私には魅力がない。
女の子らしい素直な可愛らしさもなければ、男好みする女性らしい体つきをしているわけでもない。だから彼は触れてくれないのかもしれない。
でもべたべた触って欲しいわけじゃない。触って欲しいけど触って欲しくない。なんて矛盾してるんだろう。けれど私だって一応年頃の少女というやつだ。そういったことに興味があっても悪くないと思う。好きな人に触れて欲しいと思うことは、悪くない。
「どうしたんすか」
そろそろ眠りについても良い頃。ロビンの部屋にいた私は、ベッドに腰かけている彼の隣に座った。
「何でもない」
嘘をついて空いているロビンの手を握った。ロビンは私の手を振り払わず、そのまま頬を撫でた。優しい手つき。恥ずかしさと安心が胸を満たす。
「何か嫌なことでもあったんで?」
「違うよ」
「じゃあ何だよ」
彼の問いに黙ったまま後ろに回る。そして実は広い背をぎゅうと抱きしめた。温かい。眠ってしまいそうになるところを抑え、ドレイク姐さんやマルタさんほど大きくない胸を押し付けてみる。少しロビンの体が跳ねた気がした。
「ほんとどうしたんだよ」
「こうしたい、気分なの」
ある意味当たっているし、間違っている。もう少し、もう少しと、彼との体を密着させた。
「……んなことしてっと、襲うぞ」
彼はたびたび口にしている。いつもあるからかいは含まれていない。ただ静かに言う。そんな前置きはいいのに。いいから。触って欲しい。ここまでしておいて、口に出せるわけがなくて。でも一言だけ。
「いい、よ」
ロビンの耳元で熱っぽく。はじめてがこんな風になんて、生前の私じゃ考えもしなかったろう。
ロビンは私の体を引きはがし、改めて私を見つめた。ぎらぎら光る緑が私を映している。体の奥が、熱い。
「あのなあ」
ロビンが乱暴に私の手首を掴んだ。少し痛い。だけどそれより私を見下ろす瞳の方が尖っていて胸を突き刺す。冷たささえ感じる。心臓が警報のように鳴り続ける。
「オレがどんだけ我慢してると思ってんだよ」
ということは。彼も、私に触りたいと思ってくれていた、ということで。
「なのにそんな風にくっついてきやがって。我慢してたオレが馬鹿みてえじゃねぇか」
鋭い視線が痛い。じわり目の奥から羞恥が漏れてくる。だって。だって。
「ロビンに、はしたない子って、思われちゃう……。そんなの、やだ……」
怒られた子供みたいに涙が溢れる。本当、子供みたい。恥ずかしい。女から誘うなんてただでさえ恥ずかしくて仕方ないのに。
雫をこぼす私にロビンは口を閉ざしていた。そのまま涙を指で拭っていく。そして私にキスをした。触れるだけのキス。
「じゃ、遠慮なくいただきましょうかねえ」
もう彼はいつもの飄々とした彼に戻っていた。
体勢を変えて、ちゃんとベッドに倒れる。触れて欲しいとは思っていたものの、いざそうなると体が強張る。緊張をほぐしてくれているのか、さっきからキスばかりしている。
「お嬢……」
「んっ、ロビン……」
閉じていた唇から舌が入る。ディープキスもカルデアに来て初めてした。それも両手で足りるくらいしかしたことがない。ようやく息つぎを覚えたくらいだというのに、ロビンは一心不乱に唇を食べていく。すでに頭がふわふわしてきた。
そうしているうちに彼の手が動き始めた。服の上からあまり大きくはないふくらみをやわやわ触る。そのたび体が震える。ちょっとずつ体が火照っていく。
ぬめった舌で首筋をなぞられた。くすぐったい。大きく反応すれば、ロビンが楽しそうに口角を上げた。
「くすぐったいよ、ロビン」
「すぐ気持ちよくなりますよ」
そう言っては執拗に耳や首元に舌を這わす。時々耳たぶを噛んだり、赤い跡をつけながら。
「……コレ、上だけ脱いでもらっていいスか?」
