ぶいえすはあすにせまる!
試合を明日に控えた日、私はいつもよりも遅くまで体育館に残っていた。
最終的な仕上がりを見てほしいという相田さんのお願いあってのことだ。
私の見る目が評価されているらしい。

夜遅くまで練習をしていたチームの人たちに、ドリンクとタオルを配って回る。
桃井さんと相田さんは明日の戦略を練っているらしい。
私はそういうのに向いていないから、体育館に残っている人たちの監視役である。
監視といっても、練習しすぎないように見ているだけだけど。

「あ、苗字さんサン。珍しいっすね、この時間までいるの」
「最後だからね」
「いいんすか?花宮サン、待ってんじゃねえの?」
「あらかじめ言ってあるから平気だよ」

最後に火神君と1on1を誘っていた黄瀬くんに無理しない程度にね、と声をかけつつタオルを渡すと、話しかけられた。

黄瀬君はとても気さくでいい人だ。
それ以上でもそれ以下でもないけど、高尾君と同じような感じがする。
ただ、高尾君よりも断然チャラい。

「ってかこの時間から勉強って…カフェとかっすか?」
「ううん、家でやってるよ」
「は?どっちの?」
「大体、私の家だけど…」
「マジ?それ大丈夫なんすか?」

何が?と首をかしげていると、高尾君がぷくく、と笑いを堪えながらやってきた。
その後ろにはお父さんの顔をした緑間君がくっついている。

「黄瀬くん黄瀬くん、名前さんちゃんはそういうの全然だから」
「あ、そういう感じっすか」
「何が?」

何やら2人の間でこの話題は終わったらしい。
私がいくら聞いても2人は答えてくれなかった。
緑間君が、気にするなといって、2人から私を引き離してくれた。
緑間君、やっぱりお父さんみたいだ。

黄瀬くんは話に飽きたのか、改めて1on1を申し込んでいた。
私は緑間君に連れられて、体育館の端に引っ込んだ。

「なあ、テツしらね?」
「さっき、タオル渡したっきりだけど…」

青峰君が辺りを見回しながら、声をかけてきた。
私が最初にタオルとドリンクを渡したのが、黒子君だ。
いつも通り柔らかく微笑んで、ありがとうございます、とだけ言っていた。
その後は見ていない。
体育館の中を見渡したが、確かに黒子君の姿はない。

隣にいた緑間君が、そういえば、と口を開いた。

「カゲトラさんが出て行った直後にいなくなったのだよ」
「カゲトラさんが…?」
「え、じゃあ一緒に行ったとかそーいうことっすか?」
「いや…まさか…」

火神君と黄瀬君が引きつった顔を見合わせて、まさか、とつぶやいた。
あり得る、と言い切ったのは火神君と黄瀬君、それから青峰君だった。

「追いかけるっすよ!」
「だな…」

3人は慌てて更衣室に走って行った。
その後を、緑間君と赤司君、紫原君が追いかける。
どうやら5人で行くみたいだ。

「高尾、先に帰っていいのだよ。苗字さんを送っていけ」
「おーう、了解」

高尾君や若松さんは居残り組らしい。
私はもう夜も遅いから、という理由で帰宅させられるみたいだ。

常日頃から、緑間君は私を早めに返そうとする。
体育館の掃除や締めくらい手伝うといっても、早く帰れの一点張り。
まあ実際、宿題とかを溜め込みやすいので、さっさと帰るのが一番だし、助かるけど。
いいのかなあ、と思うのもある。

しかも緑間君は、決して私を一人では帰さない。
誰かしらをくっつけていくか、後輩や同級生に後片付けを頼んでまでして、ついてくる。
こういうところがモテ要素何だろうなあと思うが、気が引ける。
なんたって私はただのマネージャーで、可愛くもなければ、特技もない。

「名前さんちゃん、行こうぜー」
「緑間君置いていっちゃって大丈夫なの?」
「たぶん、キセキのメンツと一緒に帰るっしょ。だから大丈夫」

更衣室で着替えて体育館に戻ると、すでに高尾君がいた。
高尾君は弄っていた携帯をポケットにしまって、カバンを持ち直した。

道路に出ると、自然に道路側を歩いてくれるのが素晴らしい。
これはモテる、確実にモテるよ、高尾君。

「明日、頑張ってね」
「おうさ!つっても俺の出番あるかわからないけどなー」

カラカラと陽気に笑う高尾君だけど、どう考えてもこのチームで高尾君の存在は非常に重要だ。
堅物の緑間君を試合内でうまくいなし、微妙な空気を壊してくれるし。
なんだかんだで私もうまく馴染めて、ちゃんと話もできた。

高尾君には本当に助けられている。
いつもそうだ。
緑間君にも助けられているけど、高尾君の方がそっと助けてくれる感じ。

「応援してるね」

いつも、助けてくれているみんなを。
私は応援しかできないけど。
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