荒神ロウガという少年のことを心の底から好きだ。人をこんなにも好きだと、愛おしいと思うのは初めてで、体が熱くて仕方ない。今までどこか寒くかったというのに。バディがいてもずっと独りきりでいる気がしたからかもしれない。
だから、湊は彼に問いただそうと決意した。
「あいつ、どこにいるんだろう……」
また臥炎タワーにいるのか、移動して別の場所にいるのか。牙王たちへ自分も調べてみると大口を叩いてみたものの、そもそも人脈などない湊に情報が集まるわけもない。湊の目的は、ロウガを見つけ出し湊の疑問に答えてもらうことである。ドラゴンドライについては聞き出せたら牙王たちに伝えよう、くらいのついでさだ。
「ひとまず臥炎タワーを中心に歩いてみたらどうですか? ここで考えても仕方ないでしょう」
リビングで思案していると、アガレスが微笑みながら進言する。
いつも待ってばかりの湊は、閉じこもることばかりを選んでいた。考え込んで機会を逃すより実際に動いた方がチャンスも掴める。以前よりほんの少しだけだが、湊は積極的になっていた。何もせずに大事なものがなくなるよりも、何かして大事なものが取り戻せるなら後者を選ぶ。湊はその提案に頷く。
「うん。そうしてみる」
「何かあったら心配ですから、私もついていきます」
アガレスは有無を言わさぬ笑顔で言う。暗い顔で帰って来たことを心配しているらしい。過保護だなあと苦笑する。
しかし、アガレスはマジックワールドだとかなり冷酷で有名らしい。どこでそんな情報を仕入れてきたのか、カルラが湊に語っていた。悪魔には似つかわしくないが、冷酷で残酷なアガレスが湊には優しいのだと思うと嬉しくなってくる。
それに、もしロウガに会えたら試してみたいことがあった。その計画にはアガレスかカルラの協力が不可欠だ。
「ありがとう。じゃあ、行こう」
湊の目は晴れやかだ。アガレスもまた爽やかに笑ってみせた。
まずは臥炎タワーに赴く。以前は人目が少なかったためかすぐにウルフが現れたが、今日はやってくる気配はない。警備員が厳つい表情で湊たちを睨みつけてくるだけだった。
次に相棒学園のファイティングステージ。当然どこにもいない。
今度はホビーショップに向かう途中だった。
「湊、あれ」
今日は見つからないだろうか。湊が少し失意に陥っていると、アガレスが耳元で囁く。湊は叫ぶのをこらえて息を呑んだ。
時折大きな子供の笑い声が聞こえる住宅街。仮面の少年がバディのケルベロスを連れ、コアガジェットの槍を手に歩いていた。平和な住宅街にはあまりにも不釣り合いすぎて違和感を覚える。あの夜からウルフに変化は見られない。顔つきは傲岸不遜のようでいて、どこか諦めを含んだ悲しい横顔のままだった。
――――ならば去れ。
そう言ったウルフの突き放す目つきを思い出し、湊の胸がまた痛くなる。また言われてしまうと考えたら涙が出てしまいそうになった。初めて会った頃よりも刃のように鋭く、氷柱のように冷やかな眼差し。人に拒絶されることの恐怖がこみ上げて足がうまく動かない。
後ろにいるアガレスを横目で見た。貴女の好きなように。黄金の瞳がそう告げている。
声をかけようとすると音にならない。体は震え、前に行くことをまた拒んでいる。
――――けれど。ウルフに、荒神ロウガに、聞きたいことが、伝えたいことがあるのだ。
湊は拳を握って一歩踏み出した。
「ねえ」
振り絞った声は掠れていた。それでもウルフは振り返った。
「……何の用だ」
あのときと変わらない威嚇するような声音。湊はたじろぐのを耐える。そしてそれに負けぬようにゆっくり、しかしはっきりと言葉を紡ぐ。
「お願いが、あるの」
