ぶいえす やればできる!
1日徹夜で課題に取り組み、わからないところは次の日に早めに補修に行って先生に聞いた。
どうやらやる気のある姿勢が良かったのか、いつもは怖い数学の先生も快く教えてくれた。
その次の日のテストもちゃんと合格点を取って、先生にはよく頑張ったなと褒められた。

これなら、自信を持って報告できる。

「どうですか!これで文句ないでしょう?」
「…まあ、そうだな」

真先輩に小テストの結果を写メったところ、家の近くの喫茶店の名前と時間だけが送り返されてきた。
先輩からのメールは大抵そういう、要件しかないメモみたいなやつだ。
別に起こっているとか、そういうわけではなさそうなので安心してその喫茶店に行った。

すでに来ていた真先輩の目の前に座って、小テストの解答用紙と課題をバンと机に置いた。
真先輩それをしげしげと眺めて、まあ、合格点だな、と答えた。

「1人でもちゃんとできました!」
「…だからなんだ」
「…?」
「いや、1人でできたんだろうが。マネ続けりゃいいだろ。ってかなんで俺に報告した?」

特徴的な眉をしかめながら、真先輩はそういった。
だからなんだ、といわれても、なんだ?
というか、なぜ一人に拘っていたのか。
マネを続けたいわけでもないし、まあだからといって辞めろと言われるのはお門違いかと思うが、でも別にどっちでもいい。

じゃあなぜ、真先輩に報告したのか。
まあ喧嘩していたからっていうのもある、見返したかったというのも。
だけど、別にその先に何があるというわけでもなかった。

「いや別に…真先輩に大見得切ったので、ドヤりたかっただけです」
「ふはっ…なんだそれ」
「でもほら、すごくないですか?」
「あーそうだな」
「うわ適当…」

真先輩はふっと笑って、しょうがねえな、とメニューを手にした。
そのまま流れるような自然な動きで、ちらとカウンター近くに立っていた女性に視線をやると、彼女はうれしそうにこちらにやってきた。
テーブルにやってきた女性は私と真先輩をちらちらと交互に見ていたが、真先輩が紅茶と日替わりケーキのセットを、といわれて慌ててメモを取っていた。
テールを離れる時に、ちらと私を見た。
うん釣り合ってないよね、知ってる。

さて、ここまで来れば私はにやにやが止まらない。

「いいんですか?」
「何も言ってないだろ」
「相思相愛ですもん!わかります!」
「…以心伝心だろ、バァカ」

国語もやばいんじゃねえか、とぶつくさ言いながらも、真先輩は機嫌がよさそうだ。
運ばれてきたケーキを頬張って、ちょっと考えてみたけど、ケーキが美味しくて割とちょっとどうでもよくなった。

「マネは続けようかと思うけど、合宿の時とかのヘルプだけにしますー、今回のでもう疲れちゃった」
「まあ、それくらいが妥当だろ」
「ですねえ…あれもこれもなんて欲張っちゃダメってよくわかりました」

自分の器量にあったものだけで十分だ。
というか、今回のテストのために費やした労力が尋常じゃなかった。
やればできるってことは分かったとはいえ、流石に毎回あれは辛すぎる。

真先輩が起こっていた意味がようやく分かった気がする。
そう笑っていると、すごく怪訝そうな顔をされた。

「…まあいい、自分の立場は理解したみたいだからな」

はあ、とため息こそつかれたが、怒られることはなかった。
なんかあったらメールしろ、と皮肉たっぷりに言われたので、できる限りメールしないようにしようと思ったのはそのあとすぐだ。


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