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「#幼馴染」のBL小説を読む
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月に憑かれたピエロ



「湊、声かけられてもついてかないでよ」

「私は幼稚園児かよ」

店の奥にある階段を使わないと、上へは上がれない。女子にはチェックが甘いとのことで、女子全員と、

「似合ってるね、渚君」

「や、やめてよ黒瀬さん……」

女装した渚で下見に行くことになった。
正直湊としては女である自分よりも可愛くて腹立たしい。男の娘なんて二次元だけで十分だと悪態をついた。

一人の少年に絡まれるも渚に任せる。他の男に絡まれても矢田が回避する。渚を口説いていた哀れな少年が屈強な男に襲われそうになっても岡野が気絶させてしまう。ここの女子は強いなあと、自らもE組の一員であるにも関わらず、湊は顔を引きつらせた。


途中で男たちから銃を奪う。そのまま全員が歩を進める。


コンサートホールに着いた。足跡が聴こえ、慌てて椅子に隠れる。すぐに舞台の真ん中には銃を咥えた怪しい男がやってきた。

「…………十四、いや十五匹か?」

気配ですぐにE組を察知する。威嚇のために引き金を引いた。

「おまえら人殺しの準備なんてしてねーだろ!!おとなしく降伏してボスに頭下げとけや!!」

そのとき、隣にいた速水が一発撃った。男の持つ銃を狙ったのだ。
男は笑った。機材を使い、音量を上げる。

「意外と美味ェ仕事じゃねぇか!!」

速水が隠れる席へ男が撃った。当たりそうになった湊は悲鳴をあげそうになる。軍人上がりだという男へ殺せんせーの声が響く。

「先生が敵を見ながら指揮するので…ここぞという時まで待つんです!!」

「テメー何かぶりつきで見てやがんだ」

男の眼前に殺せんせーが移動していた。男が弾を放つも、無敵形態に意味はない。そのまま殺せんせーは名前を使い、出席番号を使い、果てには日々の行動で指揮を取り始めた。

「この間ポ○○ンセンターに行くもクルミルグッズがなくて沈んでた人!右に七!!」

「殺せんせー後でプール裏集合」

何で知ってるんだ。湊は叫びたい気持ちでいっぱいだったが、どうにか抑え込み、指示に従う。しかし怒りを孕んだ声でぼそり呟いた。

途中で千葉に見立てた人形を作る菅谷に会った。

「菅谷君よくやるね……」

「そう思うなら黒瀬、手伝ってくれよ」

「私そういうの苦手だから」

菅谷の要求をばっさり切る。湊は裁縫が絡んでくると何もできないのだ。
しばらく移動を繰り返しているうち、殺せんせーが言った。

「出席番号十二番!!立って狙撃!!」

菅谷がいるあたりに男が狙いを定めた。だがそこは違う。別の場所から千葉が照明の金具を撃ち抜いた。落ちてきた照明が男へ直撃する。まだ意識のある男から速水が武器を奪った。

安心してハイタッチし合うも、休んではいられない。まだ、上で元凶が待っている。


幾多の試練を乗り越えて、黒幕の部屋まで辿りついた。すぐ近くにろくでもない男がいる。そう考えただけで足がすくむ。湊は、春までどこにでもいる中学生だった。今では超生物を殺すための訓練を受け、裏の世界まで覗いている。どこのフィクションなのだ。正直逃げ出したかった。皆を助けたい。でも自分だって大事だ。それでも、行かなくてはいけない。

「大丈夫だって」

音を立てて唾を飲み込む湊へ、カルマが軽く肩を叩く。いつものように笑って。

「すぐ、帰れるよ」

「……うん」

心がすっと落ち着いてきた。深呼吸して、音もなく歩きだす。パソコンの前で一人の男が座っている。烏間の合図で襲いかかろうとした瞬間、男が言った。

「かゆい」

聞き覚えがある、声だった。皆の動きが止まる。

「…どういうつもりだ。鷹岡ァ!!」

鷹岡。数ヶ月前に、E組を暴力で縛りつけようとした男。しかし以前と比べ、かなり変わっていた。顔に大量の傷をつけ、視点はどこも合っていないように見える。べろり、舌舐めずりをして、鷹岡は言う。狂気に塗れた笑み貼り付けて。

