「確かに謙也さんはヘタレですけど、もう少しまともな『人間』やと思ってました」
「財前……」
「せやけどいまよう分かりましたわ。謙也さん、あんたそもそも『人間』とちゃいますね」
「財前んんんんん!」

放課後の部室。俺は15年間生きてきた中で、生まれて初めて人間としての存在を否定されてもうた。それも、後輩にや。そらまあ財前の毒舌っぷりは今に始まったことやないねんけど、せやけど俺、人とちゃうって……。どないやねん。はあ、今日何度目かも分からん溜息をつく。痛みこそとっくに引いたものの、俺の左頬は真っ赤に腫れ上がっとった。そら、あんな強烈なビンタかまされたらこうもなるわなあ。林檎ちゃんやで、林檎ちゃん。いや、笑い事ちゃうねんで。

「それにしても、ほんま可哀相っすわ。その人」
「いきなり公衆の面前で『俺の飼っとったイグアナに似とるんや』なんて云われてみい。傷付かへん女の子なんておらんで、謙也」

自分で云うのもアレやけど、俺はまあまあモテる。白石に比べたら大したことはあらへんかもしれんけどな。バレンタインなんかもぎょうさんチョコレート貰うし、告白なんかもしょっちゅうや。けど、自分が好いとる子と結ばれた試しは全くと云っていい程ない。告白しても、ほぼ振られてまうねん。玉砕覚悟の告白が見事に玉砕っちゅーやつで。ほんでその理由が「デリカシーが無い」やったり「女心が解ってなさすぎる」やったり「無神経」やったり。

イグアナに似とるってそないにショックなことなんや。俺は叩かれた左頬を代償に、また一つ女の子の心理っちゅうやつを学んだ気がした。白石と違て、俺は女の子の扱いに慣れてへんからな。おん、白石と違て。

「転校早々不登校にでもなったら、完璧謙也さんのせいっすね」
「うっ……」
「財前、あんまり脅かしんとき。ほな、そろそろ練習始めんで」


明日、謝らなあかんなあ。ちゅうか明日、ちゃんと来てくれるんやろか。はあ。



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