3.意外性
シーナはクィデッチの作戦会議に出席した後、夕食の場でエヴァンスを見つけた。
ジェームズがしきりに話しかけて、煩がられている。
シーナが何か手助けしたところでジェームズがエヴァンスに振り向いてもらえる日は遠いような気がして、気まで遠くなった。

「どうかしたんですか?」
「ううん、大したことじゃないから」

それに、最近レギュラスが良くついてくる。
今まではクィデッチの会議の後は同い年のチェイサーである、レイチェルと一緒に帰っていた。
しかし彼女は最近、チーム内に恋人を作ってしまったので一緒に帰らなくなったのだ。
そして、レイチェルの代わりに、なぜかレギュラスがついてくるようになった。

レギュラスは1つ年下の後輩で、ブラック家の次男坊だ。
長男坊はどうにも破天荒で滅茶苦茶で、何よりジェームズの親友と言う、ブラック家が頭を抱えそうな癌、シリウスである。
奔放な兄を見て育ったせいか、レギュラスは非常にまともだった。
頻繁についてきて、事あるごとにどうかしたのかと問いかけること以外は、まともである。

「シーナ、グリフィンドールのことが気になるんですか?」
「ちょっとね。ほら、レギュラスにシーカー譲る前は私があいつと競り合ってたから」
「ポッターですよね。やたらに目立って…純血の恥さらしです」

シーナがどうしたものかとジェームズを見ていると、隣のレギュラスが苦々しい顔でグリフィンドールのテーブルを睨んだ。
スリザリン寮内では、このような考え方をする生徒が殆どだ。
3年目ともなれば、シーナもその思考には慣れる。

今年、レギュラスはシーカーとしてスリザリンのクィデッチチームに入った。
今までシーナがジェームズと競い合ってきたが、次はレギュラスがそれをすることになる。

「あまり相手にしない方がいいわよ。振り回されるから」

シーナはそこのところが若干心配だった。
レギュラスは非常に真面目だから、ジェームズのふざけた様子や挑発に左右されてしまいそうな気がする。

レギュラスの手を引いて、シーナはスリザリンのテーブルについた。
彼はジェームズを睨むのをやめて、素直にシーナについてくる。

「それにしても、最近本当にグリフィンドールを見過ぎじゃないですか?次の試合はレイブンクローですが」
「レギュラスはいつから探偵になったの?」
「探偵なんて仰々しい。…シーナ、グリフィンドールに何かあるんですか?」

疑り深いレギュラスの視線に、シーナは眉を顰めたくなったが我慢した。
どうしてレギュラスがこうも突っかかってくるのか分からないが、彼にジェームズとの関係を知られるわけにはいかない。
レギュラスに知られれば、彼から軽蔑の目で見られる可能性が高いし、それだけにはとどまらないだろう。

ジェームズはスリザリン寮内での嫌われ者だ。
彼とシーナの関係が漏れれば、シーナへの見方が大きく変わる可能性が高い。
そうなるのは避けたかった。

「レギュラスには言いたくなかったんだけど、エヴァンスって子が気になって」
「エヴァンス?」
「そう。私たちの学年でトップ争いをしてる女子生徒」
「ああ、そういうことですか。分かりました」

レギュラスは淡々とそう言って、つまらなそうにゴブレットに手を付けた。
シーナの言いたいことを理解して、もうグリフィンドールの話をするのはやめたようだ。

純血主義にとって、マグルの話は嫌悪しか感じられない。
シーナが言いたがらなかったのもそのせいだと思ってくれたようだ。

「トップは取るよ。テストも、クィデッチもね」

不機嫌そうにしているレギュラスにシーナは苦笑いしながらそう言った。
普段シーナは他人よりも勝敗に頓着がないと評価される。
ただ、シーナ自身はそうは思っていない。
負ければ悔しいし、次は勝ちたいと思っている。
ただそれが表に出にくいと言うだけのことだ。

レギュラスは目をぱちぱちさせながら、シーナを見た。
彼の知るシーナもまた、一般的な評価と同じだった。
大好きな先輩のことを勘違いしていたことへの羞恥と、シーナの熱い部分を垣間見たレギュラスは顔を赤くした。
レギュラスは今度からこの話題はやめようと考えながら、ゴブレットの中身を思い切り飲み干した。
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