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拙い指先を愛してください

「ん」

どちらかの部屋にいて、甘い眼差しで見つめられたら、キスをされることは分かってきた。その次に深く口づけされたら、今度は体に触れられるのだということも。
その間に湊よりずっと大きな手が胸を包み込む。この時点でまだ気持ちいいとは感じないが、心臓はロビンに聞こえそうなくらい大きくどくどくと脈打っていた。
息継ぎは依然としてうまくできない。それでも舌に唇に応えようと湊は必死だった。

「んっ……はぁ、」

ようやく唇が離れたところで酸素を思い切り取り込む。それでも全然足りないくらいだ。
ロビンは余裕そうだが、息は熱っぽく目元は色っぽい。それを見るだけでまた胸が痛くなる。

「なあ、お嬢」
「……何?」

ロビンの一挙一動に頭がくらくらしている。何を言われるのだろう。湊はどうにか意識を保てるようにシーツを握った。

「お嬢がよければなんすけど。オレも気持ち良くなりてえんで、触ってくれません?ここ」

ロビンが股間を指差して言った。
ということは、つまり。男性器に、触ってほしいということで。理解した瞬間、湊の頭がぼっと音を立てた。
いつかやらなければならないことだ。それにロビンの言う通り、自分ばかり触れてもらって気持ち良くなるのは不公平すぎる。

もう何度かロビンが湊に触れて、薄い本によくある「イく」という感覚は身にもって覚えていた。だから、そろそろ触ってほしいと言われるかもしれないと覚悟はしていたのだ。そのために少しネットで検索していて。結局竿やらカリやらの単語に動揺しまくって読み込んではいないのだが。二次元なら何も考えず受け入れられるのに。我ながらよく分からない。

湊は顔を赤らめ、小さく返した。

「……あの、分かんない、から、教えてね」
「もちろん。優しく教えますよ」

ロビンが楽しげに口角を上げた。それすらも格好良く映るからイケメンというやつはずるすぎる。

「前はオレがお嬢の体好きに触ってたんで、今度はお嬢がオレの体好きに触っていいぜ」
「す、好きにって……」

突然好きにといわれても困る。
湊はロビンの肌をあまり見たことがないし触ってもいない。戦闘服は鎖骨と胸元が少し見えていたが、後は腕くらいなものだ。怪我を治療したときも上半身裸に剥いてはいないし、そこに性的な感情は一切なかった。

改めてロビンの体を観察する。一見ロビンは細身だが、繰り出される力強い蹴りや俊敏な動きからして貧弱な体では絶対にない。性的な意味を除いても、正直ロビンの体にとても興味があった。

「気持ち良くとかできないんだけど……」
「そこは何も考えなくていいから。ほら」

そう言われたらいいのだろう。おそるおそる、湊はロビンの胸を撫でてみた。遠くから見たことのあるローマの神祖やケルトの大英雄ほど筋骨隆々としていないものの、十分一般の男性よりも硬くて厚い。女の胸と全然違う。

「服脱いだ方がいいか?」
「え、あ……う、うん」

ロビンがカットソーを脱ぐ。一気に肌色が増えて、湊は驚きの声を漏らしそうになった。
前から知っていたが腕は湊よりずっと太い。腹筋は綺麗に割れている。何かに憑りつかれたように目が離せない。何故か唾がどっと溢れてくる。ロビンの体を見ているとどきどきしてたまらくなってきた。

「そんな見つめられると困りますねえ。お気に召しました?」
「き、気に入るっていうか……やっぱりすごかったんだなっていうか、いろんな意味でどきどきするっていうか……」
「ほー。そりゃあ良かった」

ロビンは目を細める。それにまた湊の鼓動が速くなった。
湊はロビンにぺたぺたと遠慮がちに触れる。盛り上がった筋肉に逞しさを覚える。この腕でこの体で抱きしめられていたのだと考えると、ますますときめいた。
もう少し密着する。酸素が足りないわけでもないのに頭がふわふわして、夢を見ているようだ。鎖骨のあたりにちゅっとキスをする。胸板に、腕に、腹に、指に。男らしく魅力的な体に唇を落としていく。

