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「#オメガバース」のBL小説を読む
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ウラジ先輩は、よくトウカちゃんと一緒にいる……ような気がする。突然開かれた模擬店。そこでウラジ先輩と私、そしてトウカちゃんと行動していた。なので私が不思議に思うのも無理がないわけで。いいんだけど、いいんだけど。うん。

ちなみに二人は制服のままだけど私は浴衣だ。先輩に「祭りつったら浴衣だろ」と言われ、着させられた。それはまぁ分かるんだけど、なんで二人は着ないんだ。
私が着替えたら「いーじゃねーか。似合うぜ、名無し」って言ってくれたから、言及はしないであげた。

「先輩、バナナチョコ買っていいですか?」

「あ?あー、いいぜ。買ってやるよ」

先輩はさっきから食べてばっかりだ。やっぱり男子は胃袋が違うんだろうか。

「え、いや、別にいいですよ。チョコバナナくらい」

「いいから奢らせろって」

無理矢理フランクフルトを飲み込み、先輩はチョコバナナを買いに行った。すぐに欲しいものを手渡される。

「ほらよ」

「あ、ありがとうございます。すみません……」

「いーんだよ、どうせ研究資金だし」

「ちょっ!?」

なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ。口を開ける私に先輩はしれっと言う。

「少しくらい使ったってバレねーって」

他の生徒が聞いたら嘆くんじゃないだろうか。はあ、とため息をつく。そこでトウカちゃんが私の足をぺちぺち叩いてきた。しゃがんで目線を合わせる。

「どうしたの?」

「名無し、ウラジからお金もらってきて。三百円しかない」

普通トウカちゃんの年齢ならそうだろうなあ。私が何か買ってあげようか?と言おうとしたら先にウラジ先輩に言われてしまった。

「おい、聞こえてんぞ。名無しにはやってもお前にはやらねえよ」

「いいじゃないですか、買ってあげるくらい」

「大体星南も研究資金あるだろーが」

「土地買った。月の」

「全額使い込んでんじゃねーよ」

トウカちゃんもトウカちゃんだった。はは、と顔をひきつらせずにはいられない。
先輩が軽くトウカちゃんの頭にチョップする。けどトウカちゃんの目線は遠くを見ていた。それを追うと、黒いフード付きパーカーを着た男子がカタヌキをしてた。カタヌキに興味を持ったのか、そっちに向かってしまう。しかもめっちゃ上手い。そして男子と白熱した戦いを繰り広げていく。

「なんかトウカちゃん楽しそうですね……」

「そうか?ま、何にしろ邪魔者はいなくなったし、どっか行こうぜ」

ぐいっと先輩が腰に手を当てて引き寄せてきた。え、何これ恥ずかしいんですけど。そこから手を絡ませてくる。いわゆる恋人繋ぎってやつだ。

「えっと、あの、ウラジ先輩?」

「お、射的。名無し、射的でなんか当ててやろうか?」

声が裏返る私を気にせず先輩は話している。聞けよ。
っていうか、トウカちゃんを邪魔者だとかそんな表現したのってやっぱり、そういうことでいいのかな。先輩も二人になりたかったって、思っていいのかな。

「あの、トウカちゃんは?」

「別に放っておいたって戻ってこれるだろ。ま、星南がいると傍から見ると親子っぽいだろうなんて、俺は少し楽しかったけどよ、もういいだろ」

な、に。言ってんだ、この人。さっきよりも頭が働かなくなってきた。お、お、親子って……もしかして、その、それだけ?そんな考えでトウカちゃんといたの?わけわかんない、この先輩。

「親子って、な、な、何言ってるんですか!?」

「何動揺してんだよ」

「いや、トウカちゃんとウラジ先輩最近一緒にいるな、くらいしか」

「アホか」

デコぴんされた。地味に痛い。困惑している私に先輩は言う。

「なんで俺がガキのお守りしなきゃいけねーんだっつーの」

確かに先輩は子供とか嫌いそうだもんな……いや、北方先輩ほどじゃないか。あの人の方が苦手そう。


「いつかはしてやってもいいけどな」


あの、それ、お祭りで、しかもこんな人だかりの多いところでするとこじゃないですから。
でも私は何も言えない。代わりに先輩の額目がけて頭突きした。抗議の声が聞こえたけれど、私は何も悪くないはずだ。


今度は場所を変えて言ってください、ウラジ先輩。




久々のメランコリックというかウラジ夢。のはずが、わけわからんことに。ヒロインをトウカちゃんに嫉妬させたかったんです。あと親子っぽいってネタ使いたくて。
また再挑戦してきます。

いつかの話ひとつ


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