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ほしがりな純白

とある離島で臨海学校が行われることになった。当然生徒である湊も参加しなければならない。臨海学校なんて二次元の中でしか縁がなく、内心湊は浮かれていた。

しかし、そもそも島まで辿り着くまでが大変だったり、その先もBBがどう見てもラブホテルにしか見えないホテルを建てていたり、部屋割りも波乱になったり、いつもと変わらず慌ただしい。湊のような一般生徒でこれなのだから、生徒会はもっと気苦労が絶えなかっただろう。

ちなみに湊はジャンヌルダルクオルタ、アタランテ、綾香、シータと同室である。比較的大人しい女子たちだったため特に夜更かしもせず昨日は終わった。ジャンヌオルタはもっと話し込みたそうだったが。
エリザは白野に同室に誘われたらしく、満更でもない顔で報告された。おそらくネロや玉藻あたりも同室なのにいいのか。乙女の表情を浮かべていたエリザに野暮なことは言えず、湊は曖昧な微笑みを向けるだけに留めた。

そして今日は海水浴。湊も水着を持って更衣室に向かう。

「湊さん、湊さん」

聞き覚えがありすぎる甘い声がした。この声を耳にしていいことなどあった記憶がない。かといって無視できるわけもなく、湊は嫌な顔をして振り返る。

「何、BB。岸波ならどっちも見てないよ」
「違います!センパイのことは今はいいんです」
「じゃあ何?」

BBが白野のこと以外に優先することあるんだ。いや、あるのだろうが、月の裏側でもこちらでもそんなことは全くなかったので少し意外に思う。

「チョコレートソースとキャラメルソース、たっぷりホイップクリームと果実乗せ!なーんて、胃がもたれそうなほど甘ったるいパンケーキみたいに浮かれまくってる湊さんに朗報なんですけど」

BBはやれやれと肩をすくめ、大袈裟なほどため息をつく。文句しかないが、実際こちらに来てからの湊は浮かれまくっている。黙って睨みながら次の言葉を待つ。

「月の裏側での報酬、ってわけでもないんですけど。BBちゃんってば優しいし気が利くので、ミドチャさんと湊さんのために、おひとつお部屋をご用意したんです」
「え、なんで?」
「なんでって……湊さん、臨海学校の夜ですよ?恋人と夜の逢瀬とかしたいじゃないですか?こういうとき部屋を抜け出して二人でひっそり会うのが定番も定番、むしろ何のために来た?ってものじゃないですか」
「そこまで言う?」

少女漫画やラブコメアニメでよく見るパターンではある。湊も少し抜け出して青年と一緒に話してみたい。しかし、それはおそらく厳しいだろうし、青年は青年で同性と騒ぎたいときもあるはずだ。湊も湊で女子と中身のない会話をしてみたい。

想定していたより乗り気でない湊にBBは頬を引きつらせた。咳払いした後、そのまま勢いよく言う。

「とにかく!お部屋をご用意しましたので……何にでも使ってください。そう、何にでも」

BBが何やら含みがある笑みを愛らしい顔に広げた。あのBBのことだから完全なる善意なわけがない。何かしらの意図があるはずだ。しかし、さっぱり見当がつかず湊は顔をしかめる。

「はぁ。すごく気になるけど、忙しそうなのにわざわざありがとう」
「いえいえ、これくらい。あ、でも、もっと私の優しさを周りの人にアピールしてもいいんですよ?センパイとか、センパイとかに」
「……伝えてはおくよ」

BBに呆れた目を向け、湊は水着が入ったバッグを持ち直した。



海は楽しかった。湊はエリザと泳ぎ、白野たちとビーチバレーをし、ビーチフラッグに参加していたアタランテを応援していた。もちろんロビンと砂浜を散歩したりもした。満喫しすぎて未だに体が一人でに跳ねそうになる。

BBQの後は各々自由である。湊はロビンに呼ばれ、女子部屋を抜け出していた。目的地はBBが用意したという部屋。
ロビンはすでに中にいるという。待たせても申し訳ないので急いだが、湊たちの部屋からはだいぶ離れている。少し迷ったが何とか着いた。

この中には、好きな人が待っている。同じ状況だが、寮と旅行のホテルとではまるで違う。心臓の鼓動が速くなってくるのも当たり前のことだ。湊は改めて部屋の番号を確認する。息を吸う。そして、ノックした。