舐めた方が、いいのかな。指なら舐められる気がする。ちらりとロビンを見た。ロビンはいたずらっぽくも見守るように優しく笑っている。何だか悔しくなって、湊は右手の人差し指を口に含んだ。

「ん……」

官能的な舐め方など湊は知らない。ただ赤ん坊のように吸って、ちろちろと舌先で舐めてみるだけだ。

「指、うまいか?」
「ん」

別に何の味がするというわけでもないけれど、何となくそう言われるとおいしい気がした。

「んぐっ」

夢中で舐めていると二本目が入ってきた。口の中で舌を引っ張られたり撫でられたり。ロビンのターンばっかりだ。好きにしていいって言ったのに。今は湊の番なのに。軽くロビンを睨む。それでもロビンは怯むどころかにやにやしていた。
指を舐めるのをやめ、湊もジャケットを脱ぐ。薄い青のキャミソール姿でそのままぎゅうっと抱きしめた。するする、手を背中から前へ移動し、下へと下がっていく。腰のあたりで手を止めた。

「……ベルト、外していい?」
「お、外してくれるんすか?」

墓穴を掘った。自分で外してなんてもう言えない。
ベルトを外すなんて行為、当然だが湊にとっては初めてで手間取ってしまう。ロビンは楽しそうに見下ろすだけで何も言わないし、余計に時間がかかった。
ようやくベルトが外れ、シーツに落ちた。もう下着が軽く見えている。あとは下着を引っ張ればいいだけ。それだけが湊にとって大きすぎる。

「ほら、頑張れお嬢」

もう十分頑張ってるのに。目を吊り上げてもロビンの表情は変わらなかった。
ここで躊躇していても進まない。湊は下着に手をかけ引っ張った。途端、中身がぼろりと飛び出る。それは想像していたよりもグロテスクで、変な声を出しそうになった。
AVはさすがに手を出さなかったし出そうとも思わなかったし、ネットに頻繁に出るエロ漫画も思い切り修正してある。薄い本だって多少マイルドに描かれていた。実物を目にして湊はますますうろたえてしまう。
実物を見たことがないのだから大きいのか普通なのかすら湊には判断がつかない。っていうか、これ本当に入るの?絶対無理。湊は不安になったが、今はその段階ですらない。頭を振ってロビンに尋ねた。

「えっと……どうすればいいの?」
「握ってここらへん上下してみてくれます?」
「う、うん」

いわゆる湊は竿の部分を握る。握るというおりは触れるの方が正しいかもしれない。少しこする程度に動かしてみる。
あまりにも湊がおっかなびっくりしているせいか、ロビンは笑いを含んだ優しい声音で言う。

「そんな怯えなくてもいいぜ。もうちっと強めでも」
「そうなの?」

刺激が強いと痛いものだとばかり。湊が怖がっているのもあるが、今のままでは物足りないらしい。ロビンに言われた通りほんの少しだけ握る力を強める。

「あの……ゆっくりした方がいい?速い方がいい?」
「あんまり速くしないでもらえればそれで充分」
「わ、分かった」

ロビンのものは湊がこするたびにびくびく動いて別の生き物みたいだった。気持ちいいのだろうか。分かりやすくロビンは息を荒げているわけではない。そんなに感じているわけでもないのだろう。

「ごめんね」

無意識に湊の口から謝罪が出た。愉悦と温和が混じったロビンの顔色が怪訝に染まる。

「は?何だよ突然」
「へたくそで……せっかくだから、ロビンも気持ち良くなってほしいのに」

経験がないから当たり前なのに。それでも恥ずかしさよりも申し訳なさの方が勝って視界がにじみそうになる。慣れたいといったのは自分からだけど、手を煩わせてばかりなのも事実だった。

