6.男子会
幼馴染は非常に聡明だ。
子どもの頃から他の子よりもちょっと大人びていて、本ばかり読んでいる変わった子だ。
大抵のことは何でも知っているし、言われたことは何でもできる。

「頭良し。その上、スタイル良し、顔良し、箒も乗れる、クィデッチも強い。…お前の幼馴染、ハイスペックすぎだろ。本から生まれたんじゃねーの?」
「残念ながら、シーナは僕のただの幼馴染さ、シリウス」

ジェームズはごろりとベッドに仰向けになり、昼に聞いたシーナの声を思い出していた。
彼女は真剣にジェームズのことを考えて、アドバイスをしていた。
ただ当の本人は、それを興味深く聞いているふりをしながら別のことを考えていた。

シリウスはごろ寝をしているジェームズをにやにやしながら眺めた。
彼がシーナのことを思い浮かべているだろうことを知ってのことだ。

「ただの、ねえ」
「煩いよ」
「容姿よし、性格良し、頭良し…でも、鈍感ってわけだ」

シリウスからすれば、面白くてしょうがないのだ。

親友が好きな相手は、エヴァンスではない。
本命は幼馴染みのシーナで、それこそ、ホグワーツに入学する前から気になっていたという。
しかしシーナはスリザリンに入寮し、その上、鈍感が祟っていつまでもジェームズの気を知らないままだった。

その上、悪いことにシリウスの弟、レギュラスが虎視眈々とシーナのことを狙っていると来た。
どうしてもグリフィンドールとスリザリンの間柄では、接触できる時間が少ない。
そこでジェームズは大義名分を作るために、また、鈍感なシーナに恋愛を理解してもらえるように、エヴァンスとの恋バナをしたのだ。
しかし、である。

「しかも、筋金入りの、だ」
「レギュラスのあれにも気付かないくらいだから、相当だな」
「シリウス、君の弟くん何とかしてくれよ」
「無理言うな、アイツ俺の言うことなんて聞くわけないだろ」

シリウスとレギュラスは仲が悪い。
彼がレギュラスに忠告しようものなら、事態は余計に悪化するだろう。

シーナとジェームズの接点は増えたが、彼女は全力でリリーとジェームズをくっつけてしまおうとしている。
リリーがジェームズを嫌っているので、うまくいかないことが幸いである。
シーナとリリーが仲良くなり始めているのは…まあ、いいのだろうか。

「厄介すぎる!シーナ、真顔でジェームズはカッコいんだから、なんていうんだぞ!?」
「そりゃいいな!」

シリウスはとうとう腹を抱えて笑いだした。
好きな相手にかっこいいとまで言われているにも関わらず、全く進展し得ない状況。
その状況を作り出したのはジェームズ本人なのも面白い。

ジェームズは笑いっぱなしで役に立たないシリウスに向かって、クッションを投げた。
親友だから手伝ってくれるかと思えば、シリウスは笑ってばかり。
これではこちらの恥を晒しているだけだ。

「楽しんでいないで、何かアドバイスしてくれよ!シリウス、君女の子の扱いには慣れてるだろ?」
「女なんてほっといても勝手に寄ってくるから知らね」
「なんで僕の友達はこんなヤツばっかなんだ!」

手持ちの切り札が少なすぎるとジェームズは感じていた。
グリフィンドールとスリザリンという深すぎる溝や幼馴染と言う鎖を打破する手立てがない、きっかけもない。

投げつけられたクッションをキャッチしてジェームズに返したシリウスは、困り顔で頭を掻いた。
彼の言葉は本心であり、女遊びはするものの恋心に疎いシリウスには的確なアドバイスなんてできるわけがなかったのだ。

「ってか、そもそもお前ら幼馴染なんだろ?付き合いは一番お前が長いんだから、いつかいい感じのチャンスがあるんじゃね?」

投げやりなシリウスの言葉に、ジェームズはもう一度クッションを投げる羽目になった。
そんなものがあるなら、この15年の間にとっくに起こっているに違いない。
ジェームズはそう思っていたが、それが違っていたと分かるのはまだ少し先の話だ。
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