ぶいえすますはえいえんに
秀徳は進学校だ。
なぜここを選んだかといえば、まずセーラー服、これ重要。
中学時代をブレザーで過ごした私は、セーラー服にあこがれていた。
白と黒の正統派セーラーはないものか、と探したところ引っかかったのが秀徳だった。

先生からは、お前の学力じゃきつくね?と言ってきたけれど、私は持ち前のその場しのぎの勉強でまさかの合格。
いやマジでまさかだった、私自身も無理だと思っていた。
詰まる所、私は勉強がしたくてこの学校に来たわけではない、すべてはセーラー服のためだった。

「…誠凜にしておくべきだった…」
「いまさら何言ってんだよ…ってかなんだよ、この点数…」
「あのね、私数学がダメダメで…」
「見ればわかるのだよ…」

真っ赤に染まった数学のテストは、私にとっては見慣れたもの。
だけど、2人にとっては初めて見るものらしい。
未確認生命物体を触るかのように、緑間君はテストの端をつまんで裏返した。
ちなみに、裏も同じようなものだ。

「…確かにこれじゃあ、マネどころの話じゃねーよな」
「そういうこと」

高尾君たちが私の羞恥の塊、中間テストの内容を見ることになった理由は、そこにあった。

秀徳はバスケの強豪として有名な学校だ。
かの翔一先輩も、秀徳に行くか桐皇に行くかで迷っていたくらい。
彼は、雰囲気が合わなそう、という理由で秀徳はやめたらしい。
入学して、その言葉の意味がわかったと思う。

閑話休題、兎に角バスケが強い。
だけど、他の生徒はあまりそこに関心がない。
というのも、進学校であるがゆえに、勉強を主軸として考えている人が多いからである。
運動部もそこまで盛んではなく、数も他の高校に比べると少ない。
だからこそ、好きなように練習ができるという利点もあるらしい。
しかし、現実的な問題として、人員不足があるらしい。
部員の数に問題はない、しかし、マネージャーがあまりに少ない。
というか、居ない。

そのため、1年がマネージャー業務も兼任しているのだが、そうなると練習に支障が出ることもある。
ということで、マネージャーを常に募集している状態らしい。

そこで、話題に上がったのが私だった。
一応中学校でマネージャーをしていたという業績があり、尚且つ、現在所属なし。
お前ら聞いて来い、といわれてやってきたのが高尾君、緑間君コンビだった。

無論、私は断った。
それでもしつこく食い下がるので、断る理由を物理的に持ち出したのである。
その結果がこれだ、私の恥を晒す。
酷い話だ、信じてくれてもいいだろうに、こんな恥をかかせるとは。

「苗字さん、お前中学時代はどうしていたんだ。お前のいた中学はそれなりに偏差値が高いだろう」

今まで黙ってテストを見ていた緑間君が、テストを机に戻し聞いていた。
いい質問だな、と思う。
私は机に置かれたテストをファイルに仕舞いながら、答えた。

「先輩たちがワンツーマンで…いや、ワンスリーマン?で見てくれてたから」
「ぶはっ…ワンスリーマンって!」
「英語もまずそうだな…」
「ほっといてよ…とにかく、先輩2人に対して私1人で勉強会。テスト前1週間はマネの仕事休まされて、部活中は先生と補習して、その後夜の7時くらいまでずっと先輩と勉強」

くそう、下手に英語なんて使うべきじゃなかった。
まあ、とにかく私のバカさはよくわかったことだろう。
伊達に中学時代ビリを2年連続で取り続けていたわけじゃない。

中学時代の勉強会について話したところ、すごく微妙な顔をされた。
高尾君は純粋に先輩すげぇな、と驚いていたが、緑間君は恥ずかしくなかったのか、それで、と呆れ半分、軽蔑半分。

そりゃ恥ずかしいけれど、誘ってきたのはあっちだし。
私は今みたいに、ずっと断り続けていたのだ。
それでも、翔一先輩はマネとして参加してほしいといったのだ。

翔一先輩は私じゃないとダメなんだといった、その理由はいまだに分からない。
3年生だった翔一先輩が卒業した後も、真先輩が面倒を見てくれて、私を部内に残した。
その時も、お前がいないとダメだといった。
そこまで必要としてもらえるような場所は、もう他にはないと思ったから、私は辛くてもあの部に残っていた。
真先輩が卒業しても、私は部に留まって後輩の育成に力を入れた。
優勝は1度もできなかったけれど、ずっと準決勝までは勝ち残れた。

きっと私はあの2人がいてくれたから、うまくやれていた。
彼らじゃないとダメなんだと思う、だからとにかく秀徳さんのマネージャーは断るつもりだった。
たとえ、彼らがあの時の翔一先輩、真先輩のように私を見てくれるといっても。

「ま、そういうわけだから。私にはそんな余裕ないよ」
「んー、まあ確かにそうだよなあ…しゃーない。真ちゃん、とりあえず先輩たちに報告すっか」

それに、先輩たちの敵に回るようなことはしたくない。
彼らはそれを気にしないだろうし、きっとそんなことを言えば気にしすぎだと笑い飛ばすことだろう。
それでも、私は彼らの敵に回ることはしたくないのだ。

私はごめんね、と軽く謝って2人を見送った。
見送った後、携帯のパスロックを解除して、意味もなく携帯を弄った。

彼らと連絡を取らなくなって半年が経とうとしていたころだった。
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