波打ち際は水色サイダー | ナノ
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私のクラスに転校生が来た。しかも三人。同じクラスに三人って、ありえなくね?
まず真っ赤な髪が特徴的な真田ユキ君。テンションが何段もブッ飛んでる電波野郎、ハル。ターバン巻きつけてアヒルを連れたアキラ・アガ……なんだっけ、山田。
真田君以外に「君」をつけていないのはノリだよノリ。なんかつけなくてもいい感じするから。

なんだかよく分からないけれど、幼馴染の宇佐美夏樹は三人が来てから楽しそうだ。いつも仏頂面の釣りオタクが珍しい。
関係ないけど、夏樹は妹のさくらちゃんの前ではデレすぎだと思う。シスコンかお前は。確かにさくらちゃん可愛いけどな!

「夏樹、楽しそうだね」

「……何がだよ」

お母さんが亡くなってしまった宇佐美家で夕食を作るため、私は宇佐美家キッチンに立っている。材料費はもちろん宇佐美家持ち。私、実は料理が得意。料理人になろうかなと思ったりもするけど、そんな程度だ。研究してみたりはするけど。

幼馴染の男の家で料理作ってあげる、なんてシチュエーション、少女漫画かって感じだけど、別にそんな関係じゃない。まあ好きか嫌いかって言ったら好きだ。loveではなく。

海の幸をアベルさん(包丁ね)で刻みながら、夏樹へ言葉を投げかける。

「最近、真田君とハルと釣りしてて、楽しそう」

「……そうだな」

椅子に腰かけて私の作業を見ながら夏樹は肯定する。意外だ。思いっきり否定するかと思ったのに。

「夏樹が楽しそうで、よかった」

「な、んでだよ」

一瞬夏樹の声が裏返る。変なことは特にした覚えも言った覚えもない。しゃっくりが出そうになったとかそんな感じかな。まあいいや。

「だって夏樹、保さんとぎくしゃくしててイライラしてたからさ。さくらちゃんとじゃなきゃ楽しそうじゃないんだもん」

前までは私が夕食を作ってやってるっていうのに、八つ当たり気味に礼を言ってきたりピリピリした空気を溶かさなかったりと、作ってやんねーぞボケってこっちも苛立たせるくらいだった。

「名前といるときも、楽しくないわけじゃ、ねーよ」

「え?何か言った?」

夏樹が何か呟いた気がするけど、それは水の沸騰した音に紛れて聞こえなかった。ああ、火止めなきゃ。

「何でもない」

「そう?あ、パスタできたから、置いておくね」

「悪いな、いつも」

「いいよ、別に」

久しぶりに夏樹の感謝の言葉も聞けたし。なんて言わないで心にしまっておく。エプロンを脱いで畳み、玄関へ向かう。夏樹が私を見送りに後をついていく。

「じゃあね。さくらちゃんと保さんによろしく」

「ああ。さくら、名前のこと好きだから、喜ぶ」

「マジか!私も好きだって言っておいて」

「お前気持ち悪いな」

「うるさい」

「……またな」

ふっと口元を緩め笑った夏樹を久しぶりに見て、何だか嬉しくなった。




幼馴染との日常




夏樹が好きです。ボサボサ髪に眼鏡、なんだかんだ優しくてシスコン、いいと思います。好きです。大事なことなので二回言いました。
夏樹は夏樹でヒロインの事が好きです。loveかlikeかは、微妙なラインですが。
お隣さん。夕食は作るけど一緒には食べない。さくらちゃんとは仲良し。


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