×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

こちらのスマイル300円になります


私はレストランとケーキ屋でバイトしている。今日は金曜日、ケーキ屋の日だ。いつもは大体ケーキ作ってるんだけど、今はレジ打ち。皆さん美形揃いなんだからこんな平凡顔をレジに任せないでほしい。珍しく客がいないな、なんて思いながら突っ立っていたときだった。

「よっ、名無し!来てやったぜ!」

何故か露出狂がいた。

「おかえれ」

不測の事態にとっさに失礼なことを言ってしまった。つーか家でもないのにおかえり+帰れはないわ自分。

「おいせっかく来たのに何だよ、それは」

露出狂の名前は東条ウラジ、応用生物学部二年。応用VS.調理戦以来やけに私に絡んでくる。やめろよ!やめろよ…。これ以上変人の知り合いとか増やしたくないよ。

「その前にどうやってここ来たんですか…教えた覚えないんですけど」

バイトをやってるという話はしたが、場所までは教えてない。そんなアホなミスはしない。知ってるのなんて京君にエレ、蜜郎先輩くらいなはずだ。京君はおろか蜜郎先輩とは仲が悪いはず、二人から聞き出したとは思えない。エレはちゃんと面識ないはずだし。

「この間ここの店から出てくるお前を見た」

マジかよ。ここ食専からそれなりに離れてると思うんだけど。いやしかし、京君と一緒のときじゃなくてよかった…私が一人のときってことは、先週か?まあいいや。

「あー…来たならなんか買ってってください」

「俺今あんまり金ねぇんだよ」

「じゃあ来ないでください超絶迷惑です」

「……名無し、金貸してくれ」

「金の恨みは恐ろしいですよ?」

「食べ物じゃねーの!?」

何を言っているのやら。ここの店は良心的だけど、ショートケーキ二つ買うだけで漫画一冊買えるんだぞ。あ、私何でも漫画に値段換算するから。
結局買ってくれるらしく、ウラジさんが並べてあるケーキを品定めしていく。ふと顔を上げて言った。

「お前の作ったのとかねーの?」

「ああ、ありますよ。このミルフィーユとザッハトルテは私がデザインしたやつです」

それがどうかしたんだろうか。頭にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げる。

「よし、じゃあそれ一つずつ」

「ありがとうございます」

ミルフィーユとザッハトルテを取って箱に入れる。あと保冷剤も忘れずに。

「642円になります」

「そ、そんなにすんの?」

「これくらい今時普通です。ってか他の店だともっとしますよ?まさかそれくらいありますよね?」

金なさすぎるだろ。野口さん一枚くらいは常に所持しとこうぜ。ウラジさんは慌てて鞄の中から財布を取り出し野口さんを差し出した。ああ、よかった。なかったら追い出してたわ。

「358円のお返しです。ありがとうございました」

マニュアル通りのセリフを口にし、お辞儀をする。さあこれで帰るんだ。次のお客さんが来る前に!ドアに手をかけた瞬間、ウラジさんが振り返った。

「名無し!」

「……何ですか?」

いかぶしげな私へにかっと笑って一言。


「スマイルひとつ」


「……ここ、ファーストフード店じゃないんですけど」

むしろケーキ屋なんすけど。お前に出すスマイルはねえ!と怒鳴りたいところだけど、一応買ってくれたお客にそれはないだろう。ため息を軽くついて写真用の笑みを向ける。そして笑顔を見せた途端固まったウラジさんに右手を出した。

「スマイル300円です」

「高っ!高いだろ!!」

「高くないです仏頂面の私がスマイルですよスマイル。すげー貴重ですよこれ。自分で言うのもなんですけど」

「た、確かに…」

「流石に冗談ですけど。あと頷くんじゃねーよ」

失礼だなこんにゃろ。眉間に皺を寄せた私にウラジさんが謝る。

「悪かったって。じゃーな」

「はい、ありがとうございました」

……しかし、架菜さん(店長)が今日は早めに帰っていなくてよかった。本当によかった。あの人、やけに京君とか蜜郎先輩につっかかるから…。もう来ないでくれ。

そんな私の願い空しく、次の週。

「名無しお前金曜しかやってねーのかよ。あれから来たのにふざけんな」

「逆に毎日来たウラジさんに驚きなんですけど」

っていうか、これやばいやばい。後ろからドス黒いオーラを感じるんだけど!早く帰ってくれ、ここが殺人現場になる前に!







佐々木様へ日頃の感謝と愛をこめて。大変遅くなり申し訳ございませんでした!!(ジャンピンスライング土下座)
Tmfc番外でイソギンとのことでしたが、本編でまだ出会ってすらいないのでどうしようと悩みました。かなり遅くなった挙句ご希望に沿えなかったらすみません…。
お持ち帰りと苦情と文句は佐々木様のみ受け付けます。
本当にありがとうございました!


Back