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震えるこころはいつも二つ

人間の三大欲求というものがある。食欲、睡眠欲、そして性欲。
サーヴァントはどれも必要としないが、欲自体はある。しかもこの型月学園なんてところに来てからはほとんど人間と変わらない。

英雄色を好むなどと言うものの、名前のない青年はそこまでではないし、そもそも英雄ではない。後腐れのないナンパは好きではあるが、この学園でナンパしたことはなかった。以前ならこんなに美女がいるなら少しナンパでもと考えていたろうが、そんな気は全く起きなかった。
きっとナンパなんてしたら少女がどこか悲しそうにひっそりと泣くだろうと思ったら、胸に黒い靄がかかった。月の裏側にいたときよりずっと柔らかな少女の笑みを見ていたら、それだけで心が安らいだ。
我ながらこんな奴だったか。疑問が沸き起こったが、学園で生活しているうちになくなった。


それなりの経験はしたので、名前のない青年はさすがに女にも女の裸にも耐性はある。

ある、が――――。

好きな少女と過ごして、キスをしたらとろけた瞳をされて、男とは明らかに違う体を抱きしめていたら。性欲が湧いてくるのは、仕方ない。

しかし、少女は自分と違って恋愛経験が皆無で処女である。手を繋いでキスをしたくらいで真っ赤になるのだから処女だと検討をつけているだけだが、これで処女ではなかったら月の裏側の出来事は全部嘘だったということになる。嘘なら女性不信になりそうだ。

自分から手を繋ぐのにかなり躊躇していたくせに、練習したいからディープキスをしてとねだる謎の度胸を見せていたが、セックスは早いだろう。気長に待てばいいし、やれなくたって構わない。初めてできた宝物のような存在を、青年は大事にしてやりたかった。

「あの……さ、触って、ほしいの」

そう考えていた頃に、こんな爆弾を投げられた。

休日の夜。ロビンの部屋。己の手に重なる手。少女の真っ赤な顔。これでどこを何をと疑問をぶつけるのは阿呆でしかない。唐突な展開に一瞬ロビンの思考が固まる。何とかすぐに脳内を働かせ、誰の策略か思案し始めた。

――――誰の入れ知恵だ?あの女狐か?それともBBの奴か?あの赤い皇帝様か?ドラ娘じゃねえだろうし……あの黒い聖女様ってこともねえだろうしな。岸波白野もないな。案外ハーウェイの坊ちゃんとか?

「何言ってんのか分かってんのか?」

考えながら、平静を装い尋ねる。湊は初心なくせにたまにこういう大胆な返しをするから困る。

「うん……」

小さく首を縦に振る様を見てさらに焦った。

――――妊娠とかねーとは思うが、ゴムなんてまだ用意してねえ……。こんなに早く、っつーかお嬢から誘ってくるなんて思わなかったぜ。
さてどうしたものか。返答を考えているうちに湊が続ける。

「私、考えたんだけど。その……セッ、クス、は、まだ怖いから……段階を踏めばいいのかなって」

痛む頭を押さえそうになるのを必死でこらえた。確かに前回のことを踏まえれば「段階を刻んで慣れる」にいきついてもおかしくない。
ちらりとロビンは湊を見た。湊の頬はリンゴのように上気していて、頭が羞恥で沸騰しているらしかった。私に触れてなんて、キスをねだるよりも勇気のいったことだろうに。めんどくさいとか重いとか、そんなことよりも可愛らしさで頬が緩んでくる。

名前のない青年は、今まで誰かに愛されたことも誰かを愛したこともない。そういったものは自分にはもったないほどひどく重く、苦しいから。失くしたときに悲しいから。
だから、こうして少女が名前のない自分に無垢な愛情を向けられると、胸を抉られ刺されているようで、同時に森のあたたかな日差しを浴びているようだった。

すぐに返答できなかったせいで、少女の瞳が揺れている。このままだと少女が「変なこと言ってごめんね」と謝り、部屋に帰ってしまって自己嫌悪するだろう。
女から誘われて何もしないなんて。そんなの、男としてどうなのだ。据え膳があるなら食べればいい。

