7.
食事中もそわそわしていた主の前に出てきたのは、今剣と五虎退だった。
一気に本丸の平均年齢が下がった。

最初こそやはり怖がっていたものの、身長見た目共に幼かったことが幸いしたのか、すぐに仲良くなっていた。
一晩眠って、起きてみたら遊びに誘われて、お喜びになっていた。
今まで遊び相手もなく、ただ私の後を追っていた主にとって、彼らの登場は生活を一変させる契機となった。

「あるじさま、あそびましょう!」
「遊ぶー」

彼らが来てから間もなく3日、遊ぶことも大変に結構。
しかし本来の人手に関していえば、全く持って足りない。
寧ろ爛漫な今剣につられて主まで駆けまわったり、それを止めようとした五虎退の虎に躓いて転んだり、怪我をされたりと余計に目が離せなくなった。

主がお喜びになられているから結果的には悪くないが、これでは本末転倒だ。
前田や薬研が来てくれると、何かとやりすぎる今剣をうまく窘めたり、遊んで擦り傷を作る主を癒したりすることもできるだろうが。

「…うーん、」
「どうしたんですか、いち兄…?」
「あ、ううん、大したことではないよ。ただもう少し、人を増やした方が良いかなと思っていただけさ」

ただ、幼い主にそう何度も鍛刀をさせるのも気が引ける。
力は強いとはいえ、やはり疲れはある。
2人を鍛刀した次の日はいつもより起床時間が遅く、尚且つ機嫌も良くなかった。
昼前には既に遊ぶだけの体力が戻っていたようだったが、回数を重ねると胴だかわからない。

考え事をしていると、 心配そうな顔をした五虎退が寄ってきた。
今剣と違って大人しい五虎退はこれ以上はと思っても止めることができず、心を痛めることがしばしばあるようだった。
加えて、人のことをよく見ている子なので、こちらが思い悩んでいることもすぐに気が付く。
心配をさせてしまったと微笑んで訂正をすると、同じ部屋で次は何をして遊ぼうと話していた今剣が反応した。

「あー!ぼく、いわとおしに会いたいです!」
「いわとおし?」
「いわとおしは、おっきくて、つよいんですよ!」
「おっきくて、強い…」

ああ、なんだか嫌な予感がする。
岩融は確かに大きくて強いが、その分資源も力も使うことになる。

それに彼は今剣の歯止めにはなってくれるだろうが、一緒に遊ぼうとせがまれてしまうに違いない。
そうなってくると、私が雑務に当たるしかなくなるのだ。

「岩融は呼ぶのが大変ですから」
「でもそのぶんつよい!」
「主の身体に障るといけませんし、まずは人を揃えないと」
「むう」

強いとっても、ここにいる男士はたったの3名。
ここに岩融が来たとしてまだ4名。
出陣するには人が足りないのだから、まだ強さを考えても仕方がない。
主の守りを考えれば、短刀の子らを呼ぶ方が先決。

無論、今剣もそれは分かっていることだろう。
今剣ただ我儘を言っているだけだ、それは私も分かっている。

「あるじさまはどうおもいます?いわとおしとあいたくはない?」
「えっと、」
「今剣、主を困らせてはいけませんよ」

主は今剣に詰め寄られて、困惑していらっしゃる。
刀剣男士たちについてあまり詳しく知らないであろう主にとって、岩融が一体どんな男士なのか、どのような仕事ができるかも、いまいちわからないのだから当たり前だ。
恐らく、今剣のお願いだから無下にできずにいるのだろう。

口振りは優しく努めているが、内心は荒れている。
腑に落ちない。
私は主の近侍のはずなのに、主の傍にいる時間が最も少ない。
今後もそうなるなんて、想像したくない。

そのようなことを考えているうちに、おろおろと目を右往左往させていた主はきちんと今剣と目を合わせていた。

「そんなこと、ない…けど、いちがたいへんだから、いちのお手伝いしてくれる人がいい…」

数刻前の自分を平手打ちしたい。
主はきちんと私のことを考えてくれているというのに、あろうことか嫉妬していたことが恥ずかしい。

確かに今は主の傍にいられないかもしれない。
だがそれが主のためになるならば、いかようなことでも厭ってはならぬ。

「それは、だいじですね」
「うん。だから…だれがいいかな」

幼い3人が頭をくっつけ合いながら、誰がいい、彼がいいと話し合いを始めた。
五虎退は兄弟を呼ぼうと話し、今剣は脇差などどうだという。
主の体調を考え、鍛刀は週に1度、2振までと考えている。
五虎退が来たのがちょうど1週間ほど前のことだから、丁度いい頃合いだ。
また2振程度であれば主の負担も少なくて済む。

資材は極力少なくして、短刀が出やすいようにしておこう。
主の力だと、少し資材を増やすだけで私や他の太刀が出てきてしまいそうだ。

「いち、今日やってみてもいい?」
「もちろんです。お伴致します」

幼い3人組の話し合いが終わったらしく、主がとたとたと軽い足音を立てて膝元にやってきた。
家族が増えるのが嬉しいのだろう、ご機嫌そうに笑いながら膝をついている私の腹に顔を埋めた。
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