「ほい、お待ちしてましたよ。オレの部屋でもねーですけど、どうぞ」
「うん」

中は他の部屋と特別変わったところはない。大きなベッドがひとつだけ真ん中に設置されている。ベッドの近くには何やら様々な照明のボタンがある。元の部屋でも思ったが、湊には何の効果があるのかいまいちよく分からない。完全に見た目はラブホテルにしか見えないので、雰囲気作りのためだろうか。とはいっても湊も完全に知識だけで、実物はおろか写真すらも見たことがない。

ベッドに座ったロビンの隣に腰を下ろす。

「今日はずいぶん楽しそうだったな、お嬢」
「だって海だよ、海!海なんて本当に小さい頃しか見たことないけど、すごく好きでさ。こうやって誰かと同い年?と遊んだりとかも全然なかったし……楽しかった」
「そいつは良かったですわ」

湊は屈託のない笑顔で言う。それに釣られてロビンも薄く微笑んだ。

こうして誰もいない場所で二人きりで話していると、まるで秘密の逢瀬のようだ。昼間の歓楽とは異なる胸の弾み。

「じゃあ別の思い出も作っておきます?」
「え?」

くい、と顎を持ち上げられた。緑の垂れた目がまっすぐ湊を見つめている。絡みつくような視線から逃れたくても逸らせない。

「そろそろ慣れてきたろ。今日は最後までいけるよな」

――――あ、そういうことか。ロビンの言葉に、湊はBBの思惑に気付いた。
おそらくBBは白野たちと仲を深めようと進展させようとこのホテルを設計して。お礼などと言いつつ面白半分に湊たちのために部屋を用意して。さすがにどこまで湊たちが進んでいるかまでは知らないだろうが、つまり、そういうことなのだろう。
全く思い当たらなかった湊の口から奇妙な声が漏れる。顔どころか体の温度も上昇していく。

「もちろん無理にとは言わねえけど」

明らかに狼狽しだした湊に、ロビンが顎から手を離した。

ここで済ますのは違う気もするし、良い気もする。まだ心の準備ができないと口にすれば、この青年は軽く文句を言ってやめてくれる。そういう人だと湊は知っている。

「名前のないひと」
「ん?」

俯きながらも青年の服を握る。散々ここまで待ってくれていて、今更無理だと嫌だと答えるのはわがままにもほどがある。

「し、しよ……?」

目を見ては言えない。今はそれで許してほしい。

一瞬の間を置いて、湊の視界が天井になった。すぐに名前の無い青年へと変わる。いつものように飄々とした笑みはどこか悦楽が混ざっていた。
煌々としていた照明が突如薄暗くなった。それだけなのに体が跳ねる。

「なら、今日こそさせてもらいましょうか」

自然な流れで唇が繋がる。ちゅぅ、とわざと音が立てるのがいやらしい。キスをしていくとさらに気分が高まる。ロビンが器用に体を撫でるのでなおさらだ。
隙間を縫って入ってきた舌に、同じそれで触れる。そのまま舌の裏を撫でた。息はまだ少し続く。もっと、もっと。求めるままに口づける。

「随分積極的ですねえ。オレの方が食われちまいそうだぜ」
「……だって、ロビンとのキス、好きなんだもん」

言葉ではない「好き」をもらって、胸があたたかな感情で満ちていくから。抱きしめてもらっているだけで夢のような心地になるのだった。何度も何度も夢なのだろうと思いながらキスに浸る。

「はいはい。欲しがりなお嬢に今夜もいっぱいしてやりますよ」
「ちがっ、んっ……はぁ、」

文句を返そうとするも口が塞がれた。それも舌を交わっているうちに忘れる。

色気のないTシャツは大きな手によってめくられ、下着が姿を現す。何度か感触を確かめるように軽く揉まれた後、容赦なくホックが外された。そろそろ慣れてきたと言われながら、異性に晒されるはずもなかった肌を見せることに恥ずかしさが消え去らない。
どこで経験したのやら、卑猥に触れる手のおかげで不思議な声が濡れた口からこぼれる。

愛撫され、どこか虚ろな目で湊がロビンの肩を掴んだ。

「ね、私も……ロビン、触りたい」
「ほお。そんじゃあ、お願いしますかね」

ロビンが上半身を起こして受け入れる体勢になった。湊も起き上がり、青年に抱きつく。少し汗の匂いがする。厚い胸に体を預け、心臓の音を聞くように寄り添う。小さな手で引き締まった体を確かめる。

