13.Confessions of a certain ghost
ふよふよとナナは漂っていた。
昔そうしていたように、またエントランスのシャンデリアの上で下の様子を眺めていた。
本当は部屋から出てはいけないのだが、こうしてヴォルデモート以外には見えないこの姿でうろうろしている分には問題ない。

今日は人が多いようだ。
先ほどから何人かの人に私の身体を素通りされたが、まあ慣れっこだ。
数年前とはうって変わり、この屋敷にたくさんの人が訪れるようになった。
それは冷やかしなどではなく、ここをアジトとして使っている人々だ。

ナナはここにいる限り、ここにいる人を絶対に傷つけたくないと考えていた。
この屋敷で死人は絶対に出さない、ナナの今一番の目標はそれだった。
此処に来る人は、時々数が変わる。

前、私にクルーシオをかけたあの若い男は、最近めっきり姿を現さない。
彼のそばにいた人が話していた、「あいつは捕まった。よもやあいつまで…」そんな話だった。
捕まったということはアズカバンに収監されたということだろ。
あそこにいる吸魂鬼は恐ろしいものだと本で読んだ。
きっともう帰ってくることはできないのだろう。
人が減るのは寂しい、もっと屋敷が騒がしくなればいい。

今まで静かで誰もいない屋敷にぽつんと1人でいたナナは1人になることを極端に恐れた。
本当はヴォルデモートが外に出て屋敷に居ない状況が嫌だ。
ずっと屋敷にいて、お話をしてくれればいいのに。
でも、彼は生きているからそんなことばかりはしていられないということをナナも理解している。
それに彼は自分の目標を明確に持ち、それを行動に移している。
…それが、たとえ一般的な悪に分類されていたとしても。

ナナはそれを許していた。
許すというのはおかしな話ではあるが、別にかまわないと思っていた。
外で彼がどんなことをしょうが、どんな風に呼ばれようが、どんなに憎まれようがナナには関係のない話だ。
ナナにとって彼は世界のすべてで、彼以外に世界はない。
彼をなくしてしまえば、ナナはまた一人ぼっちに逆戻りして、また誰にも気づいてもらえない悲しい存在に成り下がる。
それだけは本当に嫌だった、そうなるくらいなら死んでしまったほうが…

『ああ、そうだ。私、死んでるんだった』

失笑とともに冷めた声が漏れた。
そう、死んでいるのだ。
彼らが来るまで、ナナはその事実をずっと心の奥底に隠して、信じようとはしなかった。
『私は、死んでなんかない』そう自分に言い聞かせてようやく自我を保てていた。
死んでない、きっと生きてる。だれかが迎えに来てくれる。
そんな御伽噺のお姫様のような馬鹿なことを考えていた。
お姫様がゴーストの御伽噺なんて聞いたことはないのに。

でも、そのゴーストのお姫様の下には王子様が現れたのだから笑えない。
人生(もうとっくに終わっているはずだが)は何が起こるのかわからない。

とにかく、ナナは王子様に一生懸命尽くそうと考えた。
自分を実体化させ、この屋敷を頼むと信頼してくれた彼のために。
彼が外で何をやっているかなんてどうでもいい。
誰が非難してくれても、きっと私は彼以外に興味は持てない。

だって、そうしなくちゃ。
そうしなくちゃ、私は消えるほかないのだから。

大概、私も汚い人間に過ぎない、子どもの姿に似合わない嘲笑をナナは浮かべた。
死んでもそれが直らないのだから、本当に人間というものは罪深く醜い生き物なのだろう。
でもそれでも、私は死してなお、

『大好きだよ』

大好きなのだ。
人が、彼が、彼らが。
今を生きるために必死にもがく彼らが、大好きだ。
私は死んでいる分エネルギーがあまってる。
だから、私は生きてる彼らのためにできるだけの手伝いをしよう。

それがたとえ、他の生きている人を殺す選択でも。
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