じんわり目を潤ませ始めた湊を、そのままベッドに押し倒した。湊は呆けた表情でロビンを見上げている。

「お嬢がそんな欲求不満だとは思いませんでしたよ」
「ち、ちが……っ」
「まあオレもなんすけど」
「え、」

湊の驚きをキスで呑み込んだ。軽いキスを何度もした後、上唇を吸う。その間に舌を入れると、ぎこちなく湊が舌を差し出してきた。それなりの期間唇を重ねたからか、少しは自分からする余裕もできたらしい。

口づけを繰り返していく最中で、ロビンはあくまで自然に胸に触れる。湊がぴくりと動いた。赤い皇帝や桃色狐よりも胸のサイズは小さいが、しっかりと重みがあって柔らかい。ひと揉みすれば手の中で形を変える。ただの脂肪のはずなのに、どうしてこうも興奮するのか。
ロビンがキャミソールをずらせば下着が現れる。レースのついた薄緑の下着。新品のようだ。

「買ってきたんですか?これ」

指に紐をひっかけてみる。濡れた唇で湊は答えた。

「……うん」
「緑、いいな。似合う」

低く耳元で囁いて、そのまま軽く食んだ。耳は火のように熱く、歯からその熱が伝わってくる。

「み、耳……ぞわってする……」
「我慢してくださいよ」

首筋に顔を埋めて舌を這わせると、小刻みに湊の体が震えた。
ふわり、少し甘やかな香りがする。女の、湊の香りだ。なんだかロビンの胸の奥に何故か懐かしさが広がった。遠い遠い記憶の中でかいだ花のようなそれ。抱きしめていれば普段も香ってくるはずなのに、今は余計に心地よいものに思えた。

鎖骨のあたりに移動し、きつく吸う。

「あ……見えちゃうってば」
「お嬢、きちんと制服着てっからバレねえよ。それとも、もっと上にしてやりましょうか?」

ロビンはいたずらに笑った。それに湊が目を大きく開いた後、視線を泳がせてぼそぼそと呟く。

「……つけてもいい、けど、見えるのは嫌」
「注文の多いお嬢さんだな」
「だから、それやめてってば」
「へいへい」

会話をしていくうちに、湊の強張りがほどけていくのが分かる。かくいうロビンもいつもの調子が戻ってきていた。

体の線をなぞり、脚へと下がる。細いわけではないがちょうどいいように肉がついた脚は撫でるだけでロビンの情欲が増す。
下着の上からだった胸に目をやる。背中に手を回して金具を外した。こんな下着は昔にはなかったせいで手間取ってしまう。湊があまり気にしていないことを祈る。

「あ、」

ロビンはゆるんだ下着を上にずらす。ふたつのふくらみが露わになり、ますます湊の羞恥がいっそう濃くなった。

「隠すなよ。触らせてくれるんだろ?」

あくまで優しく触れ続ける。桃色の乳首はぷっくりと勃ち始めている。それを舌で弄ぶ。

「ん、ん……」

ロビンはたっぷり時間をかけて湊を愛でる。キスと愛撫のしすぎて湊の体が火照り、甘い声も湿った吐息も、撫でるだけで簡単に出るようになった。
湊の熱い体温を感じ、艶めかしい声音を聞き、卑猥な姿を見ていると、意識に靄がかかりそうになる。大事にしてやりたい少女と、久々の性行為。矛盾していそうなそれに青年もひどく興奮していた。

