45.テントの中
なまえは人の流れに流されないように必死だった。
ジニーも双子に挟まれて流されないようにしていて、その様子を見たセドリックが口を開いた。

「まずいな、とりあえず3人ともテントに入って…ウィーズリー、なまえ、防御魔法って使える?」
「「無理。だってそれ、6年生で習う呪文じゃないか」」
「できます」

見事に声の重なった2人の声に少々感動しつつも、なまえは冷静に答えた。
日常生活で使えそうな魔法は学年に関係なくリドルに教わっていたので、問題はない。
まさかこんなところで役に立つとは思いもよらなかったが。(普段は薬を入れる小瓶にかけているくらいだ)
即答したなまえを双子が驚いたような目で見たが、気づかない振りをした。

「さすがなまえ。テント全体に防衛魔法をかけるから、手伝って。ウィーズリーはどっちでもいいからなまえに付いてあげて。彼女じゃ人の流れに逆らえないから」
「了解、僕が付くよ。僕はジョージ、よろしく」

テントが人の流れで潰されないように強化魔法をかけるにあたり、流石に1人では難しいと考えたらしい。
普段は仲のあまりいいとは言えないウィーズリーだが、緊急時には別らしい。

なまえは素直に頷いて、ジョージとともにテントの入り口付近に立った。
あたりはまだ混乱していて、あわただしく人々が逃げ惑っている。

「なまえ、行くよ?3,2,1…」
「「プロテゴ!」」

うまくかかったのか、なまえやジョージのいる場所は円を書くように人がよけるようになった。
セドリックと合流して、テントの中に戻る。

「それにしても、酷い騒ぎだ…」
「闇の印って、そんなに怖いものなんですか?」
「「そんなことも知らないの!?スリザリン生なのに!」」
「私、マグル生まれですから。スリザリンですけど…逆に聞けないじゃないですか」

なまえは魔法界のことに関して非常に疎い。
恐らく同じマグル生まれであるハーマイオニーよりも疎いであろうと自負していた。

スリザリンにいるため、自分がマグル生まれであると悟られるような会話は避けたいのだ。
皆、もうなまえが純血ではないということは分かっているが、混血かマグル生まれかは曖昧にしてある。
マグル生まれかもしれないと思わせるような発言は、スリザリンにおいて自分の首を絞める。

リドルに聞いてもいいのだが、彼は未来の自分のやっていることを複雑に思っているらしく余り教えてはくれなかった。
恐らく追求すれば教えてくれるだろうが、なまえはそこまでして知る必要性はないと思っていた。
彼は闇の陣営のことについて知ってほしくはないようだったというのもある。

丁度いい機会だと、なまえはそう思い口を開いたのだが、思った以上の反響を呼んでしまった。

「マグル生まれ?!なまえってマグル生まれだったの?」
「恐らくは。…施設生まれで両親を知らないから断言はできないけど、もしどちらかが魔法族なら捨てなかったと思う」

最後のほうは苦々しそうに、なまえは俯いて言った。
俯いていたから顔は見えなかったが、その瞳は悲しみと憎しみで彩られていたであろうことをリドルは簡単に想像できた。

はっとしたようにジニーは口を噤み、申し訳なさそうに俯いた。
それを見ていた双子がジニーの後ろからにゅっと前にでて、茶化すように明るく言う。

「そういうわけなら、教えてあげよう!」
「無垢なスリザリン生ちゃんにね!」
「「闇の印ってのは“例のあの人”の僕の死喰い人しか出せない印のことさ!」」

端的な答えであり、なまえはそれくらいは知っていた。
困ってセドリックに視線をやると、苦笑しながら解説を付け加えてくれた。

「闇の印はね、死喰い人が任務を終えた…つまりは、誰かを殺したりしたときに出す印なんだよ。だから、あの印が上がったってことはそこに死喰い人がいて、死人や怪我人が出ている可能性があるって事を指すんだ。だから、みんな怖がってその印から逃げようとするってわけ」
「なるほど。魔法界には大人子ども問わずそれが染み付いているから、こうしてパニックが起こったって訳ですね」

丁寧な解説になまえは頷いた。
それにしても、こんな時期に上がるのか不思議に思った。

その闇の印が流行ったのは“例のあの人”の全盛期であり、今は主人がいないというのに。
今それをあげている死喰い人は、“例のあの人”を裏切った人だ、そんな目立つことをするメリットはない。
なまえは不思議に思い、ふとピアスに触れたが、彼は何も答えてはくれなかった。

「それにしても、ロンやハリーたちは大丈夫かしら…」
「途中ではぐれたのか?」
「そうなんだ。途中までは一緒だったんだけど、なんせあの騒ぎだ」

ジニーは心配そうにテントの入り口のほうを見た、まだテントの外では叫び声や怒鳴り声が聞こえてくる。
フレッドかジョージか分からないが、双子の片割れがそう言った。

「魔法省勤めの魔法使いが死喰い人の傍にはいるだろうから、危ない目にはあってないと思うけどね…心配だな、あの3人って毎年危ないことしてるから…」

セドリックがそう言う。
それに関してはウィーズリー兄妹も大きく頷いた。
昨年、一昨年ともにあの3人はなんらかの事件に巻き込まれ、そのたびにそれを解決していた。
それはホグワーツ中、周知の事実であり、今年は何を起こすのだろうと毎年わくわくしている輩までいるくらいだ。
なまえはよく分からずに首をかしげていたが。

「まあ、君達は父が帰ってくるまでここにいたらどうかな?今外に出てもいいことはないと思うし…」
「「無論そのつもりさ!持つべきものは友だね!」」
「よろしくお願いします…」

一通り話を終えて、セドリックは温かいお茶を用意しに席を立った。
その際、双子に向けて提案したのだが、図々しくも双子は言われなくてもそのつもりだったらしい。
ジニーはそんな兄達を恥ずかしく思ってか、顔を真っ赤にして小さな声で御礼をしていた。
セドリックは苦笑しつつ、キッチンの奥へと消えていった。




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