「俺には急ぎの用がある」
一方的に打ち切られ、ウルフは背を向けて歩く。それでも湊は続けた。
「私とファイトして」
「何?」
ロウガとバディファイトをしたのは初めて出会ったときにした一度きり。もともと湊はファイトした回数が少ないとはいえ、初めて負けたファイトだった。バディがいるが湊は特別バディファイトが好きなわけでもない。ただ、バディファイトが好きな彼ならきっと反応すると思っての誘いだった。そのためにアガレスについてきてもらったのだ。思惑通りウルフの足が止まり、こちらを窺うように見つめてきた。
「あんたが勝ったら、もうあんたの邪魔はしない。でも、私が勝ったら……もう、臥炎さんのことに、協力しないで」
悲しみを帯びた声は小さく消えていく。震えながらも固く決意した瞳を見据え、ウルフは問う。
「お前が俺に勝てると思うのか?」
「……馬鹿にしないで。私だって以前の私じゃない!」
不安と恐怖をかき消すように叫んだ。ウルフの青い目が見開き、そして笑ったような気がした。
絶対に勝てるとは思っていなかった。むしろ負ける確率が高いのは分かっていた。だが、湊もバディファイトについて改めてかなり勉強したし、デッキだって考え抜いて新しく組んだ。その努力はウルフのライフを削っていき、ライフをゼロに近くなるまで追い込む。
「やっぱり、あんたは強いね」
――――しかし。結果的に湊のライフが先にゼロになってしまった。負けた湊は力なく笑う。
これでもうウルフに話しかけることはできないし、邪魔をすることもできない。女に二言はない。約束を破ってしまったらもっとみっともないだけだ。
今にも顔をくしゃくしゃにして泣いてしまいそうな湊へ、ウルフは静かに呟いた。
「……お前も、強くなったな」
あくまでひとりごとのような囁き。しかし湊にはしっかりと聞き取れた。先ほどまでの刺々しい口調ではない。穏やかさと優しさを含んだ声。久々にそんな声を耳にして、はっと顔を上げた。無表情の中のあたたかさはすぐに仮面の下へとしまわれる。
「……最後にひとつだけ、教えて」
沈黙の中、湊はずっと胸にしまっていた疑問をウルフに、ロウガにぶつける。
「私って、あんたの何?」
自信なさげで掠れた声が唇からこぼれた。
これで答えがなかったら、どうしようもなくなる。美味しいと言ってもらえるように料理を振る舞って、誰にも言えないことも話して、生まれて初めて家族愛でもない好きを言われて、キスだってされて、それで何の返事もなかったら。湊の思いの行き場がなくなってしまう。
ロウガのことを考えれば考えるほど胸の奥がひりひり痛むし、今まであんなに必死で耐えてきた涙も簡単に流せる。自分以外の誰かで頭がいっぱいになるのは初めてだった。流行りの恋愛小説やドラマのあらすじやストーリーを見ても、あんな風に誰かと一緒にいたいと感じることは来ないと思っていたのに。自分には無縁なのだと、思っていたのに。
ウルフは口を閉ざしたまま佇んでいる。ケルベロスとアガレスも同様だ。
ウルフは答えを探しているのか、答えはあるが言うのを拒否しているのか。湊は恐怖で口の中が乾き、胸が押しつぶされてしまいそうだった。
臥炎カップでロウガが斬夜と戦った夜。あの夜もこんな風に短い時間がひどく長く感じていた。あの沈黙とは違う。まどろんでしまいそうな心地よい感覚ではなく、息ができなくなりそうなほど苦しい。
そして、ウルフはようやく答えを口にする。
「――――お前は、俺の大事な女だ」
向けられている湊の体が、胸が熱くなるほど真剣な目だった。初めて好きだと伝えてくれた日のように。そこに迷いや苦悩はどこにもない。
