リドルは酷く頭がよかった。
「…君、今までよくここにいられたね。何この成績」
「だって英語の勉強からはじめたんだもの」
「大体、1日中アルバイト?勉強する気あるの?」
皮肉屋で性格は悪かったが、勉強の教え方はうまい。
1年の勉強を面倒くさそうに教える傍らで、近代史の本を読んでいる。
その傍らにおいてあった成績表を見て、リドルは眉根をしかめた。
届けられた成績は全て可、しかも恐らくは先生の同情。
レポートがつき返された科目もあり、リドルはそれを読んで更に顔をしかめる。
「バイトに関しては仕方ないよ。それをやっていないと食べるものも寝る場所もないしお金もない」
「ちょっと待って、君、どうやってここに来たの?日本から来たんだろ?親は」
「親はいない、孤児院育ち。突然ダンブルドアが来て私をここに連れてきて、翻訳魔法を解いて消えたの。お金は毎年必要最低限だけ振り込まれて…最悪だわ、どうしてあんなのが校長なの?」
「ああ…なるほどね」
リドルはどこか納得した様子で頷いた。
なまえは意味が分からなかったが、宿題に意識を移した。
時計の針は深夜の3時を回っていた。
英語ができるようになり、本が読めるようになると勉強が楽しくて仕方がなかった。
魔法界の歴史も薬学も呪文の練習も分かれば楽しい。
眠ることも忘れてなまえは勉強し続けていた。
「なまえ、ちょっとは寝たら?明日持たないだろ」
「うん。もうちょっと」
「それ、1時間前にも言ってたよね?さっさと寝ろ」
なまえは机にかじりつくようにしていて、リドルを見ない。
リドルははため息を一つついて、なまえの肩を触る。
なまえは一瞬で肩に置かれた手を振り払う。
「っ…分かった、寝るから」
「そうしなよ、時間になったら起こすから」
なまえは触れられるのを酷く嫌がる。
潔癖症か、対人恐怖症かといったところだろう。
起こすのにも身体に触れると引付を起こしたかのようになったりまでするのだ。
なまえがベッドにもぐったのを確認して、リドルはなまえの宿題の進みを見た。
宿題はほぼ終わっていて、その内容もきちんとしている。
この前成績表とともにつき返されたレポートとは大違いで、英語さえできればさぞ成績はよかっただろう。
なまえがこうしてダンブルドアに冷たく突き放された理由は自分にあるとリドルは考えていた。
ダンブルドアはなまえにリドルを見ている。
なまえの育ってきた環境も、その身に宿した闇も、リドルにそっくりだった。
過去にリドルを寵愛した結果、リドルは闇の帝王になった。
…だから、なまえは決して甘やかさないと決めたのだろう、闇に落さないために。
あいつは気づいているのだろうか、闇は落ちるものではなくて、染まるものであるということ。
瞬間的なものなどではなくて、徐々に染まっていく。
その闇を自分が作り上げてしまっていることに、あいつは気づいていない。
時計を見るともう4時半だった、彼女を起こさなければ。
ここ最近、なまえは1時間ほどしか眠っていない。
それすらも浅い眠りのようで、よく身じろぎをしている。
声をかければすぐに目覚めるほどに、浅い眠りしかつけていない。
「なまえ、起きて」
「ぅん…、朝…?」
寝てから1時間しかたっていないのに、また仕事。
このままでは倒れたっておかしくはない。
ベッドからふらふらと起き上がるなまえをリドルは見つめる。
「じゃあ行くよ」
「分かってるさ」
リドルはなまえから魔力を貰っている身だ、なまえからは離れられない。
今日もなまえはせっせと働く。
やすむことなく