ぶいえす きんさんぎんさん!
動画を初めて見た時からわかっていたことではあるが、このチームの注意すべき人はたった2人だけだ。
ナッシュ・ゴールドさんとジェイソン・シルバーさん、この2人。
名前が長いので、金さん銀さんとする。

『金さん銀さんて…失礼やろ、金さん銀さんに』
「まあまあ。で、この2人なんですけど、見た目通りなんですよね?」
『せやな。見た目通り、金さんがまとめ役、銀さんがアタッカーやな。銀さんが結構突っ走っとる感じで、時々金さん止めるの面倒になっとったわ』
「なるほど。金さん崩せればってとこですけど」
『そう簡単にはいかんやろ』

動画を見ながら携帯片手に電話、私一人だけじゃ心もとないからと思って、電話をかけてみた。
相手は、翔一先輩だ。
せっかくだから、お手伝いしてもらうことにした。
この人は基本的に立ち直りが早い、切り替え上手だ。
もう数日前のことだし、離してもいいと判断した。

流石に若干嫌味を言われたが、試合の様子を事細かに教えてくれた。
試合の際に、気を付けていたこと、気になったこと、いろいろと。

『ってなとこやな』
「ありがとうございます。参考にします」
『早いとこ終わらせて、赤点回避せなあかんで』
「…何で知ってるんですか?」
『アホ。知らんわけないやろ。はー、ほんま、頼ってくれないとか悲しいわ』

絶対情報源は真先輩だ。
大学生になった翔一先輩まで付き合わせてしまうのは、非常に不本意だから黙っていたのに。
大体、真先輩を巻き込むのだって、不本意極まりないのに。
…情けない、私の成績。

『ま、大学って思った以上に暇やから。今度の中間は呼び』
「はい…」
『それから、今回の試合やけど。花宮にも相談しいや』
「えー…今日、すっぽかしちゃったから機嫌悪いんですよ」
『俺からも伝えといたるわ』

真先輩が味方に付いてくれると心強いが、今日は機嫌が悪そうだったし、声をかけるのは憚られた。
翔一先輩から話す分にはいいのかもしれないが、機嫌が悪いままに電話が来ても困るというのが本音だ。
ただ、それも見透かされているのか、翔一先輩はまあ、何とかするとそういって電話を切った。

ある程度動画を観察し終えたので、体育館で練習をしている選手たちを見に行くことにした。
ここの体育館にも2階部分があるので、そこから各々の動きや癖を確認。
先ほど見た動画と照らし合わせて、どこが良くて、どこを治すべきか考える。
気になったところは動画にとっておき、考えたものはノートにまとめ、思いついたことはメモに。
それらを纏めて、さらに気づいたことを付箋で貼り付け。

「桃井さん、これどうぞ。言いたいことは全部書いてあるから」
「えっ、早!」
「緑間君、人に甘えて無理やりスリーにしようとしないようにね。高尾君、パスのスピード落ちてるから気を付けて。じゃあお先に、お疲れ様です」
「ほーい!じゃ、名前さんまた明日迎えに行くわ!」

えっ、と戸惑っている桃井さんを無視して、体育館を出た。
ああよかった、早く帰れそう。
高尾君も手伝ってくれたし、さらっと抜けることができた。

部活の時もそうだけど、基本的に私は上りが早い。
勉強のこともあるし、家のこともあるから、とりあえず用が終われば帰る。
体育館の清掃だとか、戸締りは、練習で残る人たちに任せてOKというのが条件でマネージャーをしているというのもある。

体育館の外に出て、交差点。
目の前はコンビニで、そこに見覚えのある自転車が置かれていた。

「…わあ、機嫌直ったんですか…」
「直ってねえよ。飯くらい出せ」
「うぃっす」

慌ててコンビニに入ると、真先輩がすでに待ち構えていた。
どうやら怒ってはいないようだし、機嫌もそこまで悪くはない。
軽く頭を叩かれて、でも、痛くないから、笑っていられた。
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