画面の中で歌い踊る彼らはキラキラと輝いて見える。 アイドルだから、という理由ではない。 彼らのことが好きで、その人間性に惚れ込んで、何もかもが愛しくて、だから眩しいと感じるのだろう。 画面の映像に見惚れていたせいで、ごつんと拳が落ちてくるまで私は彼の帰宅に気付かなかった。 「人んちのテレビでむさ苦しいDVD見てんじゃねーよジャニオタ」 「…清志」 「オラどけよ、出たばっかのやつ見るから」 「昨日発売だっけ?どうせ三回は見たんでしょ」 「ナメんな、徹夜して五回は見たっつうの」 うわー気持ち悪い、と漏らせば思いっきりどつかれた。なかなか痛い。 私の彼氏、宮地清志。 キレイな顔をしているイケメンだけれど、彼らのようにキラキラ輝いては見えない。 これがジャニーズと一般人の差か、と思いながらソファーに座り込んだ清志を見つめる。 「男が踊ってんの見て何がおもしれーの?理解できねー」 「そっちこそヒラヒラフリフリ見てて目痛くならないの?」 「どういう意味だよテメー殺すぞ」 その言葉に優しさなんてない。 そもそも理想的な女の子像である彼女たちにお熱な清志は、なぜ私を彼女にしておくままなんだろうか。 清志はかっこいい。私は可愛いわけでもない。 アイドルと付き合っているのでもないのに不釣り合いだと言われて悲しい日には、帰って本物のアイドルのDVDを見て癒されるのだ。 そうしないと日々がつらい。 リモコンに伸ばされた清志の手をつかんで、私は彼にぐっと身を寄せた。 「じゃあ次の曲、一緒に踊って。そうしたら別の見ていいから」 「次の…ってやだよ、すげー動き回って疲れるやつじゃん。汗だくになるだろ」 「私の癒しを奪うんだからわがまま聞いてよ」 「えー…あ、」 何か思いついたように清志が身を起こしたので、今度は私がソファーに沈んだ。 腕をついて私を見下ろす清志はにやついていて、ちょっと嫌な予感がした。 お互いが競うようにライブDVDを見るものだから、興味が持てないはずの曲や踊りですら二人とも覚えてしまっている。 私の好きな曲を映像に合わせて小さく口ずさみながら、清志が言った。 「二人して汗ダラッダラのまま、そのあとベッド直行すんなら言うこと聞いてやるよ」 「…見るんじゃなかったの?新作」 「だから、踊るならのハナシ。どーすんの」 私の答えを待つようでいて、その実まったく聞くつもりのない瞳がギラギラ光って見える。 その顔は、好き。 だって私しか見ていないのが丸分かり。 その頬に手のひらを当てれば、何も言わずとも返答と受け取った清志が私の腕を引いた。 立ち上がって二人でテレビの前に並ぶ。 「踊るぞ」 「完コピでよろしく」 「はっはー。あんまナメんなよ、余裕だわ」 今流れている曲が終わり、次の曲への導入が始まった。 割と残念でめんどくさい清志が、私は結構好きだ。 --------------------- 宮地さんはちゃんと彼女好き。 落ち込んでても自分のところに来ないからイライラしてるけど、どっちもどっち。 宮地さんは彼女にアイドルの、彼女は宮地さんにジャニーズの踊りを完コピさせて楽しんでる。 「清志ってなまじ背が高いから割と様になるね」 「ったりめーだろ轢くぞ」 宮地さんとしては彼女の要求に付き合ってあげる=最大級の愛情表現。 二人のカラオケは壮絶なテンションになるので付き合ってくれる人はなかなかいない。 |