キョウヤに協力し、友だと信じる彼から与えられた荒神ロウガという名を捨て、仮面をつけた。それでもなお湊を大事な女だと告げた。それだけで、湊は十分だった。喜びからくる涙を抑えるのに必死になる。
「……そっか……」
良かった。震えていた唇から安堵の声が漏れる。ひとりぼっちの黒瀬湊という少女を大事だと言ってくれた。自分ばかりが好きではないのだ。一方通行の思いではない。それを知って少し体があたたかくなる。
気恥ずかしくなったのか、急ぎの用があったからなのか、ウルフが背を向けて去ろうとする。
余韻に浸り、そのまま見送ってしまいそうになって湊は我に返る。広がる距離を走って縮め、服を引っ張った。
「おい、何だ。もう邪魔はしないと言ったろう」
「ごめん。あれで最後って言ったけど、もうひとつだけ」
顔をしかめたウルフに湊はにっこりと笑った。その笑顔は見た者の背筋に寒気が走るほどどこか恐ろしいものを感じる。
「歯ァ、食いしばって」
そして乾いた音が辺りに響いた。
頬を叩かれたウルフは呆然としている。ケルベロスも、あのアガレスでさえ目を見開いていた。まさか「大事な女だ」と告白した女にぶたれるなんて思ってもないだろう。
湊はその反応に満足そうに息を吐いてから、凍りついたように動かないウルフへ目を細めた。先ほどとは真逆の、優しく包み込むような微笑み。そんな湊の微笑をウルフはじっと見つめている。
「さっきの言葉、すごくすごく、嬉しかった。でも……私は、苛立つくらい強気なあんたの方が、好きだったな」
湊に自信はない。あったとしても料理だけで、後はいくら時間をかけようが自信が湧き出ることはなかった。自分はダメなのだと、平々凡々なのだと、自分でバツをつけていた。だから、勝利を渇望し自分の強さに絶対的な誇りを持つロウガが眩しかったのだ。いつも日陰にいて遠く離れた場所でいじけていた湊とは違って、己の道を突き進んでいたから。あまりにも態度が大きすぎるので怒りの方が先行してしまったけれど。雨の日はそんなロウガが胸を打つほど悲しく寂しい目をして、どきどきしてしまった。
それに比べ、ウルフは覇気が足りない。自尊心が強く、デンジャーワールドのファイターとしての矜持を持っていたロウガの方が、ずっと少年らしいと思う。
湊の言葉を聞いたウルフの瞳は揺れている。
「じゃあね」
ウルフの返事を聞くこともせず、湊は立ち去る。もう振り向くことはなかった。まっすぐ歩く少女は、晴れやかで清々しい顔をしていた。
教会へ帰ろうとしている湊へアガレスが言った。
「いいんですか。もっと強引にいかなくて」
「うん。いいの。聞きたかったこと聞けたし、言いたかったことも言えたし。あとはロウガが考えてくれれば。まあ、それでもダメだったら……またそのとき行動するよ」
きっと湊ではあれ以上言ったところで連れ戻せない。ロウガに影響を与えるのは友達のキョウヤか、もしくはライバルの牙王なのだろうから。悔しくて羨ましくて仕方ない。だが、いつもはっきり気持ちを言葉にしない少年が湊を大事だと答えてくれたから。今はそれでいい。
アガレスは不満そうな顔をした後、すぐに穏やかな表情を浮かべた。
「そうですか。湊がいいなら、私は構いませんが」
「うん。いいの」
人はいきなり急成長できるわけではない。だから湊は好きなひとに答えをもらい、伝えただけでいいのだ。今までの湊だったらあそこできっと諦めてしまって、それをずっとずっと未練がましく引きずり、死人のようになっていただろう。
湊の森の中のひだまりのような笑顔に、アガレスも黄金の瞳に慈悲をたたえていた。
