黒い大型犬を飼っているようだ。
年下の恋人にずっしりと背後からのしかかられながら思う。

「飛雄」
「はい」
「重いよ飛雄ぉ」
「邪魔だったら殴ってくれていいです」
「できるわけないじゃんか。ばかだなあ」

出来るわけないと高を括っているのではなく、本当に嫌なら拒否すればいいと思っている素直な飛雄に私は弱い。
不思議そうな顔を見せる彼のさらさらな髪をわしゃわしゃ撫で回す。
目を細めて気持ちよさそうに受け入れる様はまさに従順。
うん、可愛い。
けれど飛雄は自分が年下ということを気にかけていて、私からの賞賛で一番嬉しい言葉が「かっこいい」なので、その正反対に位置する言葉は引っ込めておいた。
撫でられておいて、どこか優越感にも似た表情を見せた飛雄が私の頭にぐりぐりと頬を寄せた。

「先輩かわいい」
「ごめん、今の流れのどこが?」
「俺を手懐けてるって、思ってるんでしょう」
「…うん。違う?」
「違わないけれど、キスだってその先だって主導権は俺にありますよね」
「そうだね」
「それって勘違いみたいでかわいいじゃないですか。好きです、先輩好きです」
「うんうん、ありがとうね」

もしかしたら飼い慣らされているのは私の方かもしれない。
飛雄はそんなつもりなくて、甘えた仕草も従順な姿もきっと本物だけれど、それが私たちにしっくりくる付き合い方なのだから相性というものは恐ろしい。
深く考えるのはやめにして、後ろからぎゅうぎゅうと羽交い締めにしてくる年下の恋人を宥め、欲しがられるままに唇を合わせてあげた。
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