04.ゆうやみにだかれて
1年間、さまざまなことがあった。
私はスリザリンという寮に入れられ、そこで罵詈雑言の嵐を浴び、他寮の生徒に同情だけされた。
あの老人は教師…しかも校長だった。
校長があんな犯罪まがいのことをしてのけている学校にいると考えるととても嫌な気持ちになった。

何とか校長にアポイントメントを取ろうと努力した。
まずは寮監であるスネイプ先生に拙い英語で英語が喋れないといったら、鼻であしらわれて何かを言われた。
おそらく冗談を言うなという旨だったのだと思う。
次にマグコナガル先生に言ったところ、怪訝そうな顔をされてまた何か言われた。
おそらく冗談もほどほどにしなさいという旨だったと思う。
その他の先生全員に声をかけたが、誰も相手にはしてくれなかった。

帰りの汽車の中で、ドラコ・マルフォイに追い出され、廊下をうろうろし続けた。
先にコンパートメントにいたのは私なのに。
スリザリンの寮生たちは私のことを毛嫌いして、馬鹿にしていた。
何を言われているのか全く分からないが、どうせ誹謗中傷の類である。
分からなくてよかったと思うべきなのか。

駅について、愕然とする。
私はこれから宿もなく、食事もない。
とりあえず暖炉を使って前にいたパブ「漏れ鍋」に戻った。
戻ったところでどうすることもできない。

ダイアゴン横丁は夏休み一日目だというのに人通りは多く賑やかだ。
皆幸せそうに見える、今の私には眼に毒だった。
銀行によって入金されていないのを確認すると、ふらふらと横丁の大通りを避けて歩く。
そうしているうちに日は暮れ、いつの間にか人通りの殆どない場所に来てしまった。

ここは本当にダイアゴン横丁なのだろうかと心配になるほど薄暗く、嫌な雰囲気を出している。
完全に日が暮れてしまい、脚も疲れた。
荷物はトランク一つだったので、諦めて野宿をすることにしよう、そう思い路地に座り込んだ。

街は完全な闇に覆われる。
恐怖は感じなかった、誰も私を見ないし、話しかけても来ない。
この1年で学んだのは孤独のありがたさだった。
学校では常に誰かが傍にいる状況になる。
授業のときはもちろん、食事も自習も寝る時だって誰かがいる。
その誰かは私と会話するでもなく、後ろ指を差しクスクスと嘲笑するのだ。
落ち着かないし、不安になるしでその人々から逃げ惑っていた。

その点ではこの孤独が心地よかった。
確かに若干不安にはなるものの、誰もいないのだから怖いこともない。
目を瞑れば、しんとした夜の空気が身体を包んだ。


眼を覚ますと、太陽はもう真上辺りまで昇っていた。
荷物が盗まれたりしていないかと心配にもなったが、抱きかかえていたお陰か特に何もない。
さてこれからどうしようか。
このまま野宿も悪くはないが、どうにかしてお金を手に入れないと食事がままならない。
お金を手に入れるには働くしかないが、英語も喋れないのだからまともな仕事はない。
でも皿洗いくらいなら自分でもできる、英語も適当でいい。

昼でもこの辺りは人が少ないらしい。
飲食店を探して辺りをふらふら歩いていると、薄汚いローブをきた人に何回か声をかけられた。
しかし、英語の全く分からない私にできるのは無視くらいなものだ。

少し歩くと食堂のようなお店を見つけた。
扉に手をかけて、一瞬考える、なんていえばいいのだろう。
働かせてくださいという意味になりそうな英単語を並べてみよう、そう思い扉を開けた。
店の中はそれなりに客がいて、従業員がせわしなく動いている。
ランはカウンター席に座って辺りを見渡す。
会計をするところらしきところにいる女性が従業員に指示を出しているように見えたので、その女性の元に向かう。

「あの」
「What do you want?  Since it takes in a seat, sit down and wait for an order.」
「えっと、Please worked here」
「Stop messing around! Children like you'm nuisance!」

働きたいという旨は伝わったようだ。
相手の女性は酷く怒っているように見えた、というよりも怒ってる。
何を言っているかは分からないが、声を荒げているところからやはり怒っていることだけは分かる。
しかしここでめげているようではこれから暮らしていくことはできない。
どうせここで拒否されたら野垂れ死ぬしかないんだから。

「I can wash up.」
「I do not talk through. If you do not eat, go home!」
「Have worked here. Please, help.」

とにかく働かせてくれ、でなきゃ死んじゃう。
ここはそれなりに大きな食堂のようだし、1人くらい従業員が増えても問題ないだろう。
甘い考えかもしれないが、しつこく言わなければ雇ってくれないだろう。

女性は何か言っていたが諦めたのか、ため息を一つついて

「It can't be. OK, Come at 5 am tomorrow.」
「Thank you」

どうにかなったらしい。
OKとcome at 5 amだけきちんと聞き取れた、明日の朝5時から働かせてくれるみたいだ。
住み込みでやらせてくれると嬉しいのだが、それはこれからの働きにかかっているだろう。
今はそこまで求める気はないし、何より英語が分からなくて求めようがない。
とりあえず今は明日になるまで何をするか考えよう。
そう思い、店を後にした。

次の日から朝働き始めた。
仕入れた野菜の下ごしらえや肉を切ったり、冷凍品を出し入れしたり。
力仕事もあったが向かないと思われたのか、別の場所にあてがわれた。
朝の仕事が終わると朝食が用意されていて、それを食べたら皿洗い。
昼ごはんのピークは皿の数が多い、無心になって皿を洗う。
ピークが過ぎれば昼食、その後は昼の仕入れの分を下ごしらえして夕方のピークを迎える。
そして夕食、慣れてしまえば快適なものだった。

「あんた働くね、いくつだい?かなり幼いだろ」
「ええ…っと、12です」
「12!? あんたホグワーツにもう通ってるのかい!親は?どこに住んでるの!」
「親、ありません。家も」

聞き取れる英語にだけ返答をする。
それだけで結構ここでは話が通じる、私にみたいにおかしな人が多くいるからだろう。
仕事中は話をすることもないし、仕事をしていれば何も考えなくてすむ。
夜は宿題をして(殆ど進まないから多分最後に適当に書いて終わらせるだろうけど)少しだけ寝て、次の日に備える。

とても居心地の良い場所だった。
あの時私を雇ってくれた人は古株のおばさんで、よく世話を焼いてくれた。

「え!?ないの?普段どこで寝てるの?」
「路地」
「やだ!もっと早く言いなさいよ!」

ということがあり、私は食堂の地下の納品庫で寝泊りしてる。
そうそう、ここはノクターン横丁という場所で本来なら子どもがくるような場所ではないらしい。






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