「思ったんだけど」
「何を」
「怪盗なのに人を殺しすぎじゃない?」
「邪魔だったら殺した方が早いだろ」
「よくある怪盗って、こう…人は殺さないけど、相手をおちょくって逃げ果せるイメージが」
「ひとつ言っておくが、怪盗じゃなくて盗賊だ」
「怪しいか、野蛮かの差しかないじゃない」
「賊の意味を理解してないからそうなるんだ。賊の意味合いは“他人に危害を加えたり、他人のものを奪う者”だろう」
「それ、白昼堂々と力説することじゃないよね」
「お前から聞いておいて何を言ってるんだ」
バケットを腕に抱いたまま会計もせずに話している男女を、子どもが2,3人いそうな年齢の女性が怪訝そうに見ていた。
話している内容が物騒だったからだ。
苦笑いしながら女が言う。
「嫌だな、おばさん。今度、彼と“9人の盗賊”をやるんですよ」
「あら、そうだったの。ごめんなさいね」
“9人の盗賊”は有名なミュージカルである。
ここ、サラームでは知らない人はいない。
愛想よく笑ったおばさんに、数枚のコインを手渡して、女は笑った。
それでは、Have a nice day.
日常のレスタチーヴォ