「触るっっつーか、抱きしめてるだろ、これじゃ」
「ダメ?」
「ダメじゃねえけど。お、」

湊はそうしているだけでどきどきするのだが、ロビンは不満らしい。お望みならば、と、かぷり肩に軽く噛みついた。普段の「練習」でロビンにやられているように、ゆっくり舌を噛み後に這わせ、吸う。だが上手く跡がつかない。また調べてみるか、教わろう。そう思いながら噛んでは舐めてを繰り返す。

「物理的に食うのはなしにしてくださいよ」
「ばか。できないから」
「つーか触るならこっちでしょ、こっち」

湊の手を取って、ロビンが膨張した股間に誘導する。服越しとはいえ明らかに硬く熱を感じるそれに、湊の頬がさらに赤く染まった。

「今日は一人でやってみ」
「が、頑張る」

服と下着を同時に下ろせば男性器が飛び出た。そのたびに湊は毎度飛び上がりそうなほど驚いてしまう。気合を入れ直し、するする撫でる。
汁が先端から出ているおかげで手が滑りやすい。何度か一緒にやったことを思い出しながら触れていく。竿を指の腹で撫でたり、傘の部分を優しく触れたり、根元を強めに握ったり。

これでいいのかな。湊が無言のままのロビンへ視線を向ける。息は荒い。湊を見下ろす眼差しは甘く、溶けるようだ。胸が、腹の奥がきゅんとなる。何だかキスをしたくなって、体を密着させて下からキスした。

しばらく続けているとロビンが湊の手を抑えた。

「あー、お嬢、出そうなんで、そこまででいい」
「一回出さなくていいの?」
「せっかく初めてやらせてもらえるんだから、出すなら挿れてからのがいいっしょ」
「え、あ、そ、そう……なの?」
「そうそう。よし、攻守交替な」

湊の言葉にロビンはにやりと笑う。そして再び湊をベッドへ押し倒した。そのまま湊のショートパンツを勢いよくずらす。

「ちょっ、急に……!」

口だけの軽い抵抗も恥部に触れられれば無意味だ。愛撫から時間は経ったが、体の火照りは収まるわけもなく、なぞられただけで体が震える。

「お嬢ここ好きだよな?」
「そんな、こと、ない……!あ、んっ」

一番敏感な部分を責められているせいか嬌声が漏れる。そのこもった声を聞くたび、自分の声ではない気がして羞恥と奇妙さが湊を襲う。抑えようと唇を噛むものの、すぐにロビンが左手の指でそれを制止した。薄く開いた唇からまた吐息が出る。
水音が響くようになってきた。浅い部分を弄られているとすぐに達してしまいそうになる。濡れた瞳でロビンを見つめ、湊はうわ言のように言う。

「あ、あ……ロビン、ちょっと、やめて……」
「ん?何だよ、さすがに怖くなったとか勘弁してくれよ」
「ちがくて、あの……できるだけ、一緒にイきたいから……その……」

朱に染まり切っているはずの顔がもっと赤くなる。最後までは口にできない。湊の態度にロビンは目を細めた。

「なるほど。なら、やらせてもらいましょうか」

ロビンが愛液でずぶずぶになった湊にこすりつける。くすぐったくて体が少し反応してしまう。

「きつかったら無理すんなよ」
「うん、っ」

あたたかい言葉に頷いたと同時に、異物が侵入してきた。狭い入り口をこじ開けるように入ってくる。

「ぅ、あ……」
「痛いか?」
「ん、大丈夫」

股が裂けるとか肉が抉られるとか、半端すぎる知識からかなり不安だったものの、想像していたより遥かに痛みは少ない。指より太いものが入っていることにむしろ驚く。
それでも痛みがゼロではない。どうしても苦しみが表情に出る。

「湊」
「あ、んん……ん、ふ」

唐突に、低く甘く、優しい声音で名前を呼ばれた。湊。自分の名前を。そう何度も音にされたことのない名前を。気付いたときには苦痛を吸い込むように口づけられていた。それに応じると、不思議と痛みが和らいでいく。
いつの間にか完全に二人の体が繋がっていた。結合部を見てロビンが言う。

