04.おとなげない!
放課後のアカデミーの空き教室は、かかあ天下家庭の子どもが集まる場になりつつある。
眠そうに欠伸をするシカダイの隣で、僕はいのじんの話を聞いていた。

そう言えば、この間の長期任務から帰ってきたら母さんがいなくて、父さんが大慌てで入院準備をしていたことがあった。
いのじんの話では、母さんが倒れたのは二度目と言ったらしいが、それは嘘だ。
母さんが栄養失調で倒れたのは通算4回。
そのうち、2回は僕が第一発見者で、父さんにばれなかったと言うだけの話である。

「ってなことがあったんだよ」
「あー、悪いな、うちの母さんが」
「いいよ、お肉、美味しかったし」
「現金だな、お前…」

それにしても、母さんが誰かの家に行くのは珍しい。
そしてその姿を誰かに見られることも珍しいことだ。

元々母さんはいのじんやシカダイの両親と、深い付き合いはない。
父さんはその限りではないけれど、母さんはなかったはずだ。
…まあ、サクラさんのところに行こうものなら、問答無用で病院に突っ込まれていただろうから、行き場がなかったに違いないけど。

「いいなァ、俺もシズキの母ちゃん見てみたかった。やっぱ美人だったのか?」
「うん、美人。ちょっと子どもっぽくて可愛い大人って感じ。だよね、シズキ」
「…まあ、そうだな」

でもやっぱり釈然としない。
…ただ単に、僕が嫉妬しているだけかもしれないけど。
父さんの血だと思うけど、どうにも母さんのことを他人に知られるのが嫌みたいだ。
独占欲ってやつだと思う…なんだかどんどん父さんに似てきてるのか、僕。

それはそれで本当に嫌なんだよな。
目下、僕の一番の敵は父さんだ。
いくら挑んでも勝てやしないし、息子だからってちっとも手を抜かないし、何より、母さんには馬鹿みたいに優しいくせして、外面もいいくせして、僕にはちっとも優しくないし結構真顔ってのも腹立つ。

「シズキって結構マザコンだよね」
「うるさい…」
「まあ、少なからずそう言うことはあるだろ。子供は」
「シカダイ、お前、僕を慰めたいのか貶めたいのかどっちなんだ」

にやにや笑いでフォローとも追撃とも取れる発言をしたシカダイを睨みつつも、僕はため息をついた。
確かに子どもすぎるかもしれない。
流石にこの年齢で、母さんを取られるのが嫌だなんて、マザコンと言われても言い返せない。

でもそれでもいいかと思ってしまう自分が憎いくらいだ。

「つーか、シズキのとこはかかあ天下と言うか、母さんのことが好きすぎておかしいってだけだな」

返す言葉もない。
僕も父さんも、母さんのことが大好きすぎる。
お互いにお互いを蹴散らして、母さんの隣を奪い合うくらいには。

でも父さんは大人気ない!
それが僕の言いたいことである。
prev next bkm
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -