二月十四日。バレンタインデー。世界だと男が女へ花などを手渡すことになっている。ただし日本は女がチョコレートを手渡す側だ。

赤羽業の恋人、名無しもチョコレートを使って何か作ろうと奮闘していた。
名無しはお菓子作りが得意だし好きだ。だからこそ何を作ろうか悩んでいた。もう受験の季節になっているだとか、地球が終わりそうになるだとか、それは名無しの頭になかった。

「うーん…何にしよっかな」

思い浮かべるチョコレートを使ったお菓子を紙に並べる。クラスの分も作る気でいたので、あまり大きなものにはできない。

「これにするか」

メニューを決めてベッドから起き上がった。



翌日、結構な量のチョコレート菓子が入った袋を持って家を出る。いつものようにカルマが角の電柱で待っていた。

「おはよ、名無し」

挨拶の後でカルマの右手が伸びる。何かを貰うことを期待した手だ。じろっと手袋をした右手をカルマの顔を交互に睨んだ。

「何？」

「え、くれないの？」

「貰える気満々ってのすごいよね」

「だって名無しはくれるでしょ」

違うの？カルマは首を傾げて言う。#nama1#はもう一度睨み、袋からラッピングしたものを取り出した。

「ん」

「やった。ありがと。何かなー」

カルマが心底嬉しそうに笑うので、名無しは気恥ずかしくなる。そこまで喜んでくれるとは思わなかった。そっぽを向いていたらがさがさ音がする。カルマがそのまま開けようとしていたため慌てて制止する。

「何やってんの！？後で開けてよ！」

「えー。じゃそうする」

あっさりカルマは引き下がり、鞄の中に入れる。それから二人は歩き出した。

教室に着いて机に鞄を置く。すぐにカルマが名無しから受け取ったものを開けた。中身は想像していたチョコレート。形からトリュフに見える。

「うまそー。ね、食っていい？」

「もう？別にいいけどさ…」

許可を貰って一粒口に放る。どんな反応をするか、名無しはカルマを見守る。飲みこんだ後すぐカルマから笑みがこぼれた。

「うん、うまい。抹茶？」

「全部じゃなくて、他はイチゴとかオレンジとかいろいろ」

「へー。凝ってるね」

もぐもぐ。カルマのトリュフを食べる手が止まらない。数分後、全部なくなってしまった。

「名無しの愛情たっぷりでうまかったよ」

「カルマキモイ」

愛情を入れたのは本当だったが、こうも真っ直ぐに言われるときつい。名無しはばっさり切った。特に傷ついた風でもなく、カルマは準備し始めた。
その後無事クラスメートや殺せんせー、イリーナに烏間へ手渡せた。カルマにはどうしたんだと言われたりもしたが無視した。



そして下校途中、唐突にカルマが言った。

「ねえ、何が欲しい？ずっと考えてたけど本人に聞いた方がいいと思って」

「え？」

突然話題が変わったので驚いた。それにお礼なんて考えていなかった。ただチョコレート会社の策略に乗っかり、思いを伝える手段にお菓子を作っただけだ。

特にないけど。そう答える前にふと思った。


「じゃあ未来、とか」


一ヶ月後にはもう卒業している。それまでに殺せんせーが死ぬことが思いつかない。今まで散々やってきて全部失敗に終わった。超常現象が起きない限り。このまま死ぬつもりはない。

名無しの答えを聞いたカルマは目を見開いている。ジョークのつもりだった名無しは否定しようとしたが、次の言葉を聞いて固まった。


「……それってさ、プロポーズなの？」


確かにそうとも取れる。少しして気づいた名無しは顔が熱くなった。

「違うから！全然違うから！！」

「あー、びっくりした。一瞬本気でそう思っちゃったよ」

カルマは驚いた表情を顔に張り付けたまま胸に手を置く。全力で否定した名無しを笑って続ける。


「分かってるって。俺が、絶対殺してみせるよ」


そう言ったカルマは真剣だった。見惚れるくらい。冗談だよ、なんて付け加えられなかった。代わりに笑って頷いた。

「うん」

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今回は一位のカルマ君でした。あんまり恋心関係ない気もしますが。べた甘で終わらなくてすみません。
受験期だとか原作はオール無視です。ごめんなさい。
投票してくださった方々ありがとうございました！短くて申し訳ないです。
バレンタイン爆発しろ！！