「何とか入ったな。いけそうか?」
「うん。ロビンの……名前のないひとの、好きに動いていいから」

湊は顔を少し歪めながらも、全てを包みこむような眼差しをロビンに向ける。貴方が好きだから、大好きだから。好きなようにしてほしい。

息を呑む音が、聞こえた気がした。

「……未だにキスのひとつも慣れないくらい初心な女がいっちょ前にんなこと言わなくていいっつの」

名前のない青年は湊の手を握る。弱々しくもなく、強すぎるわけでもない力加減。湊も同じ力で握り返す。
ロビンが動き始めた。ゆっくりと、湊の体を労わるように。貫く苦しみはだんだん快楽に塗り替えられていく。

「あ、あっ、好き……、好き……っ」

今他の参加者は語らっていたり、酒を飲んでいたり、眠りについている頃のはずだ。それなのに少女と青年は手を握りながら、見つめ合いながら、キスをしながら交わっている。その背徳感がなおさら悦楽をかき立てた。
突きながらロビンは軽く膨らんだ秘豆を押し込む。頭の芯が溶けそうな痺れに湊の腰が浮く。

「や、そこ、すぐきちゃう、から……っ!」
「そろそろイきそうなんで……ねっ。なるべく一緒がイイ、んだろ?」
「あ、あ、あ……、っ!」

青年は配慮してくれているというのに湊は我慢ができそうになかった。気が抜けた瞬間、湊の視界が真っ白になった。同時に圧迫感が薄れ、太ももに冷たいものがかかる。

「あっぶね……お嬢、意識あります?」
「うん。大丈夫」
「疲れたか?」
「ううん。ロビンも疲れてない?」
「これくらいで疲れたとか言ってらんねーよ。何ならもう一回したいくらいだね」

ロビンは淫靡に笑う。戦いと性行為に使う体力は違うだろうが、ロビンなら本当にできそうだった。湊はむっとして顔を背けた。

「バカ。……怪しまれちゃうから、また今度」
「残念」

湊の言葉にロビンはわざとらしく肩をすくめた。

腑に落ちないまま湊は枕に顔を埋める。体を貫かれる恐怖がないことが自分でも妙な気分だった。青年に触れられたい、繋がりたい、気持ちよくなってほしいという欲求が勝った。愛だけでは乗り越えられないものもあるはずなのに。これまで慣らしてきたせいか、青年が慣れているせいなのか。どちらでもいいと思う。

湊はロビンの横顔を見た。疲れていないと言ったものの、ロビンは少し呆けて天井を見つめていた。顔に惹かれたわけでは全くないし、湊の好みでもないが、女好きのする顔立ちには違いなく、胸の奥できゅんと音が鳴る。

「名前のないひと」

ロビンが視線だけ寄越す。体を起こし、湊はいつものようにわがままを言う。

「ぎゅってして」

軽くシャワーを浴びたらもう部屋に戻らなければならない。どうせバレるから素直にロビンと会ってくると伝えたものの、長引けば不審と軽蔑の眼差しを注がれるだろう。

――――だけど、もう少しだけ。ぬくもりが欲しい。

ロビンは湊の言葉に、嬉しいような、仕方ないというような表情を浮かべた。小さな子供を見るようで違うこの目が、湊はとても好きだった。
起き上がったロビンが湊を包む。

「ほんと、オレのお嬢さんは甘えただよな」
「……ごめんなさい」
「謝んなって」

先ほどの濃密な時間と異なる静かなひととき。その落差さえもひどく愛おしい。

「大好き。名前のないひと」

好きでは物足りない。かといって愛しているも湊には少し早い気がする。だから毎度大好きと力を入れてしまう。
湊を抱きしめる腕の力がほんの少し強まる。

「オレも好きだぜ。湊」

あのときと同じように、名前のない青年が湊へ返した。あのときの情景が思い起こされて目頭が熱くなる。湊は喜びが落ちてきそうになるのをぐっとこらえ、唇をほころばせた。



本当は臨海学校前にして、臨海学校編では水着でとか思ってたんですが、さすがに二回目で野外とかいろいろとないのでは?と考え直してやめました。こっちの方がいい思い出(?)になりそうですし。水着はまたいつか……。
綾香とシータは何となく入れましたが、それなりに仲良くやっていけそうではあります。ジャンヌオルタだけ皆と上手くいかなそうですが。
次は良妻賢部のカフェ話予定です。お手伝いというだけでそのあたりは少し違うんでしょうか。エプロンつけてとかは書きたいですが裏ではないです。