24.ゆうぐれのきょうしつで
クリスマス休暇も終わり、ホグワーツには活気が戻った。
同室のパンジーは帰ってきてすぐに、飛びついてきた。

目を白黒させているなまえにパンジーは笑って言う。

「なまえ!プレゼントありがとう!とっても美味しかったわ、お菓子屋さんになればいいのに!」
「ああ…うん、どういたしまして。パンジーこそ、ありがとう。可愛いネックレス…」
「着けてる?」
「ううん、なんだかもったいなくて…」

パンジーから貰ったネックレスはまだ、机の引き出しに大切にしまってあった。
リドルにもつければ良いのに、と言われたものの、綺麗にとっておきたいという思いが強かった。
普段使いするにはもったいない。

パンジーはちょっと残念そうにしていたが、それもいいかもしれない、と諦めたようだ。
大切にされているというもの悪くはないらしい。

「そうねー、じゃあ、クリスマスパーティーとかに行ったときとか、特別なときに着けて?」
「うん。そうする」

パーティーに呼ばれる日など来るのだろうか、と思ったがパンジーのために1度くらいは呼ばれたいものだとなまえは考えた。
そうしたらドレスも必要だなぁ、と。
しかし、自分がドレスで着飾った姿など想像もつかなかった。

パンジーに誘われて談話室に下りる。
そこには多くの人が談笑していた。
パンジーと暖炉から少し離れたところのソファーに座った。
暖炉の傍は人が多いので、なまえはあまり好きではなかった。

テーブルの上に用意されていたマカロンをなまえが口に入れる。
スリザリンの談話室にあるお菓子は基本的に誰が食べてもよいことになっている。
お金持ちの生徒が家から持ってきた必要のないお菓子を置いてあるのだ。
なまえは最近そのことを知り、談話室にお菓子を食べに来るようになった。
薄いピンクのマカロンをなまえが食べているのを見て、パンジーが紅茶を取りに席を離れた。

「おい」
「あら、ドラコ。お久しぶり…」

マカロンの味が気に入ったのか、もくもくと食べていたなまえの元に現れたのはドラコだった。
相変わらずぞんざいな話しかけ方だが、不器用な彼らしいとなまえは微笑む。

「クリスマスプレゼント、ありがとう」
「…いいえ、あんなもので申し訳ないわ。こちらこそありがとう、使わせてもらってる」
「下手に金で買えるものよりもあっちのほうが良い」

照れくさそうにそう言うドラコに少々驚いた。
まさかわざわざお礼を言ってくれるとは思いも寄らなかった。
やはり育ちはしっかりしているのだ。

お金を掛けずにプレゼントをしたことも結構よかったみたいでなまえはほっと安心した。
お金持ちの家に何をプレゼントすればよいのか全く分からなくて、結局みんなと同じものにしたのだが。

そのあとパンジーが現れて、3人で少し話した。
主にはクリスマスの話だった。

2人は家族でクリスマスを過ごしたらしい。
ドラコの家ではイブに毎年大きなクリスマスパーティーをしているという。
パンジーは毎年それに参加しているそうだ。

「来年はなまえもくれば良いのに…学校に残ったってつまらないでしょ?」
「私はいいよ。それに、静かなホグワーツって悪くないの」

そう?とパンジーは少しつまらなそうだったけど、ドラコはほっとしたようだ。
なまえはマグル生まれなのだから、純血の家が集まるパーティーに行くわけにはいかない。
行けばドラコも父に怒られてしまうだろう。

そのあとも他愛もない話をした。
気になったのは、ドラコを襲ったヒッポグリフが処刑されるだろうということ。
あの事件、どう考えても言いつけを守らなかったドラコが悪いのだが、こういうことになると大抵傷つけた動物が処刑される。
人を傷つける動物は処刑されてしまうというのは分かりきっていたものの、少々辛い結果になった。


次の日、約束のお茶会に向かうと既にティゴリーが待っていた。

「なまえ、久しぶり。今年のプレゼントも美味しかったよ」
「いえ…毎年あんなもので申し訳ないです。こちらこそ、マフラーと手袋ありがとうございます」

ティゴリーはなまえの姿を捉えると、すぐに椅子を隣に用意した。
空き教室ということもあって、椅子や机に困ることはない。
見た目こそ質素でお茶会という感じではないが、用意しているお菓子や紅茶でそこはカバー。

話は主に勉強やクディッチの話。
使わなくなった教科書や参考書などを譲ってくれ、しかも丁寧に教えてくれる。
なまえにとってはいい先生になってくれていた。

後者に関してはリドルが結構楽しそうに聞くので一緒になって聞いている。
なまえはクディッチに興味はあまりなく、騒がしいあの雰囲気が苦手だった。
しかし、話に聞く分には楽しそうだなぁと思えるので問題はない。
ティゴリーは本当にクディッチが好きなようで、とても熱心だ。

「…来年の試合は見にいきますね」
「無理しなくていいよ。天候とかによっては本当に観戦するの辛くなってくるから…」
「いえ、ティゴリー先輩がそんなに推してるんですし、食わず嫌いはよくないかなと」
「本当に…?来てくれたら嬉しいよ!」

今年のハッフルパフの試合はすべて終わってしまったため、来年ということになるがティゴリーはそれでも嬉しそうだった。

「それはそうと、なまえ。僕のこと、そろそろ名前で呼んで欲しいな。なんだか他人行儀な感じがして…」
「え?ああ…分かりました、セドリック先輩でいいですか?」
「うん、本当は先輩もいらないけど…」

ぼそりといったセドリックの言葉をなまえは無視した。
先輩をつけないというのは少し難しい気がしたからだ。
なんだかいきなり親しくなった感じがして、距離が縮まった気がして照れくさい。

夕日に照らされた教室は、なんだか他よりもずっとゆっくり時間が流れているような気がした。


ゆうぐれのきょうしつで

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