牙王たちと連絡先を交換するのを忘れてしまったため、あれから特に新しい情報は入ってこず、代わり映えのない生活が続いていた。牙王の家に押しかけるのも違うだろうと、湊は淡々と日々を過ごしている。
そうしているうちに、WBCカップで牙王が優勝した。中継の中にはウルフの、いや、仮面を外したロウガの姿もあった。ロウガの表情は澄んでいて、堂々とした強さを持っている。それを見た途端、湊は口元をほころばせた。ロウガは立ち直れたのだ。きっとロウガのライバルのおかげだろうけど。しかし、ウルフではなく荒神ロウガになった少年を見て、湊は闇の中から抜け出せた気がした。
それから数日後。
休日のため、学校はない。朝食を作って洗濯物を干した後、掃除をしようと湊は聖堂へ入った。扉を開けた瞬間、湊は目を見張る。
ロウガが、祭壇の前に立っていた。ケルベロスもいなければコアガジェットの槍も持たず、一人で美しいステンドグラスを見上げている。
ロウガは扉の音で気付いたのか、ゆっくり湊に向き直った。凛々しく、芯の強さを感じさせる眼差しを湊に注ぐ。
「湊」
名前を呼ばれるだけで心臓がうるさくなった。長い間呼ばれることがなかった自分の名前。ロウガに呼ばれただけで、特別な名前のように感じられる。
「……どうしたの?」
湊は驚きを隠そうと、できるだけ優しく笑ってロウガに近づいた。人に尋ねていいことと、悪いことがある。これは尋ねていいことだろう。ロウガはそれに応えてこれまでのことを語ってくれた。湊に隠していたことすべてを。
自分は臥炎に協力し、ディザスターという組織に所属していたこと。戦国学園に転校したのは、氷竜キリという少年をディザスターに迎え入れるためだったこと。闇ゲドウと戦っていたのは、正しく強き力を使うという条件のために協力したこと。キョウヤが人間をやめて神になるのを止めようとしたが、無理だと諦めてしまっていたこと。せめて人間でいるうちに共にあろうとしていたこと。それを牙王が叱咤したこと。再び臥炎タワーに向かって直談判をしようとして男に襲われたものの、無事だったこと。それから、キョウヤと友に戻ったこと。
やっぱり未門君か。話の中で苦笑してしまいそうになる。だが、それを湊に報告してくれただけロウガも変わったのだろう。
「……牙王に、会ったそうだな」
「え?」
「牙王が言っていた」
――――黒瀬先輩、なんだかずっと泣きそうな顔してました。俺には二人のこと、全然分かんねーし、黒瀬先輩なんて一回会っただけだし……でもきっと、黒瀬先輩、傷ついて、だけどどうにか荒神先輩のこと知ろうして、俺に会いに来たんだと思います。
まさしくその通りだ。小学六年生とはとても思えない洞察力。牙王と出会ってロウガが変わるはずだと湊は納得してしまった。
話し終えたロウガは目を伏せ、そのまま湊に頭を下げた。
「俺が……悪かった」
「な、何、急に」
「俺は……何も尋ねず、待つと言ったお前に甘えていた。悲しませることを分かっていながら、俺はキョウヤのことしか目になかった。友を思うあまり、お前をずっと置き去りにしていた……」
「……違うよ。前も言ったけど、私が嫌な女だっただけ」
苦しい声で言うロウガに、湊は静かに否定する。
「私はずかずか心の中に入り込まれるのが嫌だし、言いたくなったときに言ってくれればいいって思ってただけ。ただ臆病で、自分が傷つきたくないから自分の世界に閉じこもってただけ。……ずっといたのも、ロウガに迷惑って思われたり嫌われたらどうしようって思っただけ。ロウガに追いかけられる臥炎さんや未門君が羨ましかったけど、勇気がなかっただけ」
湊だって、友と共にあろうとするロウガに嫉妬からうそつきと言ってしまった。ロウガがキョウヤに感じていた友情や恩義を何も考えずに。湊だってそんな人物がいたら協力したかもしれない。ロウガばかりが謝らなくていいのだ。