「仕方ない。夏休みの補習をしてやろう」

それから屋上へ移動する。何を考えているか読めない鷹岡だが、従わないと何をするか分からない。大人しく後ろに続く。
その間に鷹岡はあの後のことを喋る。同期からは舐められる。渚から受けたナイフのことを忘れられないと。

「へー。つまり渚君はあんたの恨み晴らすために呼ばれたわけ。その体格差で勝って本気で嬉しいわけ?俺ならもーちょっと楽しませてやれるけど?」

「カルマ」

渚の心配をしているのだろうが、湊には逆に不安だった。カルマが煽って鷹岡が逆上するとも限らない。

「言っとくけどな、あの時テメーが勝ってよーが負けてよーが、俺等テメーの事大ッ嫌いだからよ」

皆の気持ちを寺坂が代弁するも、鷹岡が叫ぶ。

「ジャリ共の意見なんて聞いてねェ!!俺の指先でジャリが半分減るって事忘れんな!!」

鷹岡の要求を飲み、渚はヘリポートまで向かう。その後土下座しろと命令も飲む。傍から見ればただの苛めだ。
しかし。要求を飲んだところで、鷹岡は治療薬を爆発させた。ビンは粉々になって散っていく。息を飲む。湊も目を見開いたまま、何も言えない。
絶望を表情にした渚を、皆を見て、下衆の塊は笑った。

「あはははははははは!!そう!!その顔が見たかった!!」

息を荒くして、渚はナイフを持った。

「殺…してやる…」

明確な殺意を込めて渚が言う。そんな正気を失った渚だったが、寺坂の言葉で元に戻る。

「…やれ渚。死なねぇ範囲でブッ殺せ」

試合は始まるが、それでも勝負になるわけがない。体格、技術、経験、全て負けているのだから当たり前の話だ。それでも渚は笑っている。ぞっとするほど綺麗で、恐ろしく。

ナイフを手放す。ぱん。手を鳴らして隙をつく。相撲の猫だましだ。そんな単純なものではあったが、効果は十分で。一瞬の隙をついて電撃を浴びせる。渚はそのまま首元にスタンガンを当て、

「鷹岡先生。ありがとうございました」

あの時と同じように笑顔を浮かべたまま、礼を述べた。

その後、殺し屋三人がやってくるも、彼らに敵意はなかった。元々ウィルスも食中毒菌を改造しただけのものだと、毒使いの男は言った。安心した皆は、烏間が呼んだヘリへ乗り、ホテルへ戻った。




そして二日後。

「はぁ……」

沖縄に来たのに全く楽しめた気分にならなかった。どっと疲れてしまった。疲れて一日中眠ってしまい、潰れてしまったのだ。

「大変だね、大人も」

ため息をつく湊へ、カルマが呟く。遠くで、烏間が不眠不休で部下へ指示を出しているのが見えた。殺せんせーが元に戻った時のために固めているのだ。

「あんな大人になれるのかな」

「なるしかないでしょ」

「カルマも、狙われるくらい大物になるといいね」

カルマは勝手になっているような気がする。そう思い軽く笑う湊にカルマは言う。

「なるといいね、じゃなくて、なるから。湊も、隣で見ててよ」

いつかの告白と同じよう目。本気でそう思っているのだと分かった。この関係が十年も続くなんて湊には全く想像がつかないが、カルマは思っているのだろう。嬉しくて湊ははにかんだ。

「……それ、私も狙われるパターンじゃん」

言った途端、爆発音が轟く。カルマが何か言ったような気がしたが、湊は何となく分かっていた。



めちゃくちゃつまらなくて大変申し訳ないです。私が一番つまらないって分かってます。ヒロイン意味ないですしね。鷹岡編の三話削るかも分かりません。次こそ夢っぽく砂糖増えます。書きたいところですので!
タイトルはシェーンベルクより。鷹岡のことですね。