波打ち際は水色サイダー | ナノ
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タピオカがいなくなった。いや、よくあることと言えばあるんだが、大抵は俺に一言言ってから出かける。今回は言わないケースで、探しに行かなければならなかった。まったく、俺にはJF1の監視もあるっていうのに、あいつは気楽だな…。

捜索してしばらく、道の真ん中で佇むタピオカを見つけた。タピオカの前には女生徒。とりあえずタピオカの名前を叫んだ。

「タピオカ!」


「山田、君?」


俺を見て首を傾げる女生徒。髪は肩につくかつかないか、顔は普通。あぁ、

「確か君は……苗字名前、か」

苗字名前。宇佐美夏樹の幼馴染で、真田ユキと同じようによく釣りに誘われる、JF1のお気に入り。だから知っているだけだ。別にクラスメートを全員覚えているわけじゃない。

手にはチョコ菓子を持っている。作ったのか買ったのか。この少女の性格からして作るようなタイプではない。きっと買ったのだろう。

「タピオカにやろうとしてたのか?」

「え?あぁ…やっぱアヒルだし、無理だよね」

「いや、この前ビールを飲んでいたから分からん。食うかもしれない」

「ビール!?」

友人と喋る以外は大抵仏頂面の顔が、表情豊かになっている。そんな顔もするのか、と何となく感じた。
そこで視線をせわしなく動かした後、チョコ菓子を持った手を俺へ差し出した。

「あー、よければ、食べ、る?」

「……ガトーショコラ?」

「まずくないよ!うん。おいしいかは、山田君次第だけど」

その言い方からして、作ったのか。意外だ。失礼だが目が点になってしまった。男子とは宇佐美夏樹とJF1以外しか話したことがないのか、気まずそうにしている。……まあ、貰ってやっても、いいか。俺はガトーショコラが入った袋を受け取った。

「ありがとう。食う」

ふむ。あまりよく見えなかったが、なかなかうまそうだ。これはタピオカにやるにはもったいない。

「名前」

「な、何かな、山田君」

苗字名前……名前は急に名前を呼ばれて顔が引きつっている。山田君、というのは何故か変な気分だ。だから言う。

「アキラ。アキラでいい。……行くぞ、タピオカ」

「グワッ」

タピオカ、なんだその目は。ガトーショコラはやらんぞ。ちなみに、帰って食べたガトーショコラは、うまかった。




鮮やかなパステル



初接触、というお話。タイトルは淡いようででも心には残る、そんな出会いだったみたいな意味です。滅茶苦茶や。
もう少しアキラの心情を書く予定でしたが大して変わらないのでいいやと放り投げました。


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