私の着ている服はワンピースのようなものなので、一部だけ肌蹴させるということができない。仕方なく、後ろのチャックを下ろして淡い緑の下着をロビンの前に晒した。
「かわいー下着穿いてんな。緑だし。狙ってたのか?」
「だ、だって……っ」
「はいはい、泣くな泣くな」
照れる私の目尻へキスを落とす。子供扱いされているみたいで悔しい。
だけど彼は機嫌がさらに良くなったのか、ちょうど胸の先端がある部分を摘まむ。痛いわけでも気持ちいいわけでもなく、不思議な感じ。ロビンは背い手を滑りこませ、器用にホックを外した。今更手で隠せるわけもなく、露わになる私の胸。呼吸をするたび上下するそれにロビンがじっと見つめている。
「おっきくないから、そんな見ないでよ……」
「別にオレ巨乳がいいっつーわけじゃねえけど。そんな気になるなら、これからオレが揉んで大きくしてやりますよ」
「馬鹿、ん」
ロビンが胸に顔を寄せた。全体を触ったり先っぽを挟んだり舐めたり噛んだり。なんだか可愛い。そう思うと同時に、熱が昂る。
胸を弄りながら彼の左手が下へ動いていく。腹を体のラインをお尻を脚を撫でられて熱い。
「ひゃっ」
未だに続くキスの嵐に脳内が痺れていた。そこでスカートを思い切りまくられて少し気が戻る。普段は下にガードするものを穿いているけれど今はない。ただ上と同じ淡い緑の下着が丸出しになっているだけだ。
「さすがにまだそんな濡れてねえか」
まじまじと見ながらロビンが言う。冷静に言わないでほしい。ちょうど脚の付け根に唇を寄せ、彼の男性らしい指が大事な部分に下着越しに触れた。そして中に入っていく。
「あっ……」
「慣らしてかねえとキツイだろ」
キツイだろ。その言葉に、ふと視線がロビンの股間に行く。こんもりと窮屈そうに膨らんでいて、私に興奮してくれているのかな、と思った。なんだか下腹部が疼く。
「んゃっ、んぅ……っ」
「やっぱきっついな」
多分入っているのは一本だけなのに、痛い。異物が入ってるのが良く分かる。痛さもしばらく中を探られれば慣れて快感になっていく。だんだん水音がしてきた。
「あ、そこ……きもち、」
「イイ?」
ぐっと奥へ進む指がちょうど気持ちいいところへ擦った。口にしたら重点的に責められて声を漏らしてしまう。シーツを握りしめて耐える。何だか甲高くて私じゃないみたい。恥ずかしい。敏感な場所は素直にロビンの愛撫を受け入れる。
「あ、あっ……ろび、そこ……っ」
「一回イっとくか?どうする?」
「ん……ぁ、やだ……」
するなら、ロビンのがいい。視線だけロビンへ向ける。濡れた視界でロビンの顔が分からない。
「たく、さっきから可愛いコト言いやがって……クソ」
そう呟いて、ごそごそとロビンが下の服を脱いだ。お、っきい。ネットで見てしまった薄い同人誌、修正済みエロ動画でしかみたことない男の人のそれ。赤黒く腫れてグロテスクだ。あんなの、入る気がしない。
それでもロビンは濡れた部分へあてがう。表情を窺うと、ロビンも余裕があまりなさそうだった。我慢していたと彼は言っていた。なら、なくなったって仕方ない。私なんかの貧相な体にあそこまで大きくしてくれてる。嬉しい。嬉しすぎて、これから来る痛みにだって耐えられそう。
「今更怖いとか言ってももうおせーからな、お嬢」
「言わないよ……こんなに、見せてるのに」
「そりゃそうだ。……優しくしてやれねえかも。悪い」
いいよ、という前に額にキスされた。そして一気に痛みがやってきた。
「……っ、あ、んく……っ!」
「痛い、か?」
「ん、だいじょぶ……あっ!」
耐えられない痛みじゃない。返事をしたらロビンが動き始めた。優しくしてやれねえかもと言った割には上下の動きはゆっくりめで、むしろだんだん心地よくなってきた。全部入っているらしい。あんなおっきいものが。とんとん奥を突かれ声が上がる。全身が熱っぽくて仕方ない。少し痛いけど。でも。彼に包まれて幸せだ。
