波打ち際は水色サイダー | ナノ
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幼女の描いた絵で騙されるって、いいのかそれで。とか思いつつ江ノ電に乗り込むことに成功。無事江の島駅に着いた。

「くそっ。何してんだよあいつ」

携帯のディスプレイを睨みつけながら、夏樹が苦々しく吐き捨てた。

「あいつ、まさか逃げたのか…」

「そんなわけないじゃん。ユキが一番ハルと一緒にいたんだよ。来ないわけないでしょ」

そんな夏樹に私は少し怒りを含んで言った。同調するように井上さんも夏樹の肩を叩く。

「ユキなら来るさ。あいつは海の男だぜ」

皆も同じ気持ちなのか、こくりと頷く。私と井上さんの言葉に、夏樹は微笑んだ。

「そうだよな。じゃあ俺はここでユキを待つ」

「それで、私たちはこっからどうやって江の島に入るの?」

確かに。DUCKが警備しているはずだし、どうするんだろう。そのとき、黄色い車が急に現れ、アキラが顔を出した。

「強行突破しかない」

そしてアキラの車に乗り、警備を振り切って江の島へ。スピード速すぎて意識がやばかったのは内緒。後で全部終わったら文句言おう。
アキラとタピオカはルアーを取りに行き、保さんは水や食料の調達、井上さんは船の準備、私含め他は商店街のシャッターを閉める。

終了してから井上さん以外展望台へ向かい、えり香と笑いあう。

「これで一安心ね」

「うん。後はユキたちが来るのを待つだけ」

ここでやることは一旦終わった。大丈夫、ユキはきっと来る。夏樹、ハルと一緒に。根拠はないけど、私はそう強く信じているから。


「おっ、主役登場ぉー!」

空が灰色に染まりきった頃、三人がやってきた。

「何で?僕、悪いことしたのに」

心底不思議そうに聞くハルへ、海咲さんが穏やかに言う。

「ハルが悪い子なわけないでしょ。皆会いたかったのよ、ハルに」

「そうだよ。ハルはそんなことするわけないって信じてたから」

海咲さんのセリフに私も続ける。そこでいつもの笑顔に戻ったハル。ああ、そうだ。私はハルに近づいて、ぺちりと頭を叩いた。

「な、何!?」

「一人でバカなことした罰!もうしないこと!」

言いたいことなんてたくさんあるけれどそんな暇はない。さっきので十分私の気持ちは伝わったろう。その証拠にハルが大きく頷いた。

「……うん!」

「はい、水」

えり香から水を受け取り、頭から水を被った。

「あぁー生き返ったー!」

うん、いつものハルだ。再び確認すると、自然に笑みがこぼれた。でもそれはすぐに爆音によって崩された。

――――え?

耳を疑った。でもそれは目の前に広がる赤というよりも黒い炎が、これは現実だと嫌でも認識させる。

「歩ちゃん?歩ちゃん!歩ちゃん!」

海咲さんが叫んでる。でもきっと、何も返ってきてない。アキラは<あいつ>がDUCKの軍艦を操って撃ったに違いない、そう言った。

大丈夫、大丈夫。井上さんだもん。きっと歯を見せて笑って、私の頭撫でてくれる。車に乗りながら私はそれだけを思った。

「歩ちゃん!」「船長!」「井上さん!」

声を張って井上さんを探す。炎も強風で広がっていく。不安がぼとりと心に落ちたそのとき、店長が珍しく声を荒げている。そこには煤で黒くなった井上さんの姿があった。

「海咲さん?」

「無事だったのね!」

目を覚ました井上さんは海咲さんの腕に抱かれて完全に頬が緩み切っている。いつもなら微笑ましくなるんだけど、今はそんな状況じゃない。
井上さんがユキへタックルを手渡し、立ち上がるけれどすぐに転んでしまった。折れてるかもしれない、とアキラが確認する。

「俺がいなきゃ船は動かねえ!」

「船なら俺が動かします」

<あいつ>を釣るのは四人に任せて、皆思い思いの言葉を、口にしていく。

―――あ、私だけ、まだ言ってない。

「皆!」

私は青春丸へ走っていく四人を引き留めた。

「帰ってこなきゃ許さないから!泣いてやるから!もう何にも作ってやんないから!だから、だから」

ああ、涙があふれそう。私こんな涙腺緩かったっけ?かすれそうになる声を悟られないように唾を飲み込んだ。泣いて送っちゃダメだ。一瞬俯いた顔をすぐあげて笑った。


「絶対、帰ってきて」


今私は笑えてるだろうか。分からない。でも、

「当然だろ。でっかいの、釣ってくる」

「行ってくるよ、名前」

「名前、待っててっ!」

「帰ってこなきゃ後が怖いしな」

夏樹、ユキ、ハル、アキラは微笑んでくれた。さっきまでもし…なんて恐ろしい考えが頭を支配していたけど、それだけで安心できた。慌てて目を拭って、私は言った。

「夏樹、ユキ、ハル、アキラ、行ってらっしゃい!」

「「「「行ってきます!」」」」

返してくれた四人の顔は、これから戦場に行くとは思えないくらい眩しかった。



一旦体育館まで戻り、また避難バスへ乗った。被害は広がっているらしい。ワンセグで四人の状況を見る。まだ大丈夫みたい。ほっと一息つく間に、踊る屍と化した人たちが周りを取り囲んでいる。え、ちょ、怖っ!

「運転手さん、降ります!皆、逃げるわよ!」

そんな状況を見て海咲さんが叫び、井上さんに肩を貸してバスから抜けた。私もその後に続く。


――――夏樹、ハル、ユキ、アキラ。帰ってきてね。


海咲さんたちと走りながら、私はただそれだけを祈り続けた。






消えない光と約束と




もっと真面目に書けたらよかったんですけどね!すいませんすっとばしすぎてます!名前変換もろくにない絡みもない話しか進まないこれはひどい。
その代わり次はちゃんと終わります。終わります!予告しておきますと長いです。多分。色々ブチ込むので…。
あと一話でラストです。ここまでお付き合いくださった皆様、よろしければ最後まで見てくだされば幸いです。


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