波打ち際は水色サイダー | ナノ
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「#年下攻め」のBL小説を読む
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「お兄ちゃん、何それ?」

名前から貰ったケーキとカードを持って家に帰ると、眠たそうな顔でさくらが尋ねた。

「名前に貰った」

テーブルにケーキを置いて中を開く。チョコレートケーキだ。いつもデザインに凝る名前にしてはシンプル。時計を思わせるそれは、素人目から見ても綺麗だった。

「おいしそー。いいなぁ、お兄ちゃん」

「明日食おうか」

「うん!」

笑顔で頷きながらも目はほぼ閉じられていて、すぐに寝てしまいそうだった。

「さくら、疲れたろ。寝な」

「うん……」

おぼつかない足取りで上にあがっていく。大丈夫だろうか。そこで親父が入れ替わりに入ってくる。

「おっ名前ちゃんから貰ったのか」

「まぁ…」


「よかったな、お前名前ちゃん好きだもんな!」


「はっ!?」

っやべ、突然の発言に名前のケーキ崩しそうになった…。否定的な声を出した俺へ、不思議そうにまばたきしている。

「違うのか?」

違わねえけど。そうやって肯定するのは気恥ずかしい。口を開けば墓穴を掘りそうだったから、ただ黙った。それを肯定と受け取ったのかからからと笑う。


「名前ちゃんいい子だからな!早くしないと、誰かに取られるぞー」


誰かに取られる。その言葉に一瞬動きが止まった。

確かにあいつは人を惹きつける。しかも変な奴ばっか。アキラは絶対好きだ。態度で分かる。ハル、はよく分かんねえけど、多分そういう意味じゃない。ユキ……はどうだろう。
そういう意味じゃなくたって名前を好きな奴はいっぱいいる。昔はあんなんじゃなかった気がするのに。かくいう俺も最近気付いたクチだけど。ずっと一緒にいたのに、おかしな話だ。

「……分かってるよ」

気付かれないようにそっと呟いた。


部屋に戻って椅子に腰かける。ケーキと一緒に貰ったカードを見た。一体何が書いてあるんだろう。名前のことだから、そんな変なことは書いてないはずだ。
カッターで封を切ると、釣りをしている少年が目に入る。切り絵だ。多分俺だと思う。相変わらずうまいな、こういうの。

で、何が書いてある、………。

何書いてんだこいつ!
照れと羞恥と嬉しさで体が熱くなる。いつも俺のことを幼馴染にしか認識していないとばかり考えていた名前の言葉が、じんわりと心に沁み込んでいく。

少しは脈あるよな。なんて今更ながらに思った。





――――夏樹へ。

長ったらしく書くのもだらだらしそうなので簡潔に言う。

夏樹がいなかったら今頃もっと引きこもり性格だった。夏樹が引っ張ってきてくれたおかげだと思う。

私、夏樹の笑顔が好きだよ。ちょっと前まで減ってきたように思ってたけど、また夏樹らしくなってよかった。むしろ今の方が夏樹って感じする。
私の方がずっといたのに、ユキやハル、アキラたちが引き出してくれた。なんか幼馴染失格だね。

こんな私とずっと一緒にいてくれてありがとう。
夏樹が彼女できても結婚しても、これからもいてくれると嬉しい、な。


最後に、生まれてきてくれてありがとう。


P.S.
このことについて聞いたり言ったりしたら殴る。






やさしいことばで、




ずっと入れたかった話です。ヒロインの夏樹の立ち位置として、話に関係あるので。まあずっと書いてきましたが…最終的な立ち位置というか何と言うか。
一応他三人もどんな立ち位置かというか、気持ちを吐露する場面は今後の本編であります。ぶっちゃけまだ構想練ってないんですが。ラストしか決まってない。
生まれてきてくれてありがとうって普通なかなか言えませんよね。彼女が彼氏がいても結婚してもずっと一緒に、なんてのも。恋愛的な「好き」じゃなくても、そんな人ができたら素敵ですよね。


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