59.計画
その日は皆落ち着きがなかった。
なまえは1人お菓子を配って回っていたのだが、ドラコやパンジー、ザビニまでもがとにかくそわそわしていた。
スリザリンからは1人だけ名乗り出たらしいが、それ以外は出なかったそうだ。
元々矜持が高く周到な性格のものが多いスリザリンだから、何の課題が出るのかも分からない競技に参加しようと思う人は少ないのかもしれない。

なまえのお菓子は相変わらず好評だった。
見た目の割りに味がいいので、皆面白がってくれていた。
なまえはそれが見られただけで充分楽しめた。

2日連続の宴はさすがに重い。
パンプキンプリンをちびちびと食べていたなまえはそう思った。
生徒達はご馳走おいしい!という思いよりも、三大魔法学校対抗試合の代表選手が誰になったのか早く聞きたいという思いが強いらしい。
皿の上の料理を黙々と片付けつつ、ダンブルドアがいつ話し始めるのかとチラチラ見ていた。

皿の上が綺麗に片付け終わると、ダンブルドアが立ち上がった。
あたりのざわざわとしたささやき声がぱっとやみ、皆ダンブルドアのほうを見た。

「さて、ゴブレットはほぼ決定したようじゃ。ワシの見込みでは後1分ほどじゃの」

ダンブルドアは呼ばれた代表選手は隣の部屋に行くようにと指示を出し、話し終えると大きく杖を一振りした。
途端に大広間内の光がすべて消えて、ほぼ真っ暗になった。
ここでドラムロールでも流れたら非常にチープな感じになるだろうが、張り詰めた沈黙だけが当たりに漂っていたので臨場感溢れる様子だ。
ゴブレットは青白い炎をちらちらと出している。

時計を見ていた誰かが、一言来るぞ、とそういったのが聞こえた。
その途端、今まで青白い光を出していたゴブレットが、激しく赤い炎を出し始めた。
そしてその炎の中から焦げた羊皮紙が一枚吐き出された。
ダンブルドアはその羊皮紙を捕らえ、青白い炎に戻ったゴブレットの元で羊皮紙にかかれた文字を読んでいた。

「ダームストラングの代表選手は…ビクトール・クラム!」

スリザリンの席に居たダームストラングの生徒がわっと声を上げた。
大広間中にはちきれんばかりの拍手の音が響いた。
クラムはいわれていた通り立ち上がり、隣の部屋に続く扉に向かっていった。
ダームストラングの校長が声を張ってクラムに声援を送っていた。

なまえは黙って、次の羊皮紙が吐き出されるのを待っていた。
ゴブレットが再び赤く燃え上がると、皆しんと静まり返った。

「ボーバトンの代表選手は…フラー・デラクール!」

新たに吐き出された羊皮紙に書いてあった名前をダンブルドアが読み上げると、今度は女性の高い声の声援が聞こえた。
フラーと呼ばれた女子生徒は、この前ノットが指差していた人だった。
シルバーブロンドを揺らしながら、彼女も隣の部屋へと入って言った。
残ったボーバトンの生徒の中には泣いているものもあるようだった。

フラーが隣の部屋に行くと、やはり皆また静かになった。
なまえはじっと、次の名前が呼ばれるのを待った。
次は間違いなく、ホグワーツの生徒が選ばれる。
朝はああいったものの、選ばれなければ杞憂で済む。
しかし、それは杞憂にはならなかった。

「ホグワーツの代表選手は…セドリック・ティゴリー!」

ハッフルパフ生は殆ど全員が立ち上がり、わあっと喜び合っていた。
普段目立たないハッフルパフにとって、彼の代表選手入りは嬉しくてたまらないのだろう。
その中からセドリックが笑顔で歩いていくのをなまえは複雑な気持で見送っていた。
拍手をしながら歩いていくセドリックを見ていると、彼がこちらを見た。
嬉しそうに笑うものだから、下手に今の感情を出すわけには行かず、しかしうまく笑えずに、引きつった笑みを浮かべるほかなかった。

長く続いた拍手の末に、ようやくダンブルドアが話しはじめた。

「結構結構。さて、これで3人の代表選手が決まった。代表選手選ばれなかったものも、みんな打ち揃って代表選手たちを応援してくれることと信じておる。選手に声援を送ることで…」

ダンブルドアが話していたが、その最中に話すのを辞めてしまった。
なまえはその原因をじっと見ていた。
原因はゴブレットがまた青白い炎から、赤々とした炎に変わったからだ。
つまり、もう1人の代表者をゴブレットは吐き出そうとしている。

みな、ゴブレットに釘付けになっていた。
吐き出された羊皮紙をダンブルドアが腕を伸ばしてとった。
その様子を誰しもが固唾を呑んで見守った。

ダンブルドアは、再び口を開く。

「ハリー・ポッター」

相変わらず意外性がありすぎる彼である。
全員の目が彼を射抜くかのように見ていた、彼は微動だにしない。
やや悶着があったようだが、ダンブルドアがもう一度その名を呼ぶと、彼は立ち上がりフラフラと歩き出した。
皆、何故こんなことになっているのかと言う戸惑いややっぱりあいつだという嫉妬やらで、彼を睨むように見ていた。
なまえは何の感情もない目で、彼の動作を見ていた。

その後は、ハリーポッターの話で持ちきりになった。
皆が寮に戻っても、その話は続いていた。

「アイツ毎年何かやらかすよなぁ」
「どうやったんだかな」

呆れたようなザビニのコメントと苦虫を噛み潰したようなドラコのコメントだ。
パンジーもあたりの女子生徒たちと興味深そうに今会ったことを話していた。
なまえはハリーポッターに興味はないし、彼が代表選手になってもセドリックが下ろされることもないのでなんとも思っていなかった。
先に自室に戻るとだけパンジーに伝えて、部屋に戻った。

女子寮は比較的静かだった。
まだ多くの人が談話室で今あったことを話しているようだ。

「リドル、セドリック先輩が選ばれたわ」
『聞いてたよ。まあ、予想通りだね』
「これ、やり始める。これからの競技内容にもよるけど、出来る限りのことができるように長い間つけておきたいの」

なまえは引き出しに閉まってあったシルバーブレスレットを手に取った。
談話室にいる同室の女子達はまだ30分は帰ってこないだろう。
それにカーテンが引いてあるときは、大抵なまえが寝ているときなので、帰ってきても声をかけてくることはない。
やるなら今だ。

リドルは1つ溜息をついて、好きにしたらいいと思うよとだけ言ってくれた。
それを聞いてから、なまえは少し笑って杖を取り出した。

prev next bkm
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -