少年と猫
レギュラスは11歳になり、ホグワーツに入学することが決まった。
当然のことながら、連れて行くペットはスバルだ。
スバルを連れて行くと行ったとき、寂しそうな顔をした父をレギュラスは見逃さなかった。
意外なことにも猫好きで、スバルをたいそう気に入っていたオリオンだったが、猫部屋を勝手に作った前科もあり、ヴァルヴルガに睨まれて何も言えないようだった。
レギュラスは父に宛てた手紙にスバルの写真を入れよう、と心に決めて家を出た。

レギュラスに拾われて2年たったスバルだが、身体はあまり大きくならず、ただ鳴き声は落ち着いた大人の猫の鳴き声に変わっていた。
昼寝好きでマイペースなスバルは寝床が変わるくらいのことは、なんてことないみたいだった。

「スバル、ほら着いたよ。ホグワーツだ」
「にゃあ」

家を出るのも、長い間列車に乗るのも、人の多いところに来るのも、スバルにとっては初めてのことだったが、意外とストレスにはならなかったようで、スバルは元気そうだ。
匂いが変わったことが気になったのか、しきりにベッドに身体を擦り付けている。

レギュラスはその様子を見守りながらも、自分の荷物を解いた。
実家から持ってきたスバル用の籠ベッドを出窓に置くと、スバルはひらりとそこに飛び乗った。

「お、どうも。同室のバーテミウス・クラウチ・ジュニアだ」
「ああ…初めまして。レギュラスです、よろしく」
「バーティって呼んでくれ、レギュラス。よろしくな」

遅れてやってきたのは、同室になるらしいクラウチだった。
クラウチ家といえば、純血の家ではあるが黒い噂を聞かない良家だ。
そこの子息とのことだが、随分と軽い奴のようだ、とレギュラスは判断した。
ブラック家だから特別にしろとは思わないが、どうも、はないだろうと思った。
少なくとも、レギュラスは兄以外にそんな挨拶をされたことはなかった。

少し不信感を覚えていたレギュラスだが、いつの間にか手の傍にすり寄っていたスバルに気が付いて、荷解きを続けた。
甘えるようにレギュラスにすり寄るスバルだが、恐らくは新しい制服から自分の匂いがしないことが気になってしょうがないのだろう。

「…それ、お前のペット?」
「ああ…スバルっていうんだ」

レギュラスの真新しいシャツに黒い毛を付けまくっているスバルを、クラウチはじっと見ていた。
スバルもその視線に気づいたのか、レギュラスに身体を擦り付けるのをやめて、彼の方にトコトコと向かおうとしていた。
レギュラスは自分のベッドから離れようとしたスバルの尻尾をつかんで止めた。
ふぎゃ、と怒ったような驚いたような鳴き声を上げたスバルに、ごめんと謝りながらも、レギュラスはスバルを自分の方に引きずって近づけた。

別に突然魔法をかけられるとか、そこまで過激なことは考えていないが、ヴァルヴルガのような猫嫌いだった場合、スバルの危害が加えられる可能性はある。
クラウチはレギュラスの行動に驚いたようだが、意図に気が付いたらしい。

「俺、猫めっちゃ好きなんだよ。親父が大嫌いで飼えないんだけどな」

だから触っていいか?と聞くクラウチは嘘を言っているようには思えなかった。
それよりも、父と同じような境遇らしいことに同情を覚えざるを得なかった。

レギュラスはスバルを抱こうとして、猫パンチを食らった。
どうやら先ほど尻尾を掴んだのが悪かったらしい。
スバルの機嫌を損ねてしまったらしく、彼女は1人ベッドを降りてクラウチの方に行ってしまった。
その様子にショックを受けながらも、レギュラスはクラウチに話をした。

「うちの父上もそうなんだ…、家族の同意が得られないと大変だよ」
「父上って…ブラック家の当主だろ?同意が得られないって…」
「母上さ。猫嫌いに合わせて、父上、猫の毛がダメだから猫には神経質で」
「あー…そりゃ、その意見無下にはできないよなあ」

クラウチの膝元で丸くなったスバルは大人しく、クラウチに撫でられていた。
目を閉じて撫でられているスバルを見て、クラウチはいい猫だな、と微笑んだ。

他の同室の人もその後ぞろぞろとやってきたが、猫嫌いはいなかった。
同室の人に猫嫌いがいたら大変だと思っていたが、心配には及ばなかったらしい。
あまりペットに興味はないらしく、レギュラスやクラウチの家のことばかり聞いてくるような奴らだった。
レギュラスは辟易として、友人として付き合うならクラウチが一番よさそうだと判断した。
猫好きに悪い人はいない。

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