ロビンも気持ちいい、のかな。ふわふわした気持ちのまま彼を見る。整った顔には余裕ない表情。
「お嬢……湊……っ」
「ん、あん、あ……!ろびん……っ、すき、」
好き、好き、好き。うわごとのように繰り返す。先ほど少し引いた快感がまた上がる。あ、なんか、びりびりしきた。
「ろ、び、なんか、ゃ、くる……」
「オレもイくから、な……」
ロビンは私にキスをしながら腰を動かす。もう激しくなってきた動きに耐えられそうにない。
「あっ、ア、ね、も、むり、うあっ!」
「あ、オレも出る、わ」
背筋に電撃が走る。怖いくらい。しばらく余韻が残って、ただでさえ呆けた状態が加速してしまう。ロビンのものはまだ抜かれてなくて、温かい。呼吸を整えて抜こうとするロビンの手を取る。
「抜かないで……もうちょっと、このまま……」
「……あいよ」
キスをして私を抱きしめる。汗の匂いと、苦みのする匂いと、塩っぽい匂い。それからロビンの香りがして、安心する。
そういえば。何にも考えずにゴムをつけてもらわなかったけど。私と彼は人間じゃないし。いいか。子供なんてできるわけがない。できたらなんて夢は見てはいけない。一緒にこうしていられること自体が夢なのに。
ロビンの温もりを感じていると、また下半身がずるりと動いた。声を上げてしまう。
「もっかいしていいっすか」
耳元でロビンがイケメンボイスで囁く。したりない、らしい。でも今の私に甘い声で言われて断れることができるわけがない。
「いい、よ」
腰を引いて半分ほど抜いて。一気に押し戻す。奥を叩くだけじゃなくて突き上げられもした。できるだけ体をひっつけて。もう痛みはない。ただただ幸せで、気持ちよくて。
「はン、ァ、ろびん……っ、おく、きて……!」
「我慢させられた分、たっぷりやるからな……湊」
ペースが小刻みになってきて、限界がまた来そうになる。彼が奥に奥にと攻めて、意識が一瞬飛びそうになった。私はぎゅっと無意識にナカを締めて、ロビンが体を震わせた。小さく痙攣する私をもう一度抱きしめながら、ロビンがまだ押し付けてくる。ナカにまだ出ている感覚がある。
ずるりとロビンが離れる。圧迫感はなくなったものの、同時にどろりと白濁の液体が漏れた。こんなに、出たんだ。
「うわ、溢れてんな。今拭くもん取ってくる」
どこかへ行こうとするロビンの手を取った。離れて欲しくなかった。濡れた瞳で見つめれば、彼は肩をすくめて私の隣へ転がった。腰に手を添えて体を寄せられる。温かい。筋肉がついた胸板にどきどきする。すり寄ると、頭を撫でられた。
「湊」
「ん……」
「好きだ」
彼のとびきり優しくて愛がこもった言葉を、私は心の中で繰り返した。お嬢、でも、マスター、でもない、私の名前で。
「私も、大好き。名前のないひと」
瞼を閉じれば、疲れていたせいですぐに眠りに落ちた。
私には魅力なんてないけど。今だってどうして好きになってくれたか、よく分かってないけど。でも、こうして彼が甘い口づけをくれることは、真実だった。
カルデアに来てのはじめて。書いたのは久々のような、そうでもないような。
何故最後に「名前のないひと」と呼んでいるのかというと、彼自身は「ロビンフッド」という名前ではないからです。「ロビンフッド」の元ネタの一人の青年、というだけで、名前はきっと違っていて、誰にも知られていません。本人も覚えていないのかどうかは分かりませんが……そこらへん知りたいです。彼自身を指すために「名前のないひと」としています。あんまりロビンフッドと連呼したくないこじらせです。ただ、区別がつかないのでロビンなどと呼ばせてしまいますが。彼自身はアーチャーの方がいいのかな、と思わなくもないです。どうなんだろう。