ロビンはそんな湊に呆れた目を向けた。しかしその眼差しはあくまで柔らかい。

「いや、初めてなんだからしょうがないでしょ。これも始めたばっかだし。っつーか、上手かったらビビるわ。んなこと気にしないでいいんだよ。……それに、あたふたしてるお嬢見てるとそれはそれで興奮してきますし?」

ロビンはびたっと赤黒いものを湊の太ももに押し付けた。湊の肩が跳ねる。それは燃えているように熱く、心臓そのもののようにどくどくしている。視線を集中させていなかったので気づかなかったが、もう反っていた。触っていたときよりも明らかに硬さや熱が違っていて、湊が甘い空気を断ち切ったのに一向に萎える気配はないようだった。顔を再び真っ赤に染めた湊へロビンが意地悪く艶っぽく微笑む。

「ほら、分かるだろ」
「う、うん……」

湊の拙い愛撫でも昂ってくれたのだと思うと、暗く乾いた悲しさが晴れた気持ちになれた。湊は目元を和らげ、太ももに当てられていた男性器を触れる。

「まだ同じことした方がいい?」
「次このあたり、こう……あー、一緒にやるか」

湊の手に大きなロビンの手が重なり、人差し指だけ亀頭に導かれた。案外ぷにぷにしていて変な感触だ。ロビンの指が裏筋やカリの部分を撫でていたのでそれに倣う。亀頭の弾力にもどきまぎしながら、湊は竿をこするのと交互にやっていく。

「そ。イイ感じだぜ」

ロビンが湊の耳元で囁く。低く甘い声が心地よくて、褒められた喜びと同時に言いようもない感情が体を走った。

いくつか触り方を教わって緩急をつけていくうちに、男性器の先端から汁が出てきた。我慢汁というやつだろうか。汁が出てきたおかげでロビンのものを弄りやすい。ロビンの腰も軽く引いていて、感じているようだった。湊は嬉しくてもう少し体を密着させる。

「お嬢、出るんでちょっと……っ」
「わっ」

ロビンが呻き声を上げた途端、びゅっと白濁の液が先端から飛び出た。勢いよく出た精液は湊の頬に少しかかる。精液のつんとした臭いが鼻を攻撃し、いい匂いとはお世辞にも言い難い。湊は顔をしかめた。

「悪い。目に入ってないですか?」
「大丈夫」

ロビンは近くに用意していたティッシュで湊の頬を拭き取った。
拭かれた後、湊は目線を股間に戻す。ロビンのそれはまだ精液が残っている。薄い本だとこの後大抵男が「掃除」といって舐めさせていたり、女性が積極的に舐め取っていた。

――――ロビンはびっくりするかな。喜ぶのかな。もっと興奮、するのかな。

湊は股間に顔を埋める。少し萎えた男性器の先端に根元に手を添えてその先端に軽く口づけると、びくっとロビン自身が動いた。

「おい、お嬢?」
「残ってるから、掃除した方がいいと思って……」
「何の影響だっつーの。……ま、口でもやってくれるならやってもらいましょうかね」
「え。一回出したら男の人って賢者タイムあるんじゃないの?」
「何だそりゃ」
「えーと、エッチな気分がなくなること」
「ほんと変なことばっか知ってんな」

ネットで気軽に使われているようなものならさすがに分かる。中途半端すぎる知識にロビンは呆れかえっていた。それからすぐにいやらしく笑う。

「さっきも言いましたけど、初心なお嬢が頑張ってんだからエロい気分が収まるわけないでしょ?」
「……ロビンのバカ」
「はいはい」

あやすように頭を撫でられる。むっすりしたまま、湊はまたキスをしてロビンを咥えた。

「最初はお好きにどうぞ。あ、歯当てないようにだけ頼みますわ」
「ん」

舌先で先端を濡らし、ゆっくりと全体に舌を伸ばす。時々口に深く含み、口から出して舌を這わせる。残っていた精液が口の中で絡んで気持ち悪い。それにひどく苦い。今すぐ吐き出したいくらいにまずかった。
しかし、ロビンの緑の瞳が熱く湊を見つめている。それに応えたくて、やめる気は全く起きなかった。口で奉仕しているうちにロビンのものがまた硬くなっていく。

