるんだなぁと謝りに行く決意をする及川さん。表現不足!


「ああいう姿っていいよな、スガ」大地の視線を追えば、ウチの二年マネが洗濯したユニフォームを畳んでいた。「あいつはいい嫁さんになりそうだ」「それ清水や谷地さんにも思うわけ?」「いや、あいつにだけだな」「告白すれば?」「もう少し見ていたいんだ」そう言ってウチの主将は普段より幼く笑った。(澤村大地)


バスタブに身を沈めていたら、扉を開けた英と目が合った。どうして私の入浴中に恋人がやって来たのか謎である。「何かあった?」「いや、お前の睫毛って長いから。水に濡れたら綺麗なんだろうなって思って。見たかっただけ」満足した様子で英は扉を閉めた。謎である。(国見英)


「結婚したら専業主婦になってね」「え、やだよ働く」「なんで!俺稼ぐから、苦労させないから!」「そういう問題じゃない!」「俺が疲れて帰ったら料理作り終えた君が玄関で待ってるんだよ。エプロン姿で!」「及川めんどくさい」「えっ」(及川徹)


コーヒーを淹れて台所から戻ってきたら、ソファーで読書をしていた蛍がこちらをじっと見てくる。「飲みたかった?蛍の分も淹れてこようか」と尋ねたらマグカップをひょいと取り上げられて、彼の喉元がこくりと動いた。「これで十分。ごちそうさま」(月島蛍)


あの子はなんであんなに眩しいんだろう。俺の目が、バカになったのかな。そう思って目をこすってみても彼女の姿は変わらず眩しい。こんな風に眺められるのも同じクラスの今だけで、きっと来年にはクラスも離れてしまって、叶わなくなってしまうんだ。だから思いを伝えるより先に、彼女の美しい姿を目に焼き付けていたい。(山口忠)


彼女の好きなところを尋ねられたら、俺の名前を呼ぶ声と答える。決して通る声ではない。たどたどしく、少し言いにくそうに、彼女は俺の名前を呼ぶ。あかあしくん。それがなんだかとっても心地がいいから、俺は目を閉じる。その声が京治と呼んでくれるのは、いつになるだろう。(赤葦京治)


「こんなに苦しいのは徹のせいだ」。そう口にしてから、私ははじめて彼を恐ろしいと思った。恋人に責任を問われてここまで幸福そうに笑う人間を他に見たことがない。「俺はね。何だって自分が原因であればいいと思うくらいには君のことが好きなんだよ」(及川徹)

↑本日のメニュー:及川さんちの徹くんヤンデレ風〜どうしてこうなるまで放っておいたんだソース添え〜


日向の勉強の面倒なんて見なくていい。影山のユニフォームなんて洗ってやらなくていい。山口と一緒になってタオル配るなんて、しないで。彼女をマネージャーとして見られなくなった僕の脳内はわがままを言い放題で、丸ごと本人に聞かせてやりたいと思った。(月島蛍)


はじめて見た彼の吐息は青色でした。それはとてもとても美しい青色でした。彼の涼しげな瞳と相まって、それは美しさを持ちながらも他人を寄せ付けない色でした。ふと彼が視線を上げた先にはお兄さんらしき人が立っていて、その人と話す間だけ、青色はゆるんだ優しい水色に変わるのです。(月島蛍)


「君は寝起きの方が可愛い」蛍にそう言われてから私は不機嫌である。それじゃあ、起きている間が可愛くないと言われているみたいじゃないか。ふてくされる私を楽しそうに眺めて、彼は言う。「だって寝起きの君はいきなりキスをしても怒らないからね」その笑顔は卑怯じゃないかな。(月島蛍)


見上げられるのが好きなんですよ。私の肩を掴んでベッドに押しつけた京治が言った。彼の瞳は冷静で、これから何かを致そうという風には見えない。「あなたの上目遣い、可愛いんですよね」「そう思っているように見えないけれど」「…これでも緊張してるんです。察してください」(赤葦京治)


痛いことも苦しいことも嫌いだよ。けれどこの感情は理屈じゃないから、僕は君のために業火に飛び込むこともあるかもしれない。そう話す蛍の笑顔はいつもより綺麗だったので、私はその手を握り締めてゆっくり爪を立てた。(月島蛍)


ある日、俺の声が出なくなりました。俺は真っ先に彼女の元へ駆けて行って、その耳を両手のひらで塞ぎました。俺の声が出るようになるまで、彼女が俺の声を忘れないように、他の誰の声も聞かすまいと思ったのです。(及川徹)


どうせ鈍感で気付かないだろうと思っていたのに、体育館で一番に私へ声を掛けたのは木兎だった。「髪切ったのか?似合ってるな!」と言われ、「お、おう」などと返してしまった。女子力が足りない。追い討ちとばかりに「木兎がこーいうこと言うのお前にだけだぞ〜」と木葉が囁いてきた。知らないよバカ。(木兎光太郎)


優しい京治くんが大好き。そう言われて息が詰まるような感覚がした。優しい、というか。俺が柔らかく接するのは彼女だけであって、彼女もそれを知っている。知っていて、好意を言葉にされた。ままならない呼吸はじわりと俺の頬を熱くしていく。(赤葦京治)


俺はね、出来ることならあなたの飼い犬になったっていいんですよ。そう話す赤葦は寂しそうに見えたのでそっと頬を撫でる。「恋人じゃだめなの?」「恋人でも、いいです」それでも物足りなさそうな彼は心のどこに穴が空いているんだろう。(赤葦京治)

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加筆したものは140字超えてるかもです
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