28.すきまのはなし
定期試験まであと1週間を切った。
なまえは毎日図書室の一番奥の席に座り勉強をしていた。
今まで欠かさず勉強していたこともあり、そんなに焦って勉強をする必要もないのだがなまえとしてはどこまでできるのか試してみたい。
そのため、1人せっせと勉強をしている。

朝は誰よりも早く起きて図書室へ、朝食をとりに大広間に行き、授業はもうないのでまた図書室にこもりきり。
あとは昼食を飛ばして夕食を食べて、夜はきちんと眠る。
熱心な様子にリドルも満足気だ。

「…それ」
「え?」

なまえがもくもくと魔法薬学の勉強をしていると、突然声をかけられた。
こんな奥まった場所に好んで来る人はあまりいないので驚いてそちらを見た。

リドルに似た黒の短髪、澄んだ緑の瞳、病的に白い肌。
ネクタイカラーはスリザリンだったが、あまり見たことのない人だ。
彼は静かになまえの脇に積まれた本を指差していた。

「“魔法薬学とその歴史”それ、使ってなければ借りても?」
「あ、ああ…どうぞ。ごめんなさい」
「いや…たいした用事じゃないんだ、すぐ済む」

なまえが勉強に使っていた本を使いたかったらしい。
独占してしまうのは申し訳ないと思い、できる限り数の多い本だけを選んで持ってきていたのだが、今の時期はそれすらも危ういらしい。
次から気をつけようとなまえはその本を彼に手渡した。

彼は本をぱらぱらとめくり、気になった部分をメモしているらしい。
少しして、彼はすぐに本を返してくれた。

「ありがとう…」
「いえ…どういたしまして」

彼はそれだけ言って帰っていった。
見たことはあるような気がするが、誰だかわからない。
3年同じ寮で暮らしているはずなのだが…学年が違えば分からなくてもしょうがない。
なまえは深く考えずに、勉強を再開した。


「ふぅん…今のがなまえ・みょうじね…」
「あ?なになに、なまえここにいるのか?」
「ああ…さっき見つけた。一番奥の席に1人で」

ザビニはふらっとどこかに行ってしまっていた相方が帰ってきたのを見て声をかけた。
相方であるセオドール・ノットはスリザリンの中でも無口で静かなタイプだ。
少し前にザビニからなまえ・みょうじの事を聞いていた彼は、少し彼女を見てみたくなったらしい。
しかし、なまえは朝食のときと夕食のとき以外全くといって良いほど見かけない。

同室のパンジーに聞いたところ、図書室で勉強してると思う、とのこと。
そこで2人で勉強するついでになまえを探していた。

「へー、一番奥ね…まあなまえらしいっちゃらしいな」
「凄く静かな子だったな…」

ノットの感想は物静かで無口な女といったところらしい。
お前にだけは言われたくねーよ、とザビニが茶化した。

「ところで、セオ、お前ちゃんと自己紹介したか?」
「…忘れてた。多分向こうも俺のこと知らないな。凄く戸惑った風だったし」
「おい…まあ今じゃなくても良いけどいつかしとけよ」

変にうっかりなところがある男だとザビニはため息をついた。
ノットは純血の家の出だが、どこかぼんやりしていて頼りない。
見た目や仕草には優雅なところがあるが、変なところで抜けているので台無しだ。
天然というのはこういうことだろうとザビニは考えている。

マイペースに自分の勉強に戻ってしまったノットをみて、ザビニはもう一度ため息をついた。




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