カルマは特に努力する必要はないと思っていた。E組全員、そして湊でさえ目の色を変え勉強していたがカルマは違った。いつものように過ごしていた。
今回の期末テスト、カルマはトップを取れると確信していた。手応えはあったはずだった。はず、だったのだが。
渡された紙に書かれていたのは、数学85点学年10位、総合13位という散々なものだった。他の生徒と比べれば十分優秀だが、カルマの予想と全く違った結果だった。
こんなはずじゃなかった。そう思いながら、教室から逃げたカルマは返却されたテストを握りつぶす。
「さすがにA組は強い」
いつの間にか殺せんせーがそばにいた。そして耳元でカルマの心中をはっきりと口にする。にやりと笑って。
「恥ずかしいですね〜。『余裕で勝つカルマカッコいい』とか黒瀬さんに思ってほしかったんでしょ」
カルマの顔が一気に赤くなる。事実その通りだったからだ。罵倒しながらもきっと湊は尊敬の目で見てくれるのではないか。そう期待していた。浅野にだって余裕で勝てる――――そうも考えていた。
だが現実は違った。
「わかりましたか?」
殺せんせーは続ける。
「殺るべき時に殺るべき事を殺れない者は…暗殺教室では存在感を無くして行く。刃を研ぐのを怠った君は暗殺者じゃない 錆びた刃を自慢気に掲げたただのガキです」
「…チッ」
もう何も聞きたくないカルマは、頭を押さえつける触手を振り払って教室に戻ることにした。気楽なE組に入りづらかったが、どうにかドアを開けて席に座る。左隣に腰かける湊が少し心配そうにカルマの様子を窺っていた。
気にかけてくれたことに嬉しさを感じる。しかし、今のカルマは普段のようにからかう余裕はなかった。
放課後も湊と一緒にいれる気分ではなかった。謝罪すると、カルマの気持ちを察しているように湊は頷いた。
「気をつけてね」
カルマが教室を出ていきこうとしたとき、湊は言った。言葉が心に優しく溶け込む。感動するのと同時に、負けた己が惨めに余計思えてきた。
「……ありがと。湊もね」
上手く笑えたか、カルマには分からなかった。
どこまでも馬鹿な男
短いですが。書かないわけにはいかんと思いまして。書くにあたって一、二行本編に足しました。流石にヒロインが最低だったので…。暇な方は探してみてください。
タイトルはホルストより。そのままです。