2.オシロイバナ
MANKAIカンパニーが発足してからおおよそ2年。
正しく言えば、発足してから2回目の冬だ。
紬と監督が出会ったのは、丁度1年前になる。

今年になってようやく気付いたが、紬は冬になると若干不安定になるようだった。

「何か理由があるんですか、丞さん」
「俺に聞くのか、本人じゃなくて」

昼頃、いつも通り中庭の植物に水遣りをしていた紬に声を掛けた。
その時の話がどうにも引っかかったのだ。

苦手だと言った花言葉を聞いて、はっとして立ち上がったが、その時には彼は監督に背を向けてしまっていた。
ただ、恐らく泣きそうな顔をしていたに違いない。
それくらいに悲壮な声音だったのだ。

お互いに幼少期のニックネームがあるくらいに付き合いの長い丞なら、何か知っているに違いない。
そう思って、いづみは丞に聞いてみた。

「…まあ、事情はあるし、知ってる。だが、どうにかできるのは本人だけだ」

彼女の考えは当たっている。
紬の大抵の事情は丞に筒抜けであるし、その逆も然り。
ただし、事情を知っていてもどうにもできない部分がある。
今回の件は間違いなくそれで、その上、解決が最も難しいとみられる一件であった。

紬と千冬の関係は、あまりに繊細で手出しができない。
その上、お互いがお互いに思い合っていることに違いはないのに、お互いに手を伸ばせない。
3年程、2人はそんな日々を過ごしてる。

「詳しく聞かせてくれない?」
「必要な時が来たら話すが、そうでない限りはそっとしておいてくれ」
「…そう、分かった」

3年程、丞はもどかしい思いをしている。
簡単なことだ、紬が彼女に会いに行って、話せばきっとわかってくれる。
だが、紬にはその勇気がない。
そして、千冬も紬に触れる勇気がない。

臆病な2人のこれからは、丞にはどうすることもできない。
prev next bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -