思うに、この人は人間の言葉を理解していないのだ。

「僕、先輩のこと嫌いなんですよね」
「そうかぁ。私は蛍くんのこと好きだけどね!」

好きな奴に嫌いと言われてにこにこしている神経がわからない。
本当に好きなら悲しい表情を見せたり、傷付くことを言われたくなくて距離を取ったりするはずだろ。
そうじゃないってことは大した思いじゃないってことだ。
馬鹿馬鹿しい。
相手にしていられない。

「親しくない人に下の名前呼ばれたくないです」
「そうかぁ。じゃあ親しくなる時まで取っておくことにするよ」

またね月島くん、と手を振る姿を見送るのも途中でやめた。
親しくなる時なんて来ない。
こうやって突き放していればそのうち飽きて関わってこなくなるんだ。
分かっているから、僕は笑わないし優しくしない。
すると、あの人と仲がいい西谷さんが寄ってきた。
あの人に似て声が大きくて馬鹿みたいに真っ直ぐな西谷さんは、僕からすれば少し付き合いにくい。

「月島ぁ、お前もう少し名前に優しくしてやれよ」
「いやです。必要性感じませんし」
「うーーーん」
「…なんですか」
「しょうがねえ。言うか。お前知らないもんな」
「なんなんですか」
「あいつ、お前に嫌いって言われた日は必ず泣くんだよ。だからあんまりいじめないでくれ」
「…は?そんな素振り、一度も」
「泣き顔は一番可愛くない顔だから、大好きなお前には見せたくないんだと」

思わず、あの人が去っていった方を振り返った。
もう姿は見えなかった。


(言われなきゃわかんないだろ何なのバカなの日本語使えよ)
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