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はた迷惑な微罪



定期テスト。どの学校でも逃れることはできない悪魔の試練。それは椚ヶ丘中学校でも同じこと。今日からE組では殺せんせーによる強化特訓が始まっていた。

「ここはこの公式を使えば一発ですよ」

湊とて例外ではない。大の苦手である数学に取り組んでいた。マンツーマンの授業はすぐ質問できて分かりやすい。数学?何それ食べれるの?と常に答える湊自身恐ろしいほどシャーペンが進む。

「黒瀬さん、もう少し進んでみましょうか」

「マジですか」

めんどくさっ。つい口にしそうになったが慌てて引っ込める。新たに問題を出され、頭を悩ませていると、殺せんせーと湊の間にナイフが通った。突然の出来事に湊は目を見開いたまま硬直した。
犯人がすぐ絞り出せた殺せんせーは彼へ再び注意する。

「こらカルマ君、暗殺しないでくださいって言ったばかりでしょう!」

「ごめーん、殺せんせーと湊の距離が近かったからさあ」

可愛らしく舌を出しているが、目が笑っていない。そのまま片手でナイフを回している。

「君たちと取っている距離となんら変わりありません!」

「そお?」

「先生、こいつ放って早くやりましょう」

「あ、はい、すみません黒瀬さん」

「ひっどー。あ、湊、今日終わったらデートしよ」

「死ね」

デートは恋人同士がするものである。湊はそう定義している。カルマと恋人になった覚えなどない。乙女ちくね、と拷問大好き男に言われてもおかしくないが、本人は本気で思っている。

「じゃあ俺が10位以内に入ったらデートしてよ」

殺せんせーの小言を無視しつつ湊へ話しかけるカルマ。対する湊はあくまで冷たく言い放つ。

「5位以内」

いくらカルマが頭がいいからといって、偏差値66のこの学校では厳しいだろう。そう踏んでの考えだった。しかし湊の思惑とは裏腹に、弧を描いて明るく言った。

「分かった。5位以内ね。じゃ、俺頑張る。約束だよ湊」

「はいはい」

そこで湊は軽く約束したのを後悔することになる。


「なん、だと…?」


定期テストが終わりしばらくして、E組生徒に渡された薄っぺらい紙に残酷な結果が書いてあった。合計点数387点、186人中60位。数字は全てではないが、絶対的な価値を持つ。しかし今の湊にとってそれは問題ではなかった。

重く沈んだ空気の中、無慈悲に湊の目に突きつけられる、五つの紙。多くの○といくつかの×がついたそれは、紛れもなく現実。

「ほら、俺4位だよ。だからデートしよ」

いくら殺せんせーが範囲外を教えていたとはいえ、この差は一体何なのだろうか。

「言ったよね、5位以内になったらデートしてくれるって。皆も聞いてたっしょ?」

「ああ、聞こうとせんでいい!分かった、分かったから!もう!」

本当に成し遂げられると思わなかった。烏間と理事長による会話を聞いた後ならなおさらのことだ。
仕方ない、もう公言してしまったことだ、守らなければならない。湊はにやにや意地悪く笑うカルマを睨みつける。が、効果はないようだった。むしろカルマを煽るだけの材料になった。

「顔真っ赤だね、湊。可愛いよ」

「うるさい黙れ!!」

E組内では一気に暗かった雰囲気が二人によって変わり、いい加減にしろと言わんばかりの目線を送る。そんな視線を注がれることが湊にとって我慢ならないことだった。こんな注目のされ方はない。恥ずかしくてたまらなかった。

「じゃ、いつにしよっか?」

とりあえず、空気の読めない男をはたくことに決めた。



何度も言いますが『殺せんせーとE組』の話ではありません。『ヒロインとカルマの話』です。暗殺とか学校に焦点を置きません。なので殺せんせーとのやりとりとか原作に重要なことはカットしてます。
次はデートします。
タイトルはサティの曲。ヴェクサシオンとかの人です。