Turn of events
睨み合っているダンブルドアとリドル、そしてリドルに手を握られたままの咲子。
緊張状態ではあるが、咲子だけは全く気にしていないようで、開いている手で紅茶を一口飲んだ。

「リドル、そもそも、なんでこんなことになったの?」
「さあ?俺が聞きたいくらいだよ」
「火がないところに煙は立たないと思う。あと、なんとなく目星はついてるけど」

紅茶を飲んだ咲子が、ちらとリドルの顔を見上げた。
まだ椅子に座ったままで、立つ気はないらしい。
しらばっくれているリドルを睨むと、彼は眉を寄せた。

ダンブルドアも彼女の挙動を注意深く見ていた。
咲子が本当にマグルなのかの真意は、彼にも分かっていない。

咲子は20歳くらいに見えるが、彼女にホグワーツに通っていた経歴はない。
それこそ50年以上前の記録までダンブルドアは探っていたが、彼女が在学していた証拠は出てこなかった。
魔法省で調べた結果、彼女には面白い経歴があった。
それが嘘か真かについて誰も定かにはできないが、魔法省は彼女の存在と仮定を認めて、特例として魔法界の籍を用意した。

咲子はダンブルドアの視線を感じながらも、リドルの名前を呼んだ。
咲子に催促されて、彼はようやく嫌々ながら話し始めた。

「ヴォルデモート卿…学生時代、一瞬グレて作った名前」
「うん」
「俺の名前のアナグラムだから疑われてるってわけ」
「うん。信じていいんだよね」
「もちろん。名誉毀損で訴えたいくらいだ」

リドルは笑っているが、目は全く笑っていない。
名誉棄損で訴えると言うのは本気だろうし、それ以上のことまでやらかしそうだなあ、と咲子は彼の赤い目を見ながらそう思った。

咲子があっさりと引き下がったので、ハリーたちは困惑した。
リドルのことを疑う人がこれだけいるのに、咲子は彼の言葉だけでリドルを信じると言い切ったのである。
あまりにもシンプルではあるが、妄信しているような感じではない。
そこには確固たる信頼関係がある様に見えた。

「でも、リドル。立場的にはどうにかしないといけないんじゃないの?」
「それはそう。だけど咲子は関係ないから、家に返す。ここは危ないし」

ただ、咲子は席を立とうとしない。
笑顔のまま、リドルを見ているだけだ。

リドルは咲子のその笑顔の裏を読み取っていた。
まだここにいたいという意思表示である、恐らくこの状況を楽しんでいるのだ、彼女は。
リドルはプロポーズした後、咲子からある一つの未来を知っているとカミングアウトされている。

彼女は長年、自分の知っている未来を恐れていたから見届けたい思いがあるのかもしれない。
ただ、それとこれは話が別である。
開心術を咲子に使う気にはならない、大体彼女の考えていることは分かる。
良くも悪くも好奇心でここにいるのである。

「どうしたいのさ」
「だって気になるから」
「…わかったよ。そこにいてもいい。だけど絶対にそこにいること」

基本的にマイペースな咲子であるが、一度決めたら梃子でも動かぬ部分があるのは長い付き合いの中で分かっていることだ。
リドルはため息をついて、咲子のお願いを聞くことにした。
確かに長年にわたって心配し続けていた物語の行く末が決まろうとしているのだ。
見届けたい気持ちはよくわかるし、ダンブルドアが警戒している中、咲子だけを連れて帰るのは難しいことも確かだった。

決めたら行動は早いのがリドルのいいところである。
すぐにロビーに守りも呪文を張り巡らせ、梟を飛ばし、ホグワーツを前線とした全面戦争に持ち込むことを決めた。
こんなもの、さっさと終わらせて長期休みを取らないと割に合わないというのがリドルの考えだった。
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