そろそろいいか。ロビンの手が太ももからするすると上へ上り、中央の布にちょんと触れた。

「あ……っ!?」

下着に触れただけで粘着音がして指に吸い付く。これだけで濡れていれば一本くらい入るだろう。

「音、聞こえます?ずいぶん濡れてますよ、お嬢のここ」
「い、言わなくていいから!もう……っ!」

濡れてあまり意味のない下着越しに、少し盛り上がった部分へ刺激を与える。そのまま恥部の柔肉を楽しむ。男とはまるきり違うそこは果肉のようだった。

「ダメ、や、ロビン……っ!」

ロビンが恥部を擦っているだけでも、湊は身をよじったり悲鳴を上げて唇を食いしばったり腰を浮かし始めたりと、他と明らかに反応が違っていた。

「そこはダメ、ダメだってば……んっ、あっ」
「触ってっつったのはお嬢だろうが。てか、お嬢、最近オナニーした?」
「お……っ!してない!ないってば!」

ロビンの問いに、湊が大きな声で否定した。否定したものの、湊の顔に狼狽の色がはっきり浮き上がっている。
したな、これ。まあ少し慣れているなら好都合だ。ロビンは指を一本だけ中に侵入させる。

「ひゃ……」
「痛いかもしんねえが、ちっと耐えてくれよ」

さすがに準備しているとはいえ指一本でもきつい。どうにかスムーズに入るくらいだ。指を動かせば湊の嬌声も大きくなってきた。また唇を噛みそうになっているところを阻止する。

「声、押さえなくていいから」
「ん、んっ……あっ」

キスしてそちらに集中させる。キスしていた方が安心するのか、湊が先ほどよりも積極的に交わってきた。
深く唇を重ねながら、湊が懇願の眼差しをロビンへ向けている。そろそろいろんなものが限界のようだった。それはロビンも同じなのだが。
ロビンが中に慣れて指の速度を上げていると、中が痙攣してきた。湊もシーツをぎゅうっと握る。湊の目はどこか虚ろだ。

「あっ!あ……っ!ろびん、」
「どうだ?」
「……なんか、奥っ、びりびりする……っ」
「じゃ、遠慮なく来たときは言えよ」

その瞬間、湊が大きく体をしならせ、小さく声を漏らした。ロビンの指を締め付けた後、中が少し緩む。上手く達したようだ。
頑張ったな。そう声をかけようとしたところでロビンは気付く。

「気絶してんのか」

恥ずかしさで限界突破したのか、初めての大きな快楽に呑まれ疲れてしまったのか。湊の意識は飛んでいるようだった。仕方ないか。肩をすくめる。

そして、ロビンは自分の股間へ視線をやった。そこは立派にそそり勃っている。湊の体に触れる間は変に意識させないようにと気を遣い、あまり下半身を密着させなかった。そのせいで腰の痛みも下着の濡れ具合もやばい。
湊を運んで部屋まで運ぶにしてもこれはまずい。誰かに見られたら湊もだがロビンも死ぬ。幸い明日も休日なので、湊はこのままロビンの部屋にいてもらうしかない。

ロビンは再び眼下の湊に目を向けた。湊の乱れた姿がそのままだ。整えてやらなければ。まずは汗を拭きとってやろうとしたところで、ふとあることが思い浮かんだ。

――――あれだけ奉仕してこっちは何もなかったんだ。オカズにされるくらい許されるんじゃねえの?

唾液で濡れた唇。汗でしっとりしている肌。軽く揺れる胸。まだぴんと尖った乳首。だらしなく開かれた脚。愛液でぐちゃぐちゃの下着。
唾を呑んだ。やめようとしても湊へ視線を集中させてしまう。童貞かよ、オレ。情けねえ。悲しくなってくるも、欲の波がロビンの理性を襲い続ける。

――――悪い、お嬢。

心の中で湊に真摯に謝りながら、ロビンはゆっくりと自分のものに手をつけた。



はじめて体を触ってもらう話。たまには緑茶目線で。
本番はしていませんが、完全に性器に触れているため鍵をかけさせていただきました。
緑茶が勝手に経験あることにしましたが、実際どうなんでしょうか。一晩だけ寝て相手が起きる前に帰っていそうな気もしますし、デートとかキスとかだけして特に体の付き合いはしていない気もしますし。していたとしてもそんな回数は多くはなさそうですが、慣れてはいそう。
ただ、私が書いたせいで緑茶が余裕ない童貞っぽくなってしまって申し訳ない限りです……。
今更ですが、緑茶とはじめて、というか、夢主がはじめて、ですね。まあ緑茶もはじめてなことがたぶんおそらくこれからあるので、いいです。