陶器のような白といえば聞こえはいいが、彼の肌は不健康な青白さともいえる。
芥川さんはそこに立っていても薄い紙のように朧げな存在で、それなのに彼が身にまとう外套の黒だけはやけに記憶に焼きつくのだった。
彼を見ていると、黒とは美しい色だなと感じる。
ただの一般市民である私には到底見えぬ絶望や暗闇を煮詰めて煮詰めて作ったようなその色は、芥川さんに常にひたりと寄り添っている。
彼を明るい太陽のもとへ押し出したら、灰になって消えてしまうかもしれない。
そんな馬鹿げたことを考えて、私はなんとはなしに彼の袖へ手を伸ばした。
ぱしん。
乾いた音と軽い痛みが手のひらを襲う。

「僕に触れるな。……灼ける」

はたして、それは芥川さんが本心から言ったのだろうか。
それとも、彼なりの冗談だったのだろうか。
ひりひりと痛む手のひらをさすり、私は茫漠とした思いにとらわれる。
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