「ちょお財前」
「なんすかアホ先輩」
「落ち着けー落ち着け私。私は財前と違て大人なんやから一々反応したらあかん」
「いやもう思っきし反応しとりますやん」
「まあそれはどうでもええねんけど。で、300万」
「は?くれるんすか?」
「いやいやそれこそは?だわ。あんた昨日メールで云うとったやんけ」
「なんすかそのメールて。身に覚えがこれっぽっちもあらへんのですけど」
「ほー。ならこれ見てみい」

ナマエは自身の携帯をずいっと突き出す。画面を確認してみれば彼女が受信したというのは所謂迷惑メールで、内容はどこぞの金持ち(らしい)の『財前』さんが理由はさておき何の見返りもなく彼女に大金をくれる、というもの。しかし今ここにいる財前光からすれば、偶然にしろそのメールに『財前』と自分と同じ名が挙がっていることこそがまさに迷惑な話であり。

「先輩、まさか真に受けてるんとちゃいますよね?」
「まっさかー冗談に決まっとるやん。んで、300万は?」
「日本語が崩壊する瞬間を俺は見た」
「何云うとるん?」
「いや、なんでもないっすわ。ちゅーか受信拒否とかせんのですか?」
「したいんやけど、メルマガとか色々登録しとるからなぁ」
「ドメイン設定したらええですやん」
「数多いと手間掛かるし面倒っちゅー話やろ」
「ちょお誰か今俺のこと呼んだ?」
「「呼んでません」」
「即答かい。迷惑メールなら俺んとこもしょっちゅうやで」
「謙也さんの場合寧ろ迷惑メールしか送られてこないんとちゃいますの?」
「俺友達おらん奴みたいやんけ」
「あ、いてはるんですか」
「いるわアホ!」
「せやけどほんま迷惑やし腹立つからアレしよかな。イマイさんの振りして電話したろかな」
「おお、イマイさんて『これ、架空請求ですよね?』て電話して云うやつやろ?」
「あれおもろいっすよね。せやけどナマエ先輩の声やとすぐばれてまうと思いますよ」
「んー、やっぱりあかんかな。しつっこいからぎゃふんと云わせたいねんけど」
「謙也さんにやってもろたらええんやないすか?」
「俺かい。ちゅーか俺かてそない危ない真似したないわ」
「ええやん謙也ー。乗りかかった船なんやから」
「いや乗ってへんやろ」
「さすがヘタレっすわ」
「さすがの意味がわからんわ。ほなら財前が協力したらええやん」
「めんどいんで嫌っすわ」
「あ!今日の夜イマイさんやるやん」
「まじすか」
「まじだが。それ見てちゃんと勉強せなあかんでー。特に謙也」
「だからなんで俺」



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