「何度も聞いちゃうけど……私はあんたと違って、自信、ないからさ。分からなくて、怖くて。それでも……私を、」
「ああ。俺は、お前が好きだ。黒瀬湊は――――俺の、大事な女だ」
湊の言葉を遮り、ロウガの唇から出たのはまっすぐな思いだった。荒々しい口調から想像のつかないくらい静かな物言い。けれど青い瞳は見つめられたら溶けそうなほど熱を持っている。
直接会う前から、ロウガのそばに女子がいた記憶がほぼない。あってもソフィアだけだ。そもそも家族同然のキョウヤとばかりいて、またバディファイトばかりに目が行って女子に興味がなかったのだろう。「荒神先輩かっこいい」などと言う女子が陰ながらいたにも関わらず。だからこそ二度も「大事な女」と言い切ってくれた真実が、湊の自信になって胸にしみこんでいく。
ロウガが毅然とした、だがひどく熱っぽい眼差しで尋ねる。
「湊は、俺を……どう思う」
真摯な顔つき。凛としたまっすぐな眼差し。固く結ばれた口元。そこに不安や怯えなど微塵もない。湊がどう返事をするのか、ロウガは分かっているのだろう。
素直に言うのが癪で、湊はわざと不満そうに眉をひそめて言った。
「……最初きちんと会ったときは、ほんと金持ち坊ちゃんムカつく、恵まれてるから自信があるんだろうなって思ってた」
ひとつ不満をこぼせば、つらつらと溢れていく。
「バディファイトのことばっかり考えてるし、言葉は少なすぎるし分かりづらいし、好きって言っておいて連絡先を交換しないでほっつき歩くし。絶対他の女の子だったら愛想つかしてるよ。でも……」
湊が息を吸い込む。そらした視線をロウガへ戻し、唇をほころばせた。
「でも、本当はどこか寂しそうで、脆くて、誠実で、優しい貴方が――――私は好きよ。大好き。愛してるわ」
生まれて初めて愛した少年へ、気付いた思いをぶつけた。愛しているなんて、湊も生涯言うことがあるのか疑問だったし、恥ずかしいと思っていた。でも今は恥ずかしくはない。本当のことだったから。
愛していると口にするだけで胸が希望でいっぱいになる。希望なんて、そんな明るく清く美しいものが自分にまだあったのか。
愛されるより愛したい。どこかで聞いた、ありふれた、俗っぽい、けれどきっと真実であろう言葉を思い出した。
湊の甘く幸福な微笑みをロウガはまばたきせず見つめている。
「だから……だから、もう離れずに、そばにいて」
独りにしないで。ずっと、湊が言いたかった言葉。迷惑をかけてしまうから、やりたいことがあるから、でもそれは自分のことしか考えてないから。遠慮して口にすることがなかった願望。
距離を詰めてロウガへ抱きついた。湊よりも固く男らしい体。ロウガは拒まない。胸に寄り添う湊をそっと包み込む。以前と同じように、まるで湊がガラスでできているかのように優しく。
――――あたたかい。
寂しさで冷えていた体が、心が、あたたまっていくのを感じた。このあたたかさは夢なのではないかと思うくらいに。
「ああ。もうお前を……独りにしない」
瞳にため込んでいた透明な雫が、頬をつたってロウガの服を濡らす。湊の目が切なさと美しさを帯び、太陽の光できらめく。
「俺もお前を、愛している」
耳元で囁かれた声は、どこか甘く、優しく、愛おしさでいっぱいだった。
どちらかともなく顔を寄せ合う。息がかかるほど近い。ロウガの力強い目に心が吸い込まれていきそうで目を閉じる。そして、そのままゆっくりと唇を重ねた。
三度目のキスだ。だが、どれよりも心臓が破裂しそうで、同時にどれよりも甘く、どれよりも幸せの味がした。