「顎疲れたなら無理しないでいいからな」
「っ!んぶ……」

ロビンの手が下着に隠れた恥部に触れた。湿ったそこをなぞり、男の指が中に入る。さすがに湊も舐めるのをやめてロビンに抗議した。

「ちょっと、やってるんだからやめてってば。あっ」
「いいだろ、別に。しっかしまあ、全然触ってないのに濡れてんな。オレの咥えてお嬢もエロい気分になりました?」
「バカ……っ」

確かに湊も性欲というものがあるからこうして触れてほしいと思ったり触れているのだけど。言葉にされると薄れていた羞恥が一気に呼び戻されてしまう。
好きな人の体に触れて、情欲が湧かない人間はあまりいないだろう。もちろん肉体的な繋がりがいらない場合だってあるが、湊は触れられたり触れたりして不安が吹き飛び幸福に満たされていた。

中を弄られているのであまり集中はできない。ただ吸い込んだり舐めたり手に戻ったりしているうちに、ロビンの息が荒くなってきた。

「また、出るから……離していいっすよ」

湊は無視して動きを速める。名前のない青年が湊のことを気にかけても自分のことを気にしないように、今は湊のことを気にしないでいてほしかった。
耳に粘着音が響く。口から、恥ずかしい部分から。自分から出しているとは信じがたいほど淫らな音だ。不思議な気持ち良さが体の中に広がっていく。

「おい、やめろって……本当……っ」
「ん、ん……っ」

快感が体を駆け巡っていくと同時に口内に出される。痺れるような快楽に浸りながら男性器を唇から離す。少し粘ついたものがまとわりついた。先ほどよりも量は少ないが、本当にひどい味だ。

「お嬢大丈夫か?」
「やっぱりにがい……まず……」
「だーから離せって言ったろ!ったく、ここに全部吐き出せ」

ロビンが焦った様子で湊を気遣ってくれるものの、とても大丈夫などと返せる余裕がない。人に晒してはいけない顔をしながら、用意してくれた大量のティッシュに吐き出した。
どうにか白い液体を吐き終えたが口にはまだ不快感が残っていた。そのせいで体と胸の昂りは落ち着き始めている。しかし、湊には好きな人に尋ねたいことがあった。湊がロビンの足を軽く叩くと、垂れた色っぽい目を向けられる。それを見つめながらこぼした。

「名前の無いひと。私、頑張れた、かな?」
「……ああ。めちゃくちゃな。良かったぜ」

名前のない青年は唇をほころばせる。泣きたくなるほど優しい声に、湊の胸の奥が明るくなった。湊も嬉しくて微笑んだ。

口の中を洗って片付けたら帰ろう。そう思っていると、

「んじゃ、もう一回イっときましょうか」
「えっ?」

視界がぐるりと変わった。湊の目ににやにや笑っているロビンが映る。何だか嫌な予感がして起き上がろうとするも、ロビンに手首を掴まれた。

「イったのオレ二回お嬢一回じゃ不公平でしょ?」
「不公平じゃないから!今日は私の番だからロビンが満足……したかは分かんないけど、いいの!ひゃっ」
「まあまあ。オレに触られるの、慣れるんだろ?」

甘い声で言われ、首筋を舐められる。それだけで収まったはずの熱がまたじわじわと上がるのを感じる。

――――いつか絶対ひいひい言わせてやる。

そう決意しながら、湊は名前のない青年に身を委ねた。



はじめて触れる話です。日を置いて書いていたのもあってすごいテンポ悪いですね。すみません……。
腕は前々から「思ってたより筋肉あるな……」だったんですが、腹筋は水着が初なので、初めてみたとき「やば……」という声が素で出ました。
順番的に次も裏といきたいところなのですが、さすがに裏ばっかりで疲れたのでお花見か良妻賢部の話だと思います。楽しいんですが書くのが難しくて……。