×
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
狐と谷裂
「あら、瀬尾梨ちゃん。今日はお好み焼きよ」
「……ありがとうございます。いただきます」

食堂に入ってきた瀬尾梨は一瞬顔を歪めた後、すぐに元の凛とした表情に戻る。キリカからお好み焼きを受け取って遠くの席に座った。
普段なら谷裂へ敵意たっぷりに視線を注いでくるのに珍しい。確かに今日の谷裂は怒鳴らないし、飄々と笑うし、口調もどこか違うしで何だか変だが。

「おおい、そこの姉さんは一緒に食わないのかい?」

極めつけに姉さん。何があっても谷裂が言いそうにない呼称だ。田噛はどこか怯えすら見える顔つきで佐疫の後ろにさらに隠れた。
瀬尾梨は冷ややかな眼差しで谷裂を見た後、舌打ちをすることも不快そうに眉間に皺を寄せるでもなくお好み焼きにソースをかけている。

「無視なんてつれないねえ」

口説こうとしているのかただの絡みなのか。何にせよありえない光景を見て佐疫や田噛だけでなく、抹本や斬島も困惑の色を浮かべる。平腹は気にせずお好み焼きを食いつくそうとしていて、木舌は面白そうに笑った。

それからも色々話しかけていたが雑音にすらなっていないらしく、黙々と上品に食べている。
ついに耐えかねたのか、美しい碧の瞳が谷裂を向いた。嫌悪も侮蔑も嘲弄も、感情のない冷えた眼差しに、何故か佐疫たちもぞくりと恐怖が走る。そしてふっくらとした唇が開く。

「あの人に化けるより、もっと別の方にした方がやりやすいと思いますよ」

淡々とした、けれどひどく圧を感じる声音。一言口にすると瀬尾梨はもうお好み焼きに視線を戻し、素材の味を再び楽しみ始めた。



こんなん書くしかないやろ!!ということで獄都新聞ネタ。ブツ切れになったのでリメイクして番外編に置きたいです。
黒狐が「相も変わらず男前だろ?」と言うことは、黒狐にとっては谷裂は男前といえる顔つきをしているということですよね。美醜は種族それぞれだとは思いますがそういうことですよね?と興奮してしまいました。
狐と同じネタで鏡ネタとかやりたいです。鏡ネタというか、何か・誰かに化け・映された夢主ネタで。
prev * 11/156 * next
+bookmark