彼女はオレを深い深い水の底に沈めてしまった。
かと思えば、水に捕らわれて動けないオレを水面近くまで引き上げるのも毎回彼女で、光が揺らめいて見える水面に目を細める。
こうも上手く息ができないのは何故だろう。

「氷室、」

前の座席で振り向いた彼女が囁いた自身の名前は水に浮かぶ波紋のようだった。
ふわりと余韻を残して、オレを惹きつけて離さない鈴のような声。

「聞いてるの、氷室」

ああ、聞いてるよ。
オレは君が好きなんだ。
どんな声だって聞き逃しはしないさ。


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