宇宙のごみ。

塀の上を歩いて星空を見上げながら龍之介がそんなことを言った。
振り向いた顔は満面の笑み。
きっと本気で言っているのだろうな、価値観の違いをひしひしと感じながらつぶやいた。
冬の寒い空気に、私が吐いた言葉は白い蒸気となって形を残す。
それもすぐに消えた。

こんなに綺麗なのに。
こんなに綺麗でも、ごみはごみだよ。

やはり龍之介は笑って言った。
面白くない。
反対に私はしかめっ面をしていた。
ほう、と子どもみたいに大きな白い息を吐き出して、彼はそれを指差した。
指先には、すぐに何もない空中だけが残る。

これもごみ。排泄物や老廃物として括るならば。

演説をするように高らかに、龍之介は話す。
とんとんと塀から降りてきて、私を指差した。
じっと見つめ返す私は間抜けな顔をしているんだろう。

涙も、血も、ごみだ。その寄せ集めみたいな人間だってごみのようなものだけど、こんなに愛おしくて綺麗だ。

彼の愛おしいや綺麗という感覚はやはり常人のそれではない。
何より愛する血の色を思い浮かべたのか、龍之介の笑みはいっそう深くなる。

綺麗だよねえ。

冷たい手の甲が頬をなぞっていって、背筋がぶるりとした。
恐怖などではない。純粋に寒くて。
そんな私をくつくつ笑って、龍之介はまた数歩先を歩き出した。
帰り道はまだまだ長い。
寒くて、吐き出す白い温度すらもったいなくて、私はマフラーを口元まで引き上げた。
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