「やっぱり私は、高尾くんとは友達になりたくなかった」

こんな言葉は彼だけではなく自分のことも傷付けると分かっていながら、吐き出した。
そうでもしないと涙がこぼれそうだったから、手のひらを強く強く握りしめる。
少し悲しそうな表情をした高尾くんは、私にひどいことを言われてもきちんと笑顔を浮かべられる強い人だった。

「そう言われても、オレ友達やめる気ないよ?ちゃんとお前のこと大切に、思ってる」

歩み寄った高尾くんは私が握りしめた手のひらをゆっくりほどき、大事そうに手に取る。
最初から分かっていた。
高尾くんの友達になったら、距離が近付けば、いずれ彼のことをどうしようもなく好きになってしまうと。
絶対に友達としては見られなくなってしまうと、分かっていたはずなのに。
やっぱり好きになってしまって、友達になりたくなかったと駄々をこねて、どんどん自分が嫌いになっていく。
それでも高尾くんは私の手を離さないし、離れていかず、声を聴く。
私を分かろうとしてくれる。
こんなにも優しい声で、話す。

「お前が後悔しててもさ。オレは友達になれて良かった。…ほら、泣き止んでくれよ」

きみがどうしようもなく甘やかすから涙腺が緩んだ。
高尾くんのせいだ。
なんて馬鹿なわたし。
彼には他に